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本町文化堂のレビュー

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掲載レビュー全19件
 
日本語の発音はどう変わってきたか 「てふてふ」から「ちょうちょう」へ、音声史の旅
中公新書 2740
釘貫亨/著
中央公論新社
税込価格  924円
 
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奥深い日本語音声の変遷を詳しく解説
おすすめ度:
平安時代以前、日本語の母音は"あいうえお"の5音の他、"ゐゑを"の3音を加えた8音があり、「い (i)」と「ゐ (wi)」、 「え (e)」と「ゑ(we)」、「お」と「を (wo)」の発音は区別され、「いし(石)」は「イシ (isi)」でも、「ゐなか(田舎)」は「ウィナカ (winaka)」だった等の導入から既に面白い。
他にも「京(kyau)」と「今日(kefu)」とか、「はひふへの」の発音は奈良時代は「パピプペポ」で「母」は「パパ(papa)」。
録音機もない古代の発音がどうして分かるのかという疑問から始まる奈良時代から江戸時代までの日本語音声の変遷を辿る旅。 (2025年07月13日)
ロシア語だけの青春
ちくま文庫 く26−4
黒田龍之助/著
筑摩書房
税込価格  902円
 
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言語を学ぶ喜びや楽しさに満ちた回想録
おすすめ度:
1980年代の東京。外国語に憧れながら、人と被りたくないという理由でロシア語の勉強を始めた高校生の著者は、代々木駅前の雑居ビルにあったミール・ロシア語研究所の門をたたきます。 そこは、ロシア語学者の東一夫・東多喜子夫婦によって1958年に創立され、2013年に閉校した伝説のロシア語学校。正しい発音を何より重視する独自のメソッドとスパルタ教育のもと、ひたすらにロシア語の教科書の暗記・暗唱を繰り返す日々。 学生から社会人まで、様々なクラスメートたちと共に、高校から大学、やがて研究者となるまでロシア語を学び続けた著者の、本当に"ロシア語だけ"の回想録は、厳しさの中に、言語を学ぶ喜びや楽しさに満ちています。 (2025年07月13日)
私書箱110号の郵便物
イドウ/著 佐藤結/訳
アチーブメント出版
税込価格  2,420円
 
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20年前のソウルを感じる、ドラマ化も期待の大人のラブストーリー
おすすめ度:
舞台はソウルにあるFMラジオ局。秋の改編で番組を一緒に出がけることになった、人見知りの女性構成作家と、詩人でもあり、飄々として掴みどころのない男性ディレクター。30代のふたりの恋愛模様を、静かに揺れ動く心の機微とともに描く、落ち着いた大人の「月9」といった趣きです。全9章からなる物語を、1章を1話として、連続ドラマを見るように少しずつ読みすすめてみるのも良いのではないでしょうか。
また、ふたりが手掛ける番組は、懐かしい曲を流す音楽番組。ABBAなどの洋楽から、韓国の古い民謡や演歌など、作中で流れる実在の楽曲を、音楽配信サービスなどで聴きながら読めば、いっそう物語の世界に入り込めるはずです。 (2025年04月20日)
破果
クビョンモ/〔著〕 小山内園子/訳
岩波書店
税込価格  2,970円
 
メーカーより取寄せ
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殺し屋はおばあちゃん!日本公開も待ち遠しい映画化作品
おすすめ度:
金曜日の夜。週末で混み合う電車内で、ゆきずりの若い女性に悪態をつき、執拗な嫌がらせをする中年男性。その目前の座席に座り静かに聖書を読んでいた、年長者の典型に見えるおばあさんが、電車からの降り際、誰にも気付かれない一瞬の間に、その中年男性を鮮やかに毒刃で殺害し去っていく。
そんなシーンに始まる、稼業一筋45年で還暦を過ぎた、爪角(チョガク)と呼ばれる殺し屋のおばあさんが主人公のハードボイルド小説。身体的な老いを感じ、引退も考え始めた爪角の前に、彼女の狙う、若い同業者が現れたことで、爪角は人生最後の死闘を迎えることに…。
韓国では出版後、女性達を中心に、徐々に口コミで人気が広がった作品です。

(2025年04月20日)
大阪偕星学園キムチ部 素人高校生が漬物で全国制覇した成長の記録
長谷川晶一/著
KADOKAWA
税込価格  1,870円
 
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ドラマのような青春ノンフィクション
おすすめ度:
甲子園出場経験もある野球部の、相次ぐ不祥事に見舞われた生野区の私立高校。起死回生の一手に、理事長の息子で、学校運営は素人の新任理事が思い付いたアイディアが「キムチ部」。本書は、そのキムチ部が、漬物のレシピの全国コンテスト「漬物グランプリ」を受賞するまでの軌跡を追ったノンフィクションです。
当初は活動内容すら定まっていなかった「キムチ部」が、元ヤン気質で姉御肌の顧問や、中学時代は不登校だった1年生部長を中心に、見様見真似のキムチ作りから、次第にキムチを通してやってみたいこと、叶えたい夢を、地元コリアンタウンの店主たちをも巻き込みながら、ひとつずつ形にしていく爽やかな青春サクセスストーリー。 (2025年04月20日)
マリリン・トールド・ミー
山内マリコ/著
河出書房新社
税込価格  1,870円
 
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マリリンに導かれ…コロナ渦の大学生のリアルファンタジー
おすすめ度:
コロナ禍がはじまり、東京でひとり孤独な毎日を送る地方出身の大学生・瀬戸杏奈のもとに、ある夜、突然にマリリン・モンローから電話がかかってくる…。
現代を生きる大学生と、50年代のニューヨークにいる伝説の女優との時空を超えた交流。ファンタジー小説のようでありながら、しかし描かれるテーマは今なお続く、女性の生きづらさ。
世間一般の「男に媚びる金髪のセクシーな女優」というイメージと異なり、実際は、読書家で文学への造詣も深く、男社会の中で女性の生きる道を模索した、知的で独立精神に富む女性だったマリリン・モンロー。その真実の姿を知っていく杏奈の姿を通して、現代のジェンダーの課題にも対峙する青春小説です。

(2025年04月20日)
われは熊楠
岩井圭也/著
文藝春秋
税込価格  2,200円
 
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知られざるエモーショナルな熊楠の人生
おすすめ度:
その類稀なる才気から「紀州の天狗(てんぎゃん)」とも呼ばれた南方熊楠の生涯が、この世のあらゆる事象を知り尽くすことで生命の本質、そして自分自身がどういう存在なのかを追い求めたひとりの男の、現実と夢を行き来する、魂の旅として描かれます。 物語の舞台の大半が和歌山ということで、和歌山弁が自然に飛び交うのも読みどころ。また、熊楠の生涯に大きな影響を与えたと言われている、熊楠と同じ中学の後輩で、熊楠が「属魂の美人なり」と書き残している、羽山繁太郎・蕃次郎の兄弟との、恋愛感情も仄めかされる関係が、物語の中で重要な役割を果たしている事も注目に値します。 (2025年04月20日)
台湾漫遊鉄道のふたり Chizuko & Chizuru’s Taiwan Travelogue
楊双子/著 三浦裕子/訳
中央公論新社
税込価格  2,530円
 
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美食を巡る鉄道旅で知る、日本植民地下の台湾と帝国日本
おすすめ度:
物語の舞台は昭和13年、日本植民地下の台湾。講演旅行で台湾へ渡った日本人の若い流行作家の青山千鶴子は、博識で美しい台湾人通訳、王千鶴と出会います。妖怪並みの胃袋を自認し、食への並々ならぬ情熱をもつ千鶴子と、実は天才的な料理の腕前をもつ千鶴。そんな二人の女性が、台湾を鉄道で旅する物語は、庶民の食卓から屋台飯、伝説の女性料理人がつくる、究極の宴席料理まで、豊かで奥深い台湾料理の世界へ読者を誘います。
もっとも、この小説は美食を味わうだけではありません。千鶴子は台湾の地で、日本の植民地政策の欺瞞、傲慢な日本人の意識、台湾人への様々な差別や偏見を目にすることに。そうした歴史を知る時、読者も一抹の苦さを覚えることになるはずです。 (2025年04月16日)
ナツコ 沖縄密貿易の女王
文春文庫 お28−2
奥野修司/著
文藝春秋
税込価格  979円
 
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和歌山も関係した終戦直後の沖縄密貿易ノンフィクション
おすすめ度:
1946年から1951年の間、八重山列島や台湾、香港と日本本土を船で結ぶ密貿易の拠点として栄え、「ケーキ(景気)時代」と呼ばれた沖縄を舞台に、幼い二人の娘を抱える母親でありながら、度胸と才覚で密貿易の女親分にのぼりつめた、金城夏子の生涯を追ったノンフィクション。関係者や遺族からの聞き取りと、膨大な資料から、当時の沖縄の密貿易の実態と、時代の熱気が立ち昇ってくる一冊です。
ちなみに夏子は、和歌山にも密貿易品の販路を広げ、当時、和歌山市内に居住していた大物右翼と手を結び、沖縄から紀ノ川河口まで砂糖を密輸し、それを老舗和菓子屋が買い取っていたという驚きのエピソードも。 (2025年04月16日)
舌の上の階級闘争 「イギリス」を料理する
コモナーズ・キッチン/著
リトルモア
税込価格  1,980円
 
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舌の上の階級闘争 「イギリス」を料理する
おすすめ度:
時に「食事が不味い国」と揶揄されがちなイギリス。しかしイギリス料理は本当に不味いのか。パン屋と農家に大学教授の3名からなるユニット「コモナーズ・キッチン」が、ベイクドビーンズやイングリッシュブレックファスト、ジェリードイール(ウナギのゼリー寄せ)といった定番料理を、実際に料理し味わいながら、美味いか不味いかだけでは無い、それらの料理が親しまれる理由、イギリスの庶民の暮らしや社会の在り方、歴史的背景を読み解いていきます。知的好奇心がくすぐられるとともに、お腹も空いてくる一冊。 (2025年04月01日)
幸あれ、知らんけど
平民金子/著
朝日新聞出版
税込価格  1,870円
 
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あの鐘を鳴らすのは、きっとこんなエッセイ
おすすめ度:
妻と娘との何気ない日常を描くことが、静かな祈りの様に思えてくる。道端に咲く小さな花に植物図鑑で覚えた名前を思い出しながら、春から小学生になる子どもと通学路を歩く。その繋いだ手に、優しさやいたわりや触れ合うことを信じたい心が戻ってくる。あの鐘をならすのは平民金子さんのこのエッセイなんじゃないかと思う一冊。 (2025年04月01日)
月花美人
滝沢志郎/著
KADOKAWA
税込価格  2,145円
 
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学びを通じて偏見や無知と対峙する、勇気ある人々の物語
おすすめ度:
剣鬼と呼ばれた侍が、文字通り命をかけて、エリエールやロリエ並の生理用ナプキンの製造に挑む時代小説、滝沢志郎さんの『月花美人』。

正直、男性である自分は、生理を扱う物語ということで、最初はちょっと読むのに気恥ずかしさもあったのですが。生理の話題に及び腰になる男性は自分以外にも少なくないはず。そして、それは主人公の望月鞘音も同じ。まじてや、生理は穢れと考えられてた江戸時代。
当初は強い忌避感を覚えた望月鞘音も、しかし、彼はそこから学ぶことを選ぶ。生理とはどういったものなのか。生理を穢れと考える社会は果たして正しいのか。学びの先に、鞘音が見た光景とは…。

本作は、学ぶことを通じて、自身の偏見や無知と対峙した勇気ある人々の物語。真正面から打たれました。 (2025年04月01日)
呼人は旅をする
長谷川まりる/著
偕成社
税込価格  1,650円
 
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呼人は旅をする
おすすめ度:
原因不明の特殊体質のせいで、動物や虫、植物に自然現象など、様々なものを呼び寄せてしまう「呼人」たちを描いた物語。
例えば「雨の呼人」。彼女がいる地域は常に雨が降るため、一定期間以上は同じ場所に留まることができません。小学生の彼女はリモートワークを受けながら各地を旅する生活。その旅にも家族やボランティアの支援が必要で、常に不自由や困難が共にあります。SF的とも言える設定ですが、この物語の裏には、現実の社会で、病気や障害のため自由を制限される人たちの姿を見ることもできるでしょう。描かれるのは他者を想う心の大切さ。
10代の読者向けのヤング・アダルト小説ですが、多くの人に手に取っていただきたい作品です。

(2025年04月01日)
地べたから考える 世界はそこだけじゃないから
ちくまQブックス
ブレイディみかこ/著
筑摩書房
税込価格  1,320円
 
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地べたから考える 世界はそこだけじゃないから
おすすめ度:
イギリスの地方都市ブライトン在住のコラムニストであり、本人いわく「最底辺保育所」で働いている、ブレイディみかこさんによるエッセイ。
タイトルにある「地べた」とは、ブレイディみかこさん自身も子育てをしながら生活を送る、貧民街といわれる地域。そこで暮らす中で見えてきた、イギリスの労働者社会の現実。障害や精神疾患を伴う貧困の連鎖、移民同士の中にも存在する差別などを通して、決して日本も他人ごとではない社会の問題を考える本書ですが、どうしようもない厳しい現実を前にしても、簡単には折れない心と、毒舌の中にもただようユーモアをもった言葉からは、悲観よりも、明日を生きていくための強さが感じられます。 (2025年04月01日)
夜明けのすべて
文春文庫 せ8−5
瀬尾まいこ/著
文藝春秋
税込価格  803円
 
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夜明けのすべて
おすすめ度:
月に一度、PMS(月経前症候群)という病気でどうしてもイライラが抑えられなくなってしまう藤澤さん。そんな彼女が勤める会社に転職してきたのは、パニック障害のために、たくさんのことを諦めて生きる山添君。
傍目にはなかなか見えない原因による、生き辛さを抱える二人。当初は、互いの病気や障害の特性が分からないゆえの誤解もありながら、次第に、相手を知っていく中で、出来る範囲で、困っていることの助けになりたい気持ちが芽生えてきます。
友人でも恋人でもない藤澤さんと山添くんの、それでも互いを思いやることができる関係性。そして二人を優しく見守る周囲の人々の物語は、読む人の心にも、温かい明かりを灯してくれるはずです。 (2025年04月01日)
正直申し上げて
文春文庫 の16−11
能町みね子/著
文藝春秋
税込価格  924円
 
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正直申し上げて
おすすめ度:
取材をしない、コタツの中でも書けるような記事を「コタツ記事」と言います。基本的に、適当なことを書いている記事を揶揄する言葉ですが、あえて「最高のコタツ記事を目指す」と冗談半分ながらも公言するのが能町みね子さん。
2021年10月から2024年4月までの『週刊文春』連載のコラムをまとめた本書は、コタツ記事の通り、ネットやテレビで見聞きした政治家や芸能人などの発言がテーマ。ただ、そうした発言の日本語の言い回しや、微妙な表現のニュアンスから、その深意を読み解き、時々の社会の風潮などと合わせ、独自の視点で考察する鋭さが凡庸なコタツ記事と一線を画す所以。ここ数年の社会の出来事の振り返りにもお薦めです。 (2025年04月01日)
庭の話
宇野常寛/著
講談社
税込価格  3,080円
 
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庭の話
おすすめ度:
気付けば休日はスマホを触っているうちに終わってしまう。そんな人にお薦めしたいのが本書。
SNSでは「いいね」を通して、簡単に人と繋がれる一方、気づけば「いいね」をもらうためのゲームに必死になってしまうことも。では、そんなゲームから離れるためにはどうすれば良いのか。そのヒントが「庭」。著者の宇野さんは、人間以外の自然と向き合い、一人で手を動かしてつくる庭づくりの喜びの中に、これからの社会の可能性を見出します。
社会批評と哲学のフィールドを行き来しながら、「いいね」をもらわなくても大丈夫な「庭」のような場所を、社会の中に作る方法を考える。長い休みにじっくりと読みたい一冊です。 (2025年04月01日)
俺の文章修行
町田康/著
幻冬舎
税込価格  1,870円
 
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俺の文章修行
おすすめ度:
高校生の時に初めて読んで物語の面白さ以上に、その文章の言葉選びやリズムの面白さに驚いたのが、町田康さんの第123回芥川賞受賞作『きれぎれ』でした。その町田康さんが、自身の手の内を明かしながら文章力を身につける方法を伝授してくれるのが本書。
文章力といっても、それは「実用的な文章」ではなく、あくまでも「面白い文章」を書くにはどうすれば良いのか。まずは多くの本を読むこと。そして同じ本を何回も読むこと。それを実践してきた町田さんの幼き日の原体験から、作家として身に着けた文章術の技法までを、まさに町田節と言える唯一無二の語りで綴った一冊は、思わず自分も文章を書いてみたくなる愉しさに満ちています。 (2025年04月01日)
料理の意味とその手立て
ウーウェン/著
タブレ
税込価格  2,530円
 
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料理の意味とその手立て
おすすめ度:
料理がしたくなる一冊。料理家ウー・ウェンさんの『料理の意味とその手立て』は、もやしにお酢、塩と胡椒、油だけで作る「もやし炒め」の作り方からはじまります。本当にシンプルな料理でも、もやしのヒゲ根をとるという手間と、火入れの加減で立派なご馳走になるというのが、ウー・ウェンさんの教えです。
ただレシピを紹介するのではなく、例えば白菜なら「茎は炒めて、葉は鍋に。中国では茎は鍋に入れません。茎は水分が多いからスープの味を薄めてしまいます。」という風に、食材ごとに適した調理法とその理由を分かりやすい言葉で教えてくれる本書は、紹介されているレシピ以外の、様々な料理を作る際にも、大いに参考になるはずです。 (2025年04月01日)

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