占星学上、29.5年に一度、人生に大きな試練を与える年を土星回帰（サターン・リターン）という。仕事にも恋人にも問題を抱えつつ、目をつぶっていた大門フウ。サターン・リターンを三ヶ月後に迎えた夏の日、フウは銭湯でバンザイクリフの生き残りという、魔法使いのような強烈な個性のおばあさんに出会ったことから、大きな試練が訪れるのだった……。この時代に生きる誰もが当てはまりそうな問題を軽やかに鋭く突いた意欲作。マルチに活躍する著者ならではの視点と言葉のセンスが魅力的。才能を余さず注ぎ込んだ一作となりました。（SY）