書籍ダイジェスト配信サービス SERENDIP 厳選書籍 要旨 魚の漁獲量が減った場合、原因を特定するのは簡単ではない。その魚の生息数自体は減っているのか。減っている場合、なぜ減っているのか。水質が悪い、エサが減った、エサのエサが減ったなど、さまざまな原因が考えられる。目に見えない物質の変化が関わる場合など、化学的な技術や知見が必要な場合もある。本書は、島根県・宍道湖のワカサギとウナギの激減に、「ネオニコチノイド系殺虫剤」という農薬がかかわっていることを明らかにした著者が、その研究の内容を解説したもの。著者の論文は、2019年に学術誌『Science』に掲載された。ネオニコチノイド系殺虫剤は、農作物を害虫から守る一方、魚類のエサとなる虫やエビを減らし、それらをエサとする魚類も減らしているようだ。こうした生態系の変化に気づくためには、マクロな視点に加え、水圏の食物連鎖の上位にある魚を指標とすることが重要という。著者は、農薬を悪者とするのではなく、事実と知識に基づいて将来への前向きな議論を重ねるべきだとしている。著者は東京大学大学院新領域創成科学研究科教授。専門分野は陸水学・沿岸海洋学・生物地球化学。学生時代の卒業研究から学位論文まで宍道湖の生きものをテーマに研究し、その後も一貫して同湖の研究を続けている。 |
商品内容
要旨 |
2019年11月、東京大学・山室真澄教授らによる論文が世界で最も権威ある学術誌のひとつ『Science』に掲載された。それは島根県・宍道湖の魚類の減少に農薬が関係していることを明らかにしたものだった。 |
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目次 |
Interview 幼少期から現在まで水辺がライフワーク!山室真澄教授の信念に迫る |
出版社・メーカーコメント
近年ミツバチの大量死などで注目を浴びた「ネオニコチノイド系農薬」。日本の水田で広く使用されているこの農薬は魚にも悪影響を及ぼしているのではないか? と懸念した釣り人も多いだろう。東京大学大学院新領域創成科学研究所教授である著者は、卒業論文・修士論文・学位論文のすべてを、宍道湖をテーマに書いた。そのデータを駆使し、ほとんどの生態学者ができない「化学分析」という武器をもとに、釣り人が抱いた懸念と同じ疑問に切り込んでいく。著者はデータを積み重ね、裁判の判決文のように明確な論理をもって、ネオニコチノイド系農薬が水中の食物連鎖を破壊し、その結果同湖におけるウナギとワカサギの漁獲高が激減したという結論を導き出す。また、その過程では非常に興味深い注目すべき事例も次々に明らかにされていく。それは私たちが漠然と抱いている常識を覆す内容や、さらにはネオニコチノイド系農薬使用以前にも他の要素で水辺の生態系が激変していた事実が明らかにされる。SDGs、生物多様性の重要性が叫ばれるいま、本書によって著者の視点を共有し知識を得ることは、釣り人をはじめ水辺を愛する人たちの視野を広げ視界を明るく照らし考えを深め、あるべき姿の生態系を取り戻すための大きな指針となるに違いない。