[要旨]
“お前は自分の仕事を馬鹿にされるのを嫌う。お前自身が、誰よりも馬鹿にしているというのに。”腕利きの溶接工が陥った突然スランプ。日に日に失われる職能と自負。異色の職人小説。第169回芥川賞候補作。
我が手の太陽
ほんのいえ宮脇書店越谷店 (埼玉県越谷市)
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ベテランの溶接工が思いがけなくスランプにおちいる。鉄鋼を溶かす炎の熱が、淡々とした描写から読み手にじりじりと伝わってくる。火だけがカラー色のモノクロ映画を見ているような地味すぎるほどの独特の設定が、味わったことがない読後感をもたらす。地に足がついた感じのする落ち着いた筆致が文学作品としての重厚さを増す。常に話題作を世に問いかけるくる作家であるように思う。 (2023年9月23日)
鉄鋼を溶かす、太陽と同レベルの高温の火を扱う溶接作業は、どの工事現場でも花形的存在。その中でも腕利きの伊東は自他ともに認める熟達したトップ溶接工だ。鉄鋼を溶かす間、伊東は滅多に瞬きしない。息も最小限に殺す。火が鉄板を貫通すると、その切り口が上下に破かれ初め、切断面から動脈血にも似た火花が、ただただ無尽蔵に散る。ーーそんな伊東が突然、スランプに陥った。 ”お前が一番、火を舐めてるんだよ” ”お前は自分の仕事を馬鹿にされるのを嫌う。 お前自身が、誰より馬鹿にしているというのに” “「人の上に立つ」ことにまるで関心がなく、嫌悪感すら抱いていた。 自分の手を実際に動かさないのなら、それは仕事ではなかった。” いま文学界が最も注目する才能が放つ前代未聞の職人小説。 工事現場の花、腕利きの溶接工が陥った突然のスランプ。その峻烈なる生きざまを見よ!
石田 夏穂 (イシダ カホ)
1991年埼玉県生まれ。東京工業大学工学部卒。2020年「その周囲、五十八センチ」で第38回大阪女性文芸賞を受賞。2021年「我が友、スミス」で第45回すばる文芸賞佳作、同作で第166回芥川龍之介賞候補。2022年「ケチる貴方」で第44回野間文芸新人賞候補となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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4-06-533076-9
我が手の太陽
石田夏穂/著
講談社
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BK