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アイドルについて葛藤しながら考えてみた ジェンダー/パーソナリティ/〈推し〉

出版社名 青弓社
出版年月 2022年7月
ISBNコード 978-4-7872-7449-6
4-7872-7449-X
税込価格 1,760円
頁数・縦 223P 19cm

商品内容

要旨

アイドルたちの多様な実践が普遍的な人気を集める一方で、「恋愛禁止」とその背景にある異性愛規範、「卒業」制度に表れるエイジズム、視線にさらされ続けるパーソナリティなど、アイドルとして生きる人に抑圧を強いる構造的な問題も無視できない。アイドルの面白さと可能性、困難と問題性について、手放しの肯定でも粗雑な否定でもなく、「葛藤しながらアイドルを考える」ことの可能性をひらくための試論集。

目次

序章 きっかけとしてのフェミニズム
第1章 絶えざるまなざしのなかで―アイドルをめぐるメディア環境と日常的営為の意味
第2章 「推す」ことの倫理を考えるために
第3章 「ハロプロが女の人生を救う」なんてことがある?
第4章 コンセプト化した「ガールクラッシュ」はガールクラッシュたりえるか?―「ガールクラッシュ」というコンセプトの再検討
第5章 キミを見つめる私の性的視線が性的消費だとして
第6章 クィアとアイドル試論―二丁目の魁カミングアウトから紡ぎ出される両義性
第7章 「アイドル」を解釈するフレームの「ゆらぎ」をめぐって
第8章 観客は演者の「キラめき」を生み出す存在たりうるのか―『少女☆歌劇レヴュースタァライト』を通して「推す」ことの葛藤を考える
第9章 もしもアイドルを観ることが賭博のようなものだとしたら―「よさ」と「よくなさ」の表裏一体

出版社・メーカーコメント

今日、アイドルは広く普遍的な人気を獲得し、多様なスタイルや可能性をもつジャンルとしても注目されている。しかし、同時に多くの難点を抱え込んでいることも見過ごせない。暗黙の「恋愛禁止」ルールとその背景にある異性愛主義、「年齢いじり」や一定の年齢での「卒業」という慣習に表れるエイジズム、あからさまに可視化されるルッキズム、SNSを通じて四六時中切り売りされるパーソナリティ……。アイドルというジャンルは、現実にアイドルとして生きる人に抑圧を強いる構造的な問題を抱え続けている。スキャンダルやトラブルが発生して、旧態依然ともいえるアイドル界の「常識」のあり方が浮き彫りになるたび、ファンの間では答えが出ない議論が繰り返されている。その一方で、自らの表現を模索しながら主体的にステージに立ち、ときに演者同士で連帯して目標を達成しようとするアイドルたちの実践は、人々をエンパワーメントするものでもある。そして、ファンのなかでも、アイドル本人に身勝手な欲望や規範を押し付けることと裏表でもある「推す」(≒消費する)ことに対して、後ろめたさを抱く人が増えている。本書では、「推している」がゆえにジャンルが抱える問題から目をそらすのではなく、かといって、現に日々活動を続ける一人ひとりのアイドルの存在を無視して「アイドル」そのものを「悪しき文化」として非難するのでもなく、「アイドルを好きでいること」と問題点の批判的な検討との両立を目指す。乃木坂46やAKB48、ハロー!プロジェクト、二丁目の魁カミングアウトなどの具体的なアイドルの実践を取り上げる批評から、「推す」という行為のもつ功罪を問い直す論考、近年K−POPアイドルシーンで盛んな「女性が憧れる女性像」である「ガールクラッシュ」コンセプトの内実を検討するレビューまで、様々な視点から「葛藤しながらアイドルを語る」ことの可能性を浮き彫りにする。

著者紹介

香月 孝史 (カツキ タカシ)  
1980年、東京都生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。ポピュラー文化を中心にライティング・批評を手がける
上岡 磨奈 (カミオカ マナ)  
1982年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院社会学研究科後期博士課程。専攻は文化社会学、カルチュラルスタディーズ
中村 香住 (ナカムラ カスミ)  
1991年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学文学部・同大学大学院社会学研究科非常勤講師。専攻はジェンダー・セクシュアリティの社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)