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「アラブの春」のアクチュアリティ エジプト一月二十五日革命を中心にみるグローバリゼーション下の日常的抵抗

出版社名 山川出版社
出版年月 2024年7月
ISBNコード 978-4-634-67262-8
4-634-67262-6
税込価格 7,150円
頁数・縦 348,23P 22cm

商品内容

要旨

「エジプト1月25日革命」を中心に、時間的・空間的比較をとおして「アラブの春」における数多の声を再生する。

目次

総論 ストリートを生きるグローバルな身体―「エジプト一月二十五日革命」を中心にみた「アラブの春」の歴史人類学
第1部 歴史のなかの「アラブの春」(エジプトと民主主義―議会・憲法・革命の歴史から
群衆の力、組織の力―二〇一一年三月の憲法改正とは何だったのか
「国家のイデオロギー装置」の揺らぎ?―政治変動と新旧メディアの役割検証)
第2部 もつれあう革命のアクターたち(「四月六日運動」の貢献と限界
一月二十五日革命以降のイスラーム諸勢力の競合と言説―信仰と権力をめぐって
「一月二十五日革命」とコプト正教会―民主化とマイノリティ問題の不協和音
革命と女性―エジプト二〇一一年革命の最初の一年間をふりかえる)
第3部 日常性と身体からみた「アラブの春」―「アラブの春」のフィールドへ(家族関係から考える、広義の「一月二十五日革命」
「エジプト一月二十五日革命」における自警互助組織の創発的形成)
第4部 空間的比較のなかの「アラブの春」(「チュニジア革命」と空間的比較考察の試み
抵抗の「源泉」から考える「シリアの春」
抗議する民衆の行動主体と文化的営為―イランとエジプトの比較から)

出版社・メーカーコメント

「アラブの春」から10年以上の時が経った。2011年初め、その磁場の一つとなったエジプトの首都カイロのタハリール(解放)広場は、若い男女を中心とする人々で埋め尽くされ、シュプレヒコールや演説のほか、即興の歌や詩の朗読、グラフィティー、そしてテント村がいたるところに渦巻いていた。だが今日、タハリール広場に立つということは、廃墟の前にたたずむかのようである。広場に充溢していた熱気や喧騒は跡形もなく、かつての情念はのちに置かれた記念碑へ無理やり封じ込められ、過去のものとして葬り去られたかのようだ。「アラブの春」や「エジプト1月25日革命」の諸成果も、つぎつぎと覆されてきた。しかし、ちょっと待っていただきたい。我々はそもそもあのとき何が起こったのか、本当に知っているのだろうか。それどころか、その後の負の結果から逆算して、歪んだレンズから物事を視てはいないだろうか。「アラブの春」や諸革命によって生じたことと、その後に反革命の旧勢力や「外国」勢力によってもたらされた破綻が混同されすぎてはいないだろうか。日本にいた我々は、当時、何が起こっているかをよく把握していなかっただけでなく、ますます実態と乖離したイメージを記憶に刻印しつつあるのではなかろうか。そして、それ以上に重要なのは、この変動が今もなおアラブ世界をこえて地球大の連鎖反応に直結して多大な影響を与えつづけていることであろう。本書は、今改めて、「アラブの春」の実態や諸成果、そして人々の営為を、時間的・空間的に把握する試みである。

著者紹介

大稔 哲也 (オオトシ テツヤ)  
早稲田大学文学学術院教授。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了、博士(文学)。専門分野:中東歴史人類学、中東社会史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)