商品内容
文学賞情報 |
2013年
第67回
毎日出版文化賞受賞 |
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要旨 |
愛も夢も奪われた。残されたものは、生きのびる意志だけだった。『永遠の仔』『悼む人』を経て、天童文学はここまで進化を遂げた。日本の現実を抉り、混迷する世界と繋がり、私たちの魂を源から震憾させる金字塔、ここに。 |
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歓喜の仔 上
天童荒太/著
幻冬舎
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BK
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父は多額の借金を残して消えた。 母は心を病み植物状態になった。 三兄妹は犯罪に手を染めても、 生き延びる道を探す。 吉丘誠、正二、香は、東京北部の三つの区が重なり合った地域に住む三人きょうだい。 一年前、父・信道は多額の借金を抱えて突然姿を消してしまった。その直後、母・愛子はアパートの窓から発作的に飛び出し大怪我を負い、意識不明で寝たきりになってしまう。以来、きょうだいの日々は一変した。 ロックが好きだった長男の誠は音が聞こえなくなった。父の借金を返しながら家族を養うため高校を中退し、早朝は野菜市場、昼から晩は中華料理屋、深夜は覚醒剤のアジツケの内職をしている。暴力団組織の斉木には引っ越しを手伝わされ、高平には密入国者を海から引き揚げる作業に駆り出され、さらに内職のノルマを増やされ疲れ果てる誠。 絵を描くのが得意で甘えん坊だった小学校六年生の次男・正二。事件後、風景から一切の色が消えてしまった。寝たきりの母のおむつや体位を変えるのは正二の役目だ。だが自分の洗濯や入浴はままならず、通っている小学校でも「くさい」といわれクラス全員から無視されている。 見えないものが見える長女の香は、朝八時、兄の正二に連れられて幼稚園に通園するが、女子学生専用アパート前の電信柱で必ず足を止める。理由は、正二にも分からない。ものの臭いを感じられなくなってしまった香だが、押し入れの前で「くさい」と呟く。 背負いきれないほどの現実がのしかかった仔らは、怒りや悲しみを押し殺し、生き延びるため心を閉ざしてきた……。