• 本

ともぐい

出版社名 新潮社
出版年月 2023年11月
ISBNコード 978-4-10-355341-0
4-10-355341-3
税込価格 1,925円
頁数・縦 295P 20cm

NetGalley 会員レビュー

レビュアー

おすすめ度おすすめ度★5

熊小説は大好きで何冊か読んできましたが、力強い筆力に圧倒されました。たったひとり山奥で猟師として生きてきた男の生き様、獲物へのリスペクトなど、胸打つものが多くページを捲る手が止まりませんでした。熊小説ということで、人が熊に喰われる悲惨な事件を描いたものかと想像しましたが、思ってもみなかったアプローチでとても素晴らしい読書体験をさせて頂きました。

レビュアー

おすすめ度おすすめ度★5

犬を相棒として狩猟を行い、山のなかで一人で生きる“熊爪”。穴持たずと呼ばれる冬眠していない熊の姿は、今年ニュースで話題となったヒグマの「OSO18」を重ねた。北海道の厳しい冬、獣たちの鳴き声、仕留められたときの姿、そして臭いまで伝わって来る。とても凄まじい人間と獣との命の対峙を目の当たりにし、生きるということ、命を奪うということを考えさせられた。残酷な描写もありながら、熊爪の生き方を見届けたい思いで読む手を止められなかった。そして読み終えてただ呆然とし、打ちのめされた。ここまで打ちのめされても、この作品を読むことができて良かったです。ありがとうございました。

メディア関係者

おすすめ度おすすめ度★5

「肉弾」も凄まじかったが、この作品も容赦ない。主人公の男は、北海道の山中で孤独に生きる。狩猟を生業とし、時に鹿を捕まえ、兎を捕え、熊を倒すこともある。俗世との関係を拒絶する生活だが、唯一の接点は獲物を買い上げてくれる店の主人。様々な要因によって、その関係値が狂っていく様の展開が見事。ストーリーは韓国映画のように、淡々と残酷な沼地に足を踏み入れていく。実はこの作品の白眉は「人間の業」にある。動物の本質は「本能」だ。しかし人間の本質は「業」の深さにある。それがこの作品を読むとよくわかる。こんなにも人を絶望に陥れる作品を久々に読んだ。

上記レビューの提供元:NetGalley(株式会社メディアドゥ)

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商品内容

文学賞情報

2023年 第170回 直木賞受賞

要旨

死に損ねて、かといって生き損ねて、ならば己は人間ではない。人間のなりをしながら、最早違う生き物だ。明治後期、人里離れた山中で犬を相棒にひとり狩猟をして生きていた熊爪は、ある日、血痕を辿った先で負傷した男を見つける。男は、冬眠していない熊「穴持たず」を追っていたと言うが…。人と獣の業と悲哀を織り交ぜた、理屈なき命の応酬の果ては―令和の熊文学の最高到達点!!

出版社・メーカーコメント

己は人間のなりをした何ものか−−人と獣の理屈なき命の応酬の果てには。明治後期の北海道の山で、猟師というより獣そのものの嗅覚で獲物と対峙する男、熊爪。図らずも我が領分を侵した穴持たずの熊、蠱惑的な盲目の少女、ロシアとの戦争に向かってきな臭さを漂わせる時代の変化……すべてが運命を狂わせてゆく。人間、そして獣たちの業と悲哀が心を揺さぶる、河崎流動物文学の最高到達点!!

著者紹介

河崎 秋子 (カワサキ アキコ)  
1979年北海道別海町生まれ。2012年「東陬遺事」で第46回北海道新聞文学賞(創作・評論部門)受賞。14年『颶風の王』で三浦綾子文学賞、同作で15年度JRA賞馬事文化賞、19年『肉弾』で第21回大藪春彦賞、20年『土に贖う』で第39回新田次郎文学賞を受賞。他書に『絞め殺しの樹』(直木賞候補作)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)