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日本の「第九」 合唱が社会を変える

出版社名 白水社
出版年月 2022年11月
ISBNコード 978-4-560-09466-2
4-560-09466-7
税込価格 3,080円
頁数・縦 299,3P 20cm

商品内容

要旨

ベートーヴェンが一八二四年に完成させた『交響曲第九番』(『第九』)は、世界中で演奏され、日本では特に年末に演奏されることで知られている。すでに戦前において、『第九』は「忠臣蔵」や「道成寺」に比せられ、上演すれば満員となる曲だった。単に名曲だから聴くというのではなく、文字通り親しまれてきたと言ってよい。本書は、日本の一九二五年前後から一九五五年前後、おおよそ昭和期の前半にあたる時期に限って、『第九』がいかに受け入れられ、定着していったかを論じていく。

目次

序章
1 大正期から第二次世界大戦期における『第九』―生徒たちが歌う(年末『第九』の端緒
学生・生徒が歌う『第九』
戦時期の『第九』―戦後とのつながり)
2 戦後の『第九』―平和と自由を歌う(戦争が終わって
『第九』のイメージと託されるメッセージ
アマチュアの歌う『第九』)
3 労音の『第九』―つながりを求めて歌う(労音以前の鑑賞団体と『第九』
大阪の労音 十河巌と須藤五郎
東京労音の『第九』)
終章

出版社・メーカーコメント

「第九」が若き日本にもたらした自由と平等 ベートーヴェンが1824年に完成させた『交響曲第九番』は世界中で演奏され、日本では毎年5万人以上が歌っている。 この『第九』がいかにして日本に受け入れられ、市民参加型の合唱として定着していったのか。そこにはシラーやベートーヴェンの自由や兄弟愛などへの思いに共鳴し、『第九』を演奏しようとする人びとの姿が見出される。またラジオやレコードといったメディアがこのブームを支えていたことにも気づかされる。 市民参加型として、戦後すぐの時期に日本各地で上演され、1954年には東京の勤労者音楽協議会(「労音」)が会員参加による『第九』を実現した。さらに調べを進めると、すでに戦前戦中にその土台が整っていたことがわかる。私立学校の合唱団が、新交響楽団(現NHK交響楽団)と幾度となく『第九』を共演するなど、自由学園、成城学園、玉川学園などの教育において音楽などの芸術が重要視され、盛んに合唱がおこなわれていたのである。 これまであまり知られてこなかった松本や岡山などの『第九』上演関係者の言葉に触れながら、新しいものをみずから生み出そうという希望と熱気に満ちた若々しい日本の姿を描き出す。

著者紹介

矢羽々 崇 (ヤハバ タカシ)  
1962年、岩手県盛岡市出身。獨協大学外国語学部ドイツ語学科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)