商品内容
文学賞情報 |
2003年
第30回
大佛次郎賞受賞 |
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要旨 |
「遠隔力」の概念が、近代物理学の扉を開いた。古代ギリシャからニュートンとクーロンにいたる科学史空白の一千年余を解き明かす。 |
目次 |
第1章 磁気学の始まり―古代ギリシャ |
出版社 商品紹介 |
近代物理学成立の鍵=万有引力概念の誕生を平明に生き生きと描き近代科学の成立根拠までを問い直す書き下ろし。全3巻。(2)予2800円(3)予3000円 |
おすすめコメント
第30回大仏次郎賞受賞!西洋近代科学技術誕生の謎に、真っ向からとりくんだ渾身の書き下ろし全3巻。
内容抜粋
本書「序文」より
◆本書は近代科学の成立の謎を探るという問題意識のもとに、古代以来、近代初頭にいたるまでのヨーロッパにおける力概念の発展、なかんづく磁力と重力の発見過程を歴史的に追跡したものである。とくにその過程で魔術と技術がどのような役割をはたしたのかに焦点をあてて論じる。もちろん、電気や磁気の歴史についての書物がこれまでなかったわけではない。しかしこれまでの多くの自然科学史を見ると、近代科学の諸概念の萌芽をギリシャ哲学に求めながら、実際にはその後一挙に千年以上も飛んで、ルネサンスから近代初頭にかけてアリストテレス哲学との格闘をとおして、近代の科学が誕生していったという筋書きになっている。このあたりの欠陥は、力学史ではデューエム以来かなり改善されてきてはいるが、電磁気学史ではまだまだの状態にある。その典型がホイッテーカーの『エーテルと電気の歴史』で、それはアリストテレス哲学が13世紀にトマス・アクィナスの影響により西ヨーロッパに広まり、14世紀のオッカムによるトマス派哲学からの解放の努力をとおしてルネサンスの開花とコペルニクスとケプラーの登場が準備された、という書き出しで始まっている。この傾向は物理学史にかぎられない。ホールの『生命と物質』は古代ギリシャから現代にいたるまでの生命論の系譜をたんねんに追跡した生物学史・医学史の研究書であるが、しかしその記述は紀元2世紀のガレノスの次にルネサンスが論じられ、その間の千年余は完全に空白になっている。