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江戸の少食思想に学ぶ 水野南北『修身録』解題

小学館新書 449

出版社名 小学館
出版年月 2024年2月
ISBNコード 978-4-09-825449-1
4-09-825449-2
税込価格 1,056円
頁数・縦 222P 18cm

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要旨

多様な食品が容易に手に入る「飽食」の現代、肥満や生活習慣病といった健康リスクの低減、美容、また資源消費量低減の観点などから「少食」や「節制」を勧める書は多くある。「一食抜き」「炭水化物抜き」など、新たな食事法も次々と考案される。こうした少食の思想は、古くは江戸時代からあったようだ。
本書は、江戸後期に少食思想を説く『修身録』を著した水野南北について、その生涯をたどり、著作の内容を解説している。南北は、人の容貌や骨格などをみてその人の性質や運命を判断する「観相家」として名を馳せたが、観相を追究した末に、少食の思想に行きついたという。生まれ持った相の良し悪しよりも、食を慎んでいるかどうかによって、貧富や寿命などの吉凶が変わるとし、食の慎みは立身出世、開運にまでつながると説いた。その思想は、200年を経てなお現代にも通じることが多く、幅広い分野に応用でき、学ぶべき点が多いようだ。
著者は1960年、京都市生まれ。主に慶長(1596~1615年)以降の上方文化について考証や執筆を行い、水野南北『修身録』とその思想について四半世紀以上研究している。
※要旨の情報〔社会情勢、著者経歴など〕は、作成日当時のものです。
以降内容が変わっている場合があります。[要旨作成日:2024年3月26日]

商品内容

要旨

減量のための食事制限でもなく断食療法でもない。「人は天から一生の食を与えられている。これを余計に食べるということは、天に借りを生ずるということだ」「持ち分の食よりも少食で済ませる者は相応の福分を得る」―そんな独自の「少食」思想を説いたのが、江戸随一の観相家・水野南北だった。『養生訓』と並ぶ食と命の指南書『修身録』で説かれるその思想は過食・飽食の現代にこそ示唆に富む。「節食」は「開運」に通ず―その極意を読み解く。

目次

序章 知られざる異才・水野南北(幼名は熊太郎
受け太刀の跡
名人観相師水野南北 ほか)
第1章 南北先生「少食を究める」(いのちと食―人は生まれながらに持ち分の食あるべし
家業と食禄―おのれの食を子孫に遺すべし
武家働人の食―大食もまた許される者あるべし ほか)
第2章 開運の問答「万物の徳を知る」(一粒万倍の思想―ただおのれ一身を慎むべし
富は貧より出づる―貧なくして富なかるべし
薬と獣肉―野菜大食に凶なかるべし ほか)

出版社・メーカーコメント

減量や断食ではない「開運」のための少食論  高橋源一郎氏推薦「水野南北のメッセージは世界を滅びから救う」減量のための食事制限でもなく断食健康法でもない。過食・大食をせず、自分の身の程に合った食事の量「腹八分」を守れば、めぐりめぐって「吉」となる−−。江戸時代、そんな“少食・粗食のすすめ”を説いた人物がいる。水野南北−−文化文政期に高い人気を誇った観相家だ。その著書『修身録』は、貝原益軒の『養生訓』と並ぶ“食と命の指南書”であり、同書で繰り返し説かれる「食の慎み」と「立身出世」ための少食思想は、過食・飽食の現代にこそ示唆に富む。「人は天から一生の食を与えられている。これを余計に食べるということは、天に借りを生ずるということだ」「たとえ天運の人相が悪くとも、当人がその持ち分の食よりも少食で済ませる者は相応の福分を得る」「本来の天運が良くとも、食を過ごす者であらば、物事に際して障りが出るものだ」「食あれば命あり。ゆえに少食の者は長寿なのである」「少しの酒は気の力を増すものだ。血もめぐらせる。しかし多ければいのちを削る」「立身出世があるかどうか見定めるにはもっとよい方法がある。まず食を減らせ。そしてそれを厳重に定めよ。これを守る者には立身出世があろう」 水野南北自身も、この「少食」を実践していたという。「わたしは……生涯にわたって米の飯は食わぬこととし、米の形が残るものならば餅も避け、麦の一合五勺をまったく一日の限りの量とし、大の好物の御酒さえ一日一合と定めた。しかしこれはまったく自分の為ではない。世の人の為に食を減じたのだ」「節食」は「開運」に通ず−−その極意を平易な言葉で解説した刮目の書。

著者紹介

若井 朝彦 (ワカイ トモヒコ)  
1960年、京都市生まれ。上京に住む。考証と執筆に関しては、慶長以降の上方文化を主とし、水野南北の『修身録』とその思想を研究すること四半世紀をこえる。書誌学・装幀造本については、壽岳文章博士に私淑し出版を実践、後に藪田夏秋からも博士の思考や方法の教えを受けた。俳号は散卜・立立。40年にわたり、宮原一男創始の新日本延命学を学び、これを普段の暮らしの中に活かしている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)