• 本

三井大坂両替店 銀行業の先駆け、その技術と挑戦

中公新書 2792

出版社名 中央公論新社
出版年月 2024年2月
ISBNコード 978-4-12-102792-4
4-12-102792-2
税込価格 1,100円
頁数・縦 270P 18cm

書籍ダイジェスト配信サービス SERENDIP 厳選書籍

要旨

現代の金融機関にとって、「与信」は業務上きわめて重要な意味を持つ。金融関連サービスの多様化に即した与信システム、信用情報機関のあり方を考える際のヒントの一つが「江戸時代」にあると聞いたら驚くだろうか。三井グループの淵源の一つである三井大坂両替店が、独自の信用調査の技術を有していたのだ。
本書では、江戸時代中期初頭である1691年(元禄4年)に三井高利が開業した三井大坂両替店の金融機関としてのビジネスモデルを、「聴合(ききあわせ)」と呼ばれた信用調査を中心に、残された膨大な史料をもとに解き明かしている。同店は、江戸幕府から、大坂から江戸への送金業務を請け負っていたが、委託された公金を元手に民間への融資を行っていた(幕府は送金業務の完遂を条件に黙認していたという)。利益を確保するとともに、公金を預かる責任から、慎重な信用調査を実施していたようだ。
著者は法政大学経済学部准教授。公益財団法人三井文庫研究員。博士(歴史学)。大阪市史料調査会調査員などを経て現職。著書に『近世畿内の豪農経営と藩政』(塙書房)がある。
※要旨の情報〔社会情勢、著者経歴など〕は、作成日当時のものです。
以降内容が変わっている場合があります。[要旨作成日:2024年4月2日]

商品内容

文学賞情報

2024年 第46回 サントリー学芸賞・政治・経済部門受賞

要旨

元禄四年(一六九一)に三井高利が開設した三井大坂両替店。当初の業務は江戸幕府に委託された送金だったが、その役得を活かし民間相手の金貸しとして成長する。本書は、三井の膨大な史料から信用調査の技術と法制度を利用した工夫を読み解く。そこからは三井の経営手法のみならず、当時の社会風俗や人々の倫理観がみえてくる。三井はいかにして栄え、日本初の民間銀行創業へと繋げたか。新たな視点で金融史を捉え直す。

目次

第1章 事業概要(開業と業績
主力融資―延為替貸付 ほか)
第2章 組織と人事(店舗の立地とそれを取り巻く経済状況
奉公人の昇進と報酬 ほか)
第3章 信用調査の方法と技術(「聴合」から成約までの流れ
都市不動産の時価と立地調査 ほか)
第4章 顧客たちの悲喜こもごも(不和、紛争、悪評を招いた不品行
ギャンブル中毒、横領癖、身のほど知らず ほか)
第5章 データで読み解く信用調査と成約数(契約の口数と特徴
顧客の特徴 ほか)

出版社・メーカーコメント

元禄四年(一六九一)に三井高利が開設した三井大坂両替店。元の業務は江戸幕府に委託された送金だったが、その役得を活かし民間相手の金貸しとして栄えた。本書は、三井に残された膨大な史料から信用調査の技術と、当時の法制度を利用した工夫を読み解く。そこで明らかになるのは三井の経営手法のみならず、当時の社会風俗や人々の倫理観だ。三井はいかにして日本初の民間銀行創業へとつながる繁栄を築いたのか。

著者紹介

萬代 悠 (マンダイ ユウ)  
1987年大阪府生まれ。2015年、関西学院大学大学院文学研究科博士課程後期課程文化歴史学専攻日本史学領域単位取得退学。2016年、博士(歴史学)。大阪市史料調査会調査員を経て、現在、公益財団法人三井文庫研究員。著書『近世畿内の豪農経営と藩政』(塙書房、2019年、第62回日経・経済図書文化賞受賞)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)