書店レビュー 総合おすすめ度: 全2件
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異なる太宰治
- おすすめ度
- マルサン書店 駅北店 (静岡県沼津市)
私は今まで太宰治の作品を読むことは無かった。なぜならどうしても「人間失格」のように暗く、そして重いというイメージがあったからだ。そういう作品は私はあまり得意
では無く、手に取る機会が無かった。しかし、今年生誕100周年ということで何か読もうと思い、太宰作品の中で青春小説、恋愛小説といわれるパンドラの匣を読んでみた。するとどうだ、約100年前に書かれたと思えないぐらい現代でも通用する青春恋愛小説ではないか!若干読み取りにくい所があるが、それは手紙形式を利用した手法に拠るところだろう。まるでクラスで恋話をしているかのような明るさがある。自分の気分が落ち込んだときや苦境に立たされたときなどに読めば励まされる人も多いかと思う。ただ、深く読めば読むほど太宰独特の苦しみの表現が感じられるのは私の気のせいだろうか。(2009年7月2日)
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恋愛という希望の光
- おすすめ度
- 大地堂・ラ・ラ・ルー店 (茨城県潮来市)
なんて初々しい恋愛小説なんだろう。
結核という死の影がちらつく病に冒されながらも少年が友人へ宛てた手紙には、病の辛さが微塵も無く、まるで学校の教室で恋愛話を繰り広げているような明るさがある。
手紙の中で少年は自分のことを『新しい男』と称し、大人ぶってかっこつけて書いているが、その反面、好きな女性に対して素直に好きと言えず、別の女性ばかりを誉めたりして子供っぽさも見せている。その微妙な心情が本当に初々しい。
そして、この恋愛で成長した少年が、病と闘いながらも希望の光を見つけ出す様子が、とても明るくさわやかに感じられた。(堀)(2009年6月25日)
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おすすめコメント
ホントは明るい太宰治。二十歳の青年の恋心と純情をユーモラスに描いた傑作青春小説。「健康道場」という風変りな結核療養所で、迫り来る死におびえながらも、病気と闘い明るくせいいっぱい生きる少年と、彼を囲む善意の人々との交歓を、書簡形式を用いて描いた表題作。社会への門出に当って揺れ動く中学生の内面を、日記形式で巧みに表現した「正義と微笑」。いずれも、著者の年少の友の、実際の日記を素材とした作品で、太宰文学に珍しい明るく希望にみちた青春小説。