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森は海の恋人

文春文庫 は24−2

出版社名 文藝春秋
出版年月 2006年9月
ISBNコード 978-4-16-771704-9
4-16-771704-2
税込価格 814円
頁数・縦 234P 16cm

書店レビュー 総合おすすめ度: 全1件

  • 美しい文章で自然の逞しさを伝えます

     宮城は気仙沼で牡蠣や帆立貝の養殖の漁師をされている、畠山さんは山に木を植える漁師でもあります。現代の技術を駆使する前の漁業は、その道具をすべて山から供給されるもので作っていました。船や櫓、養殖の資材もすべて木。「海で使う道具類は森の産物であり、森なくしは漁民は一日たりとも生きていけなかった」、その関係は蜜月そのものでした。しかし、「燃料革命の嵐は、昔から営々と築いてきた自然との共存生活を根底から覆す」ことになり、その関係は薄れていきました。  海での異変はそれから数年のうちに起こりました。海岸や川原がコンクリートに埋め尽くされ、海苔の生産量が激減し、魚や貝の数も減少しました。この変化を学者の力も借りながら科学的に分析していくと、山が荒れていることに原因があることが判明。そこで「森は海の恋人」と称して山に木を植え始めました。海の問題を自然界全体から捉え直し、植林が地域の社会運動になり、地域の学校での総合学習にも活用されています。さらに畠山さんの文章はとても素敵です。海の男は紙に向かっても力を発揮するのですね。

    (2007年1月21日)

商品内容

要旨

豊かな汽水域の恵みは森があってこそ生まれる―ダム開発と森林破壊で沿岸の海の荒廃が急速に進んだ1980年代、おいしい牡蠣を育てるために一人の漁民が山に木を植え始めた。漁師だからこそ見出し得た森と海の真のつながりとは!?「森は海の恋人」運動の火付け役となったみずみずしい一作がついに文庫化。

目次

第1章 森と海・初めての出逢い
第2章 汽水域の生き物たち
第3章 天国のような海
第4章 海から森へ
第5章 森は海の恋人
第6章 山に翻った大漁旗

著者紹介

畠山 重篤 (ハタケヤマ シゲアツ)  
1943年中国上海生まれ。「牡蛎の森を慕う会」代表。京都大学フィールド科学教育研究センター社会連携教授。高校卒業後、牡蛎、帆立の養殖に従事する。家業のかたわら「森は海の恋人」を合い言葉に、気仙沼湾に注ぐ大川上流の室根山へ植樹運動を続ける。森は海の恋人運動は各方面で高く評価され、1994年朝日森林文化賞をはじめ、表彰多数。2004年には宮沢賢治イーハトーブ賞、河北文化賞を受賞した。主著に、『日本“汽水”紀行』(文藝春秋/日本エッセイスト・クラブ賞)、『漁師さんの森づくり』(講談社/産経児童出版文化賞JR賞・小学館児童出版文化賞)がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)