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モーツァルトとナチス 第三帝国による芸術の歪曲

出版社名 白水社
出版年月 2012年12月
ISBNコード 978-4-560-08260-7
4-560-08260-X
税込価格 4,400円
頁数・縦 332,88P 20cm

商品内容

要旨

ナショナリズムと一見無縁なモーツァルトのイメージや作品を、ナチスはいかに政治的に利用していったか。文化の歪曲の実態とユダヤ系音楽家・学者たちの苦闘を、オーストリア併合以前から戦後の軋轢まで、膨大な資料から検証する。

目次

第1章 プロローグ―一九三一年モーツァルト・イヤー
第2章 ドイツ人モーツァルト
第3章 モーツァルトとフリーメイソン―ナチスに不都合な問題
第4章 モーツァルトをアーリア化する
第5章 モーツァルト・ディアスポラ
第6章 「真に人道主義的な音楽」―亡命者たちのモーツァルト
第7章 モーツァルト上演とプロパガンダ―オーストリア併合から大戦終結まで
第8章 ドイツ帝国主義に利用されるモーツァルト
第9章 エピローグ―ナチスの遺産
付録1 一九四一年十一月二十八日、帝国指導者バルドゥール・フォン・シーラッハによる第三帝国ウィーン・モーツァルト週間開幕コンサートでの歓迎演説
付録2 一九四一年十二月四日、ウィーン国立歌劇場における、帝国大臣ヨーゼフ・ゲッベルス博士によるヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト没後百五十年記念演説

おすすめコメント

ナショナリズムと一見無縁なモーツァルトのイメージや作品を、ナチスはいかに政治的に利用したか。膨大な史料から検証する。    「ドイツ民族の偉人」モーツァルトの時代  ナチスが芸術を、民意を誘導するための有力な手段としたことはよく知られている。音楽においては、ワーグナーの高揚と陶酔に満ちた音楽を利用した。オペラの素材となっている神話・伝説のゲルマン的要素を強調し、アーリア民族の優越性の表現と位置づけることで、自らの文化的支柱としたのだった。  あまり知られてこなかったが、実はナチスはモーツァルトをも大いに利用していた、というのが、本書が明らかにする意外な事実である。およそナショナリズムとは無縁な印象のモーツァルトを、「力に満ちた若きドイツ人の象徴」、また「ボルシェヴィキから守るべきドイツ文化の絆」と謳い上げたのだった。ただし、モーツァルトにはナチスのイデオロギー上、やっかいな点が三つあった。ドイツではなくオーストリア出身で、フリーメイソンの会員、しかも重要なオペラでユダヤ人台本家と協働していることである。オーストリア併合によって彼をドイツ人としたナチスは、数多い音楽学者を動員してあの手この手で不都合な事実を糊塗し、国内外へのプロパガンダに、また占領政策に用いるべく、資金も労力も惜しみなくつぎ込んでいく。  芸術の歪曲の実態を、膨大な資料から検証する一冊。

著者紹介

リーヴィー,エリック (リーヴィー,エリック)   Levi,Erik
ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校音楽学科准教授。ケンブリッジ大学、ヨーク大学、ベルリン音楽大学(現在のベルリン芸術大学)で音楽を学ぶ。専門は20世紀ドイツ音楽。また、オールドバラ音楽祭やBBCの録音で伴奏者を務めるかたわら、『BBCミュージック・マガジン』でCDレビューも担当している
高橋 宣也 (タカハシ ノブヤ)  
慶應義塾大学文学部准教授(近代イギリス文学)。慶應義塾大学大学院博士課程修了。1999〜2001年ロンドン大学訪問研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)