書店レビュー
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- 平山書店 (秋田県大仙市)
教養小説としてあまりにも有名な倉田百三の名作である。しかし、なぜ今になって『出家とその弟子』なのか。 2008年7月19日、愛知県岡崎市の東名高速道路で14歳の少年によるJRバスジャック事件。報道によれば、少年は男女交際のことで両親ともめており、犯行の動機として「家族をめちゃくちゃにしたかった」などと述べているという。 さて、話は本書に戻る。遊女のかえでと恋仲になった弟子の唯円は、師匠の親鸞を騙し、先輩に勤めを欠くようになる。そこで親鸞は次のように唯円を諭す。「恋人を愛するがゆえに他人を損なうようにならないことだ。恋の中にはこの我儘がある。これが最も恋を汚すのだ。」と。 発表後1世紀近く経つが、いまだにこの作品の輝きは失われていない。惜しむらくは、この少年に本作品と出会う機会を与えたかった。しかし、近年の読書離れは著しい。親から子へ、教師から生徒へと読書を薦める機会は失われつつある。少ない機会だけに、そこで良書を選びたい。小欄がいささかでもその本選びに貢献できれば、それに越したことはない。 (のり)
(2008年8月2日)
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商品内容
要旨 |
恋愛と性欲、それらと宗教との相克の問題についての親鸞とその息子善鸞、弟子の唯円の葛藤を軸に、親鸞の法語集『歎異抄』の教えを戯曲化した宗教文学の名作。本書には、青年がどうしても通らなければならない青春の一時期におけるあるゆる問題が、渾然としたまま率直に示されており、発表後一世紀近くを経た今日でも、その衝撃力は失われず、読む者に熱烈な感動を与え続けている。 |
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