十年前、冒険も恋も終わったはずなのに−−。社会人四年目の牧野透弥は幼少期、優しい祖父母に引き取られ大学生のころに二人を亡くして以来、同性愛者であり内向的な性格も相まって、恋愛せず波風立てない日々を過ごしている。実は透弥はかつて別世界のネスティニア王国に召喚され、勇者として魔王を倒したことがある。当時まだ十六歳だった透弥は、ともに魔王を討伐した剣士・アーロンに恋心を抱いていた。初恋だったが、自分の性的志向が他人と違うことも知り、想いは秘めたまま元の世界へ帰還した。しかしある日、透弥はネスティニア王国に勇者として二回目の召喚をされる。倒したはずの魔王が復活した兆候があり、もう一度勇者に倒してほしいらしい。どうやらこの世界は前の召喚から二十六年経っており、王国で透弥が伝説の勇者と語り継がれる一方、アーロンは結婚し、爵位を得て剣士としての前線を退いていた。さらに今回の討伐パーティとして紹介されたのは、アーロンによく似た彼の息子で問題児の王国騎士・ギルバート。腕は立つが厳めしい性格故に良くない噂も多く、他の仲間との衝突も絶えないが、透弥はギルバートが旅の中で見せる素顔を知っていくうちに、彼の本当の姿が見えてきて−−？