豆は煮えたか
| 出版社名 | 文藝春秋 |
|---|---|
| 出版年月 | 2026年4月 |
| ISBNコード |
978-4-16-392089-4
(4-16-392089-7) |
| 税込価格 | 1,980円 |
| 頁数・縦 | 249P 20cm |
商品内容
| 要旨 |
深川の水茶屋ささげやの女主人お玉。亭主を亡くしてから名物豆餅の味は下がるいっぽう、閑古鳥が鳴く毎日だ。だがお玉には裏の稼業があって、掌を合わせると少し先の未来が見える。占いが目当ての客はひそかに、ある符牒を告げねばならない。―豆は煮えたか。やがて、ささげやには行き暮れた人々が集まる。博打で身を持ち崩した若者、恵まれた生まれ育ちでありながら自信が無い五代目、自分のことは占えない易者、勘が鋭いせいで仲間にハブられる娘、そしてお玉のように不思議な力を持つ者たち。人生って、今日も未来も一筋縄では行かない! |
|---|



出版社・メーカーコメント
深川佐賀町の水茶屋「ささげや」の女将・お玉。彼女は、人の掌に触れると、その人の「人生の束の間が観える」という不思議な力を持っています。悩みを抱えた人々が「豆は煮えたか」という符牒を合図に彼女を訪れ、その不思議な力に導かれていく物語です。お玉自身も、堀に落ちた子供を助けて命を落とすという悲しい事故で夫を失っています。本作は、お玉をはじめ、人知れず特別な力を持つ者たちが織りなす連作短編集です。 ささげやの女将お玉は、表向きは名物の豆餅を売る水茶屋を営んでいます。しかし、彼女にはもう一つの顔がありました。訪れる客の掌に触れることで、その人の未来を垣間見る力。それは本人が望んだものではなく、彼女自身も「あまり気の進む生業ではない」と感じています。 しかし、夫と営んでいたささげやの名物、豆餅をお玉はどうしても上手くつくることができません。女の腕で餅をついても目指すものはできず、小豆を煮ても火加減、塩加減、砂糖の加減までまるで見当違いで、恋しい味にならないのです。客の評判も下がるいっぽうで、どのみち来ない客を待つならと、気が進まないながらも求められると占いをしています。 あるとき、親の決めた縁談と想い人との間で悩む娘、おこうが店を訪れます(「豆は煮えたか」)。お玉は彼女の掌に触れ、やがて観えた未来を静かに告げます。「親御さんのお決めになった縁談はとてもよいものです」。それは、娘が望んだ答えではなかったかもしれませんが、彼女の力は、ただ未来を告げるだけでなく、相談者が自らの足で幸せな道を選ぶための、ささやかな道標となっていきます。 本作の魅力は、お玉だけにとどまりません。物語が進むにつれて、それぞれ異なる不思議な力を持つ人物たちが登場し、彼らの運命が交錯していきます。江戸で指折りの易者・竹原白斎は、客を奪うと噂の「ささげやの女将」の存在を知り、いかさま師と見下しながらも、自らの運気が落ち込んだとき、その力に頼ります(「身のほど知らず」)。 不思議な力を通して描かれるのは、懸命に生きる人々の姿であり、彼らを支える温かな人の縁である。登場人物たちが紡ぐ優しさに触れるたび、心がじんわりと温かくなる。読み終えた後、ささげやの豆餅が食べたくなるような、滋味深い一冊です。