• 本

蝉しぐれ

文春文庫

出版社名 文藝春秋
出版年月 1991年7月
ISBNコード 978-4-16-719225-9
4-16-719225-X
税込価格 759円
頁数・縦 470P 16cm
シリーズ名 蝉しぐれ

書店レビュー 総合おすすめ度: 全1件

  • NHK金曜ドラマで放送された。今度は映画が10月1日公開されるという。文四郎役が松本幸四郎、お福役が木村佳乃。この作品の圧巻は父がいわれのない、嫌疑をかけられ、切腹をさせられ、そしてその遺体を荷車にのせ、家に戻る途中坂道で往生するシーンだ。熱い夏のひるさがり、蝉しぐれのなか、人間の不条理に少年が圧倒され、それが荷車を引こうとしても、逆に転げ落ちてくのに、重なり、なお読者の胸を締め付ける。うだるような暑さ、せみのおと、荷車を引く汗、そして涙。読むものを絶望の淵におしやる。そこにお福が後ろから押しシーンはなにかしらホットさせられる。お福が江戸の藩邸に上がり、殿の子をみごもり、二人を権力闘争の渦のなかへ巻き込んでゆく。二人の純愛を通奏低音に、藩を二分する、権力闘争。そして明かされる父の死の理由。そして陰謀を企てる里村家老を文四郎が追い詰めてゆく。(たか)

    (2005年7月13日)

おすすめコメント

映画「蝉しぐれ」の原作。 清流と木立にかこまれた城下組屋敷。淡い恋、友情、そして忍苦。苛烈な運命に翻弄されながら成長してゆく少年藩士の姿をゆたかな光の中に描いて、愛惜をさそう傑作長篇。(秋山 駿)