[要旨]
人類が金属の鉄を使いだしたのは、たかだか五千年前のことにすぎない。しかし元素としての鉄は、四十億年前に生命が誕生したときから、生命になくてはならないものであり、その後の生命の発展を陰で演出してきた、と言ったらみなさんは驚かれるだろうか。このいずれの鉄のはたらきも、一つの奇跡的な偶然から生み出された。鉄はすべての元素のなかでもっとも安定な原子核を持ち、その一つの帰結として、地球では質量比でもっとも多い元素である。その鉄が、その持っている電子の数のために、生命にとっても、現代文明にとっても、かけがえがない機能を持つ元素となった、という偶然である。このことが、生命の誕生と発展のなかで、またさらに人類文明の展開のなかで、数々の奇跡を起こしてきた。
[目次]
第1章 奇跡の誕生;第2章 生命は鉄にどのように依存しているか;第3章 鉄から見えてくる生命の歴史;第4章 鉄が人類を救うか;第5章 鉄が人類に高度な文明をもたらした;第6章 鉄から見た文明史;第7章 鉄器時代は終わらない
地球温暖化は鉄を海に撒けば解決する!?生命の誕生と進化の謎を、「鉄」という物質がもつ特性を視点に解明する快著!
鉄という物質が存在すること、それが奇跡だ生命の誕生、進化から人類文明の発展まで、地球で起きた奇跡は、すべて鉄抜きには語れない。鉄のもつ類まれなる特性という視点から見た、生命・文明・環境論。
矢田 浩
(ヤダ ヒロシ)
1935年東京生まれ。東京大学化学系大学院化学専門課程修士課程修了。工学博士。専攻は金属工学。八幡製鉄(現新日鉄)勤務後、熊本大学工学部講師、カナダブリティッシュコロンビア大学客員教授、静岡理工科大学教授を経て、同大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)