乳母車/最後の女 石坂洋次郎傑作短編選
講談社文芸文庫 いAA1
出版社名 | 講談社 |
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出版年月 | 2020年1月 |
ISBNコード |
978-4-06-518602-2
(4-06-518602-1) |
税込価格 | 2,090円 |
頁数・縦 | 276P 16cm |
商品内容
要旨 |
女子大生・ゆみ子が「不敵な決意」をもって実行した、「絶望的な性質」を有した行為とは?(『乳母車』)十月も末の山の温泉場で見かけた二人の老人の、なんとも不思議なようすのその訳は…(『最後の女』)。戦後を代表する流行作家の明朗健全な筆が無意識に追いつづけた女たちの姿は、現代にこそ光り輝く。石坂文学の本質を示す、表題作を含む名編九作を収録。 |
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出版社・メーカーコメント
戦後、一世を風靡した大流行作家・石坂洋次郎。小説『青い山脈』は映画化され、1949(昭和24)年に封切られると同時に大ヒットし、その主題歌とともにほとんど戦後民主主義の代名詞と見なされるにいたりました。以後、石坂原作の映画が封切られない年は、1960年代後半までありませんでした。それほどの流行作家だったのです。しかし、70年代に入るやいなや、その流行はあっという間に衰えてしまいました。かつて『青い山脈』を明朗健全であるがゆえに評価し、暗くなりがちな戦後に爽やかな風を送ったとして称賛した読者が、こんどはその明朗健全さに飽きてしまったのでしょうか? いずれにせよ、石坂は「忘れられた作家」のひとりとなりました。しかし、石坂には、明朗健全以上に重要な特徴があると編者の三浦雅士さんは言います。それは「女を主体として描く」という特徴です。主人公と言わずに主体と言うのは、女は主人公であるのみならず、必ず、主体的に男を選び主体的に行動する存在として描かれているからです。女は見られ選ばれる客体である以上に、自ら進んで男を選び、男に結婚を促し、自分自身の事業を展開する主体なのです。明朗健全な爽やかさはこの主体的な女性が結果的に醸し出すのであって、逆ではありません。この特徴に誰も気づかずにいたのは驚くべきこと、「明朗健全なるがゆえに売れっ子となり、またそれゆえに忘れられた作家」などというのがいかに浅薄な見方であったか、いまや思い知るべき時が来たと三浦さんは説きます。かくして選び出された「女性の主体的な生き方の最終的な姿を示してほとんど常識を覆す域に達している」短編9編。いまこそふたたび石坂作品の魅力を多くの読者に知ってほしいとの思いから選ばれた傑作です。