女のいる暦
講談社文芸文庫 かN7
出版社名 | 講談社 |
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出版年月 | 2025年7月 |
ISBNコード |
978-4-06-540136-1
(4-06-540136-4) |
税込価格 | 2,420円 |
頁数・縦 | 291P 16cm |
商品内容
要旨 |
昭和三十四年、川崎長太郎は本書あとがきに「この一篇で、私が評価されても、悔いるところはありません」と記した。大正期後半、二十四歳の主人公が東京で習作に励みつつ、子供向け読み物の注文に応えて糊口をしのいでいた時期に出会ったカフェの女給・明子から、戦後復員した小田原で十数年を経て再会した民枝に至るまで、時の移ろうなか、出会い別れた女たちとの日々を綴る長篇小説、初の文庫化。 |
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出版社・メーカーコメント
23歳で文壇デビューしながら、その後不遇の時代が続いた私小説作家の川崎長太郎。東京での執筆に見切りをつけ、小田原の実家物置小屋に棲み、創作に専念すること十数年……。1954年に娼婦たちとの関わりを描いた『抹香町』で長太郎ブームが起きるが、しばらくすると終息、そして間を置いて再び話題に……という具合の作家人生だった。この作品は大正期後半、24歳の主人公が私小説の習作に励みながらも食べていくために子供向け読み物で糊口をしのいでいた時期に始まる。その後は27歳、29歳、31歳、33歳、35歳、すこし空いて42歳、45歳と年齢を重ねるたび、その時期に交際のあった女(カフェの女給、若い女流作家、家出した人妻、娼婦、芸者、食堂の女中)との日々を媒介にして大正末から敗戦直後に至る作家生活の周辺を回想するという仕立てで書かれている。一見、いい気なものだという話にすぎないと感じられるかもしれないが、その筆致に甘さや虚飾はない。愛すべき人間でありながら、とうてい普通の市民としては生きられない「業」を背負ったかのような者たちが懸命に生きる姿が鮮やかに描き出されている。読後感はむしろ清々しささえ湛えているのである。