書店レビュー
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- 平山書店 (秋田県大仙市)
この北海道を舞台とした長編大河小説の前半は、邦一のもとへ嫁いだ薫と邦一の弟広次の恋愛模様が描かれる。本作品全編を通じて最も強い印象を受けたのが第2章の部分で、薫が邦一との最初の子が産んでから、広次との不義の子を宿すまでの描写。諸々にふたりの行く末を予兆させる伏線が張りめぐらされており、たとへば薫と広次が結ばれる直前に訪れる函館山麓の教会である。これは、文庫本のカバー表紙絵になっているのだが、屋根の天辺に掛けられている十字架に注目していただきたい。下のほう斜めに横棒が描かれているのがおわかりいただけよう。これは通称「八端十字架」と呼ばれるもので、日本正教会で用いられる独特の十字架である。上げられている方は天国を、下げられている方は地獄を意味するものだ。これは、この恋の結末を暗示する著者からの隠されたメッセージとして読み取ることができよう。読者の皆様も、函館を訪れることがあったなら、この教会がどこなのか探してみるのもきっと楽しいであろう。高まる期待や不安とともに一気に読み終えた。たしかな手応えを感じさせられる一冊。(あき)
(2006年4月15日)
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商品内容
要旨 |
女は、冬の峠を越えて嫁いできた。華やかな函館から、昆布漁を営む南茅部へ。白雪のような美しさゆえ、周囲から孤立して生きてきた、薫。夫の邦一に身も心も包まれ、彼女は漁村に馴染んでゆく。だが、移ろう時の中で、荒ぶる夫とは対照的な義弟広次の、まっすぐな気持に惹かれてゆくのだった―。風雪に逆らうかのように、人びとは恋の炎にその身を焦がす。島清恋愛文学賞受賞作。 |
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