産業革命による構造変動が進むイギリスで、伝統的商業都市ヨークは市場化と貧困化にどう対応したのか。国内外の近代化競争に伴う生産・物流の増加や人口集中によって、急激な都市再編を迫られた中世以来の繁栄を謳歌する市場都市ヨーク。商業都市として発展してゆく、その一方で貧困・スラム地域として蓄積されたエリアもあった。本書は、こうした貧困・スラム地域―ハンゲイトとウォルムゲイト―が改善されていく過程を近年に新規公開された膨大で貴重な史資料を基に、比較・分析することで、市場都市ヨーク全体の近現代にわたる変容プロセスを辿る。多数の図版や写真によって周辺を取り巻く物理的空間の変化も分かりやすく工夫された、都市・歴史・社会が織りなしてきたダイナミズムの全貌！

序章　市場都市ヨークの分析視角
１部　近代都市への移行（中世・近世都市と自治組織：１５世紀〜１８世紀
近代都市への移行：１９世紀前半）
２部　都市空間の近代化：１９世紀（近代公衆衛生体制の構築
衛生対策と河川
河川交通と物流基盤の近代化
近代の産業資本と河川交通）
３部　都市の社会構造と貧困地域：１９世紀末〜２０世紀前半（ロウントリー家と貧困調査
近代ハンゲイトと不動産所有層
ハンゲイトの衛生局調査と貧困層
キャトルマーケット：近代都市化と市場の変容
近代ウォルムゲイトと貧困層
貧困調査から地域改善への道程）
４部　現代都市への移行：戦間期（第一次大戦と住宅問題
ウォルムゲイトの貧困地区改善
都市と２０世紀の空間再編）
終章　現代のヨーク：２１世紀のイギリス都市