• 本

点と線

改版

新潮文庫

出版社名 新潮社
出版年月 2003年5月
ISBNコード 978-4-10-110918-3
4-10-110918-4
税込価格 693円
頁数・縦 262P 16cm
シリーズ名 点と線

書店レビュー 総合おすすめ度: 全3件

  • 「時代」を鋭く切りとった「社会派ミステリ」の源流

    松本清張といえば「社会派」というイメージが圧倒的に強く、全く読んだことがなくてもそのイメージだけは知っているという人も少なくないでしょう。しかし、そういった先入観は取っ払って読んでみてほしいのがこの作品。
    実際のところ、間違いなく社会派ではあるのですが、堅苦しさのようなものは全くなく、しかも読み易いです。また、謎の掲示方法や刑事が疑問を見出してはその解決を求める過程など、意外にも本格ミステリ的な要素が盛り沢山です。
    そして、あまりにも有名な真犯人のアリバイトリック。正直なところこれには肩透かしを食らいました。なぜなら、交通機関が発達した現代の視点で考えると全くもってありえないからです。80年代後半以降の新本格に馴れ親しんでいる者からすると、物足りないし拍子抜けしてしまうのです。
    そういった意味では、東京から大阪まで汽車で約20時間もかかっていたという50年前の時代背景を考慮して読むべき作品だと思います。
    ただし、犯人の動機とトリックが密接に結びついているため、陳腐には感じません。「大衆側の視点」と「反権力の立場」を描いた社会派ミステリの傑作です。

    (2009年6月26日)

  • 実は松本清張、初めて読みました。

    書店員としてお恥かしいのですが、今まで松本清張の作品を読んだことがありませんでした。
    読んでみようと思ったことは何度もあるのですが、「難しそう…」「堅苦しそう…」「色々ありすぎてどれにしよう…」等となかなか踏ん切りがつきませんでした。
    今回「点と線」を読んでみよう!!と思ったのは、新潮文庫の帯での松本清張累計販売部数が第2位と書いてあり、本も薄めだったので読みやすいかなというちょっと不純な動機で読み始めました。(1位の「砂の器」は上下巻のため、今回は見送りました。)
    思い込んでいた「難しさ」「堅苦しさ」は全然無く、とても読みやすかったです。この「点と線」でも、先入観から来る「思い込み」が重要な要素を占めていて、読み終わったあとに自分でちょっと反省しました。
    こんな松本清張初心者の私が言うのもなんですが、まだ読んだことの無い方には先入観を捨てて、是非読んで頂きたい作品です。

    (2009年6月25日)

  • 半世紀経って、ますます新鮮、社会派推理小説を確立した作品

    中学生の時に読んで以来、半世紀ぶりに読みました。今読んでますます新鮮で、当代のヒットメーカー宮部、東野らが強く影響を受けていることがよくわかります。文体も読みやすく、心情描写もよくされています。当時の通信は、電報が主だったことをあらためて知らされ、東京-福岡が2日がかりだったことに時代の移り変わりを感じます。一方、某省の汚職事件で、部下や業者は死ぬが、エリート官僚は無傷というようなことは、全く変わっていないのですね。

    (2009年6月22日)

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おすすめコメント

黒々とした悪を立派に推進中。善良そうなそいつも。いかにも悪そうなあいつも。  九州博多付近の海岸で発生した、一見完璧に近い動機づけを持つ心中事件、その裏にひそむ恐るべき奸計! 汚職事件にからんだ複雑な背景と、殺害時刻に容疑者は北海道にいたという鉄壁のアリバイの前に立ちすくむ捜査陣……。列車時刻表を駆使したリアリスティックな状況設定で推理小説界に“社会派”の新風を吹きこみ、空前の推理小説ブームを呼んだ秀作。