• 本

思考停止社会 「遵守」に蝕まれる日本

講談社現代新書 1978

出版社名 講談社
出版年月 2009年2月
ISBNコード 978-4-06-287978-1
4-06-287978-6
税込価格 924円
頁数・縦 210P 18cm

書店レビュー 総合おすすめ度: 全1件

  • いま、日本の社会を覆う閉塞感は、法令を遵守することが自己目的化してしまっていることが原因と著者は説く。例として出された食の「偽装」問題では、真実はマスコミの報道とは全く異なっていたことが明らかにされており、とても興味をそそられた。ところで、民法学の最高権威であった我妻榮氏は、その名著の誉れ高い『法律における理窟と人情』において次のように述べている。法律家の任務とは、常識と人情が法律論の一般的確実性を崩さずに通るようにすることだと。ここで、一般的確実性というのは、いわゆる杓子定規と先生が呼んだ、本書でいう法令遵守の意味である。その任務を守る方法として挙げているのが、法律の立法理由にさかのぼって考えるべし、というものだ。著者が事案の背景や事情を顧みない法的処理に危機を感じ、本書を著した理由は、おそらく我妻先生の言葉がなおざりにされていることも背景にあるのではないだろうか。いまの日本を、泉下の我妻先生は何と思うのだろう。いまご紹介した2冊は、ぜひセットで読んでいただきたい本である。(のり)

    (2009年6月25日)

商品内容

要旨

日本の経済と社会を覆う閉塞感の正体。相次ぐ食品企業の「不祥事」、メディアスクラム、年金記録「改ざん」問題、裁判員制度…コンプライアンス問題の第一人者が、あらゆる分野の問題に斬り込み再生への処方箋を示す。

目次

第1章 食の「偽装」「隠蔽」に見る思考停止
第2章 「強度偽装」「データ捏造」をめぐる思考停止
第3章 市場経済の混乱を招く経済司法の思考停止
第4章 司法への市民参加をめぐる思考停止
第5章 厚生年金記録の「改ざん」問題をめぐる思考停止
第6章 思考停止するマスメディア
第7章 「遵守」はなぜ思考停止につながるのか
終章 思考停止から脱却して真の法治社会を

おすすめコメント

日本の「法」が引き起こす問題を鋭く検証!建築不況はじめ、今の日本社会を騒がせている多くの問題の背景には、社会と法のズレがある。「法令遵守」の名の下に不完全な法が暴走する現状に警告を鳴らす。

著者紹介

郷原 信郎 (ゴウハラ ノブオ)  
1955年、島根県松江市生まれ。東京大学理学部卒。東京地検特捜部、長崎地検次席検事、法務省法務総合研究所総括研究官などを経て、2005年より桐蔭横浜大学法科大学院教授、06年弁護士登録。08年、郷原総合法律事務所開設。警察大学校専門講師、公正入札調査会議委員(国土交通省、防衛省)、標準報酬遡及訂正事案等に関する調査委員会委員(厚生労働省)なども務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)