[要旨]
小鳥のブローチ、ダンゴムシの死骸、リボンをかけた五線紙―缶に収められたささやかなものたちが奏でる美しき五篇。補聴器のセールスマンだった父の骨壼から出てきた四つの耳の骨。あたたかく、ときに禍々しく、静かに光を放つようにつづられた珠玉の最新作品集。オタワ国際アニメーション映画祭2023VR部門最優秀賞、アヌシー国際アニメーション映画祭2024公式出品、世界を席巻したVRアニメ、もう一つの物語。
耳の中に棲む私の最初の友だちは涙を音符にして、とても親密な演奏をしてくれるのです。補聴器のセールスマンだった父の骨壺から出てきた四つの耳の骨(カルテット)。あたたかく、ときに禍々しく、静かに光を放つようにつづられた珠玉の最新作品集。オタワ映画祭VR部門最優秀賞・アヌシー映画祭公式出品世界を席巻したVRアニメから生まれた「もう一つの物語」「骨壺のカルテット」補聴器のセールスマンだった父は、いつも古びたクッキー缶を持ち歩いていた。亡くなった父の骨壺と共に、私は親しかった耳鼻科の院長先生のもとを訪ねる。「耳たぶに触れる」収穫祭の“早泣き競争”に出場した男は、思わず写真に撮りたくなる特別な耳をもっていた。補聴器が納まったトランクに、男は掘り出したダンゴムシの死骸を収める。「今日は小鳥の日」小鳥ブローチのサイズは、実物の三分の一でなければなりません。嘴と爪は本物を用います。残念ながら、もう一つも残っておりませんが。「踊りましょうよ」補聴器のメンテナンスと顧客とのお喋りを終えると、セールスマンさんはこっそり人工池に向かう。そこには“世界で最も釣り合いのとれた耳”をもつ彼女がいた。「選鉱場とラッパ」少年は、輪投げの景品のラッパが欲しかった。「どうか僕のラッパを誰かが持って帰ったりしませんように……」。お祭りの最終日、問題が発生する。
小川 洋子 (オガワ ヨウコ)
1962年、岡山市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。1988年「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞を受賞。’91年「妊娠カレンダー」で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』で読売文学賞、本屋大賞、同年『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、’06年『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、’13年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、’20年『小箱』で野間文芸賞を受賞。’19年『密やかな結晶』の英語版「The Memory Police」が全米図書賞の翻訳部門最終候補、’20年ブッカー国際賞の最終候補となる。’07年フランス芸術文化勲章シュバリエ受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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4-06-536832-4
耳に棲むもの
小川洋子/著
講談社
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BK