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三橋鷹女の一〇〇句を読む 俳句と生涯

出版社名 飯塚書店
出版年月 2022年11月
ISBNコード 978-4-7522-2082-4
4-7522-2082-2
税込価格 1,760円
頁数・縦 247P 19cm

商品内容

要旨

ジェンダーバイアスを解き放った情念の世界。最新の資料と研究に基づく鷹女の人生と俳句。

目次

蝶とべり飛べよとおもふ掌の菫
初夢のなくて紅とくおよびかな
新宿のよべぞセル著てゆくべかり
日の本の男の子かなしも業平忌
日本の我はをみなや明治節
蕗の葉に日輪躍る初夏は来ぬ
夏逝くやいみじき嘘をつく女
夏痩せて嫌ひなものは嫌ひなり〔ほか〕

出版社・メーカーコメント

 鷹女の作風の変遷の三転について触れておこう。第一句集『向日葵』(昭15)時代における、いわゆる「冒険的な句作」。すなわち、鋭敏な感性と想像力を存分に発揮した斬新・奔放な作風。第三句集『白骨』(昭27)の前半(昭15?昭23ごろ)における愛息への独占的な母情俳句。『白骨』後半から『羊歯地獄』(昭36)へといわゆる「鱗の?脱」という自虐的な営為によって孤心・老い・死の意識を激しく掘り下げていった作風。 この作風の変遷において一貫するものは、「冒険的なる句作」時代に開眼した「俳句で詠むべきものは外部ではなく、自己の内部である」という俳句観に立脚して、自己の鋭敏な感性を信じ、他者と安易に同調しない強い自恃をもって自己の内部の様々な意識や情念を掘り下げ、表出していったことである。 鷹女の句には素材として動植物が頻出する。しかし、それらは「ホトトギス」の花鳥諷詠句や、吟行などで外面的に動植物を詠む嘱目吟などとは全く異なる。鷹女にとっての動植物は一貫して鷹女の分身ないしメタファーである。 三橋鷹女は孤高の作風を築いた孤高の俳人である。だが、偏屈で、偏狭な朴念仁ではない。強い自恃を抱きながらも、気のおけない交流ができる人であった。昭和二十三年の秋ごろから晩年にかけて、「ゆさはり句会」の会員たちとの句会や宿泊を伴う吟行での気さくな交流は、『羊歯地獄』における「鱗の?脱」による疲労と孤心を癒し、新たな創作のエネルギーの蓄積になったであろう。 また、夫剣三に関して鷹女が書いたエッセー類は、鷹女がユーモアや諧謔を解し、それを好む人となりであることを、よく物語っている。――「本文より引用」

著者紹介

川名 大 (カワナ ハジメ)  
昭和14年(1939)千葉県南房総市生まれ。早稲田大学第一文学部を経て、慶応義塾大学・東京大学両大学院修士課程にて近代俳句を専攻。三好行雄、高柳重信に師事。富澤赤黄男・渡邊白泉・西東三鬼らの推進した新興俳句を研究対象としつつ、近代俳句の軌跡を俳句表現史の視点から構築。第22回現代俳句大賞受賞。東京都立三田高等学校・聖光学院中学校高等学校(横浜市)教諭、東京都公文書館史料編纂係などを務めた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)