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民衆と司祭の社会学 近代フランス〈異教〉思想史

出版社名 白水社
出版年月 2017年4月
ISBNコード 978-4-560-09538-6
4-560-09538-8
税込価格 3,520円
頁数・縦 304,3P 20cm

商品内容

要旨

“信じる”ことは、なぜいつも困難なのか?一方に朽ち果てる大伽藍、目を転じれば無数の「野生人」と「素朴な人々」…フェティシズムの発見からオリエンタル・ルネサンスを経て社会学の誕生までを描く初めての思想史。

目次

社会科学と世俗の宗教性
1 異教とキリスト教の精神史―十八世紀(一神教原理と近代異教主義の相剋
啓蒙思想としてのフェティシズム概念―ド・ブロスとヒューム
宗教起源論から言語起源論へ―ド・ブロスの象徴主義批判
ド・ブロスと十八世紀啓蒙―その思想と知的生活)
2 「自由」と「社会」のアリーナ―十九世紀(近代人の自由とフェティシズム―コンスタンの宗教政治学
「普遍史」とオリエント―ミシュレとロマン主義の時代
民衆・宗教・社会学―サン=シモンとコント
権威と信頼の政治学―コントの実証主義再考)
ベルクソンの神秘主義思想とキリスト教

おすすめコメント

ポピュリズムとデモクラシーの深層へ 東日本大震災とそれに続く東電福島第一原発事故は、科学と社会に深刻な亀裂をもたらした。どの情報が正しいのか? 誰を信じればいいのか? 突然「聖性」を帯びた〈反原発学者〉の姿は、さながら聖人を思わせるものがあった。本書は、『労働階級と危険な階級』のルイ・シュヴァリエや『預言者の時代』のポール・べニシューに触発されつつ、カトリックの大伽藍が崩壊した大革命以降の歴史を司祭(エリート)と野生人(民衆)の抗争として描く試みである。その際、鍵となるのは、〈フェティシズム〉という概念である。旧体制を批判する一環としてあらゆる事物の起源が探究された啓蒙主義の時代、この概念は言語の起源や宗教の起源への関心の下、古代人(エジプト人)と野生人(アフリカ黒人)の信仰として見出されたが、19世紀に民衆が「文明社会に侵入した野生人」として、すなわち「危険な階級」(シュヴァリエ)として前景化してくると、その中核的な分析枠組みとして急浮上してゆく。昨今、ポピュリズムが何かと議論になるようになったが、フェティシズムをめぐる司祭と野生人のこの抗争を読み解くことで、初めてその深層は明らかになる。その先に、信じることが、なぜいつも困難なのかの答えも見えてくるはずだ。

著者紹介

杉本 隆司 (スギモト タカシ)  
1972年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。仏ナンシー第二大学DEA課程修了。現在、一橋大学大学院社会学研究科特別研究員。訳書にド・ブロス『フェティシュ諸神の崇拝』(法政大学出版局、日仏社会学会奨励賞)他(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)