書店レビュー
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- 平山書店 (秋田県大仙市)
「物のあはれを知る心」という言葉は、本居宣長の名とともに私たちに良く知られている。一般に「物のあはれを知る心」とは、悲しい時には心乱れ、嘆き悲しむのが「かざらぬ真の心」という人情だとして、日本人共通の大事な心のありようを示すことだと信じられている。しかし、この言葉は本来どのようなことを言っているのだろう。宣長の説明では、「物のあはれを知る心」とは、事につけて様々に思い、動き乱れるような心をいっている。例えば、人の死が悲しいのは、別れという体験を積み重ね、そのときの悲しい感情を経験しているからこそ、究極の別離である死がとても悲しく感じられるというのだ。いいかえれば、人に共感したり同情することができるか、できないかということは、過去に自身が同じような感情経験をしているかどうかで分かれるといえよう。「物のあはれを知る心」という言葉が日本人の心の特徴とされてきたその土台には、国民共通の感情体験があるのからに他ならない。ただ、問題は幼児期から高齢期までその時期に応じて人の社会での立ち位置が変化してゆく中で、小林秀雄が言っているように、このような経験を「損なわず保持して行くことが難しい」ところにあ
(2008年10月21日)
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