書店レビュー
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- 平山書店 (秋田県大仙市)
本作は彼女のデビュー作を含む単行本1作目となる作品である。柴崎友香さんの作品を過去に辿る試みも一応の区切りを迎えた。われわれは、視覚、聴覚、触覚など、外界から刺激を受けるとそれが心に影響を与え、作用する。彼女の作品ではその経過が現実以上の目まぐるさで、じつに細かく描かれている。普通われわれは常に外界からなんらかの刺激を受けているから、その変化を意識することはない。無意識を言語化するといった意味において、柴崎さんは特異な書き手であるといえるだろう。しかし、その特異さもふだんわれわれが認識することのない世界のことだけに、気付く人が少ないことも事実である。彼女の最近の作品を例にとってみれば、街の描写にそれがよく表れているだろう。視覚=街の風景、聴覚=雑踏のざわめき、触覚=肌で感じる空気、これらの知覚がもたらす精神作用が、現実に実在するその街を歩いている時以上の感じ方をもって描かれている。彼女の作品を読み、眠っていた夢の記憶を呼び出されたかのごとく、奇妙な現実感を体験された方も多いのではないだろうか。なかなか受賞には恵まれない著者であるが、これからの活躍を見守っていきたい。(のり)
(2007年12月31日)
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商品内容
要旨 |
ある晩、友人の引っ越し祝いに集まった数人の男女。彼らがその日経験した小さな出会い、せつない思い。5つの視点で描かれた小さな惑星の小さな物語。書下ろし「きょうのできごとの、つづきのできごと」収録。 |
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