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コンスタンツェ・モーツァルト 「悪妻」伝説の虚実

講談社選書メチエ 644

出版社名 講談社
出版年月 2017年3月
ISBNコード 978-4-06-258647-4
4-06-258647-9
税込価格 2,035円
頁数・縦 318P 19cm

商品内容

要旨

彼女を語るとき、ひとはなぜか取り乱してしまう。まるでついに己のみすぼらしい夢を暴露されてしまったかのように。芸術を愛し理解するとは、いったいどういうことなのか?天才の妻とは、いかなる存在であればよかったのか?二百年にわたる「極端な評価」の数々を読み解き、虚心に真の姿を検証する試み。

目次

序章 琥珀のなかの「蝿」
第1章 モーツァルト家vs.ウェーバー家
第2章 コンスタンツェという女性
第3章 「理想のモーツァルト伝」のために
第4章 加速する「悪妻」イメージ
第5章 伝説は覆されたか?
第6章 日出ずる国のコンスタンツェ
終章 彼女を語るとき、ひとは…

おすすめコメント

音楽学者にして熱烈なモーツァルト崇拝者でもあったアルフレート・アインシュタイン(1880〜1952)はモーツァルトの妻・コンスタンツェを、はっきりと「琥珀のなかの蠅」呼ばわりしました。ご馳走と見ればすぐさまそれにたかりにくる醜く、汚らわしく、うっとうしい存在。そのような存在が、琥珀のようなモーツァルトと密接にかかわったからこそ、彼女は人びとの記憶に残るようになったのだというきわめて否定的な見解が、彼の言にはあらわれています。なぜこれほどまでに、コンスタンツェは否定的なまなざしで受けとめられてきたのか? この疑問を解くべく、本書ではまず、コンスタンツェの実家であるウェーバー家、および彼女の生涯を概観します。ただし、右の事柄についての資料はけっしてじゅうぶんとは言えず、まだ多くの点が謎に包まれていることは、先にお断りしておきましょう。またそのような状況に置かれている対象を前に、その人物の善し悪しに関して断定的な評価を下すつもりもありません。むしろアインシュタインの評伝を一例としてさまざまなバイアスがかけられた彼女の人生に関し、可能なかぎりその真実の足取りを再構成してみたいのです。そして──ここからがこの本の真の目的となるのですが──、彼女が数あるモーツァルト伝やモーツァルト関係のメディアにおいて、どのように描かれ、どのように評価されてきたのかを追ってゆきます。なぜアインシュタインは彼女を「蠅」と呼んだのか、なぜ彼女はヨーロッパからみれば遥か東の島国においてさえ「悪妻」というレッテルを貼られるようになったのか。コンスタンツェに関する受容史を探るのが、じつは本書最大の狙いにほかなりません。それにしても、人はコンスタンツェにいったいなにを見てきたのでしょう? またそのような視線のなかに、人はどのような想いをこめてきたのでしょう? 「悪妻」と呼ばれつづけてきたひとりの女性をめぐって、人間の抱える複雑な羨望と嫉妬、それぞれの置かれた時代相が解き明かされてゆくはずです。(序章を抜粋要約)

著者紹介

小宮 正安 (コミヤ マサヤス)  
1969年東京生まれ。東京大学大学院人文社会科学研究科博士課程満期単位取得。秋田大学を経て、横浜国立大学(大学院都市イノベーション学府・研究院都市地域社会専攻、2017年4月より都市科学部都市社会共生学科兼担)教授。専門はヨーロッパ文化史およびドイツ文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)