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袴田事件 神になるしかなかった男の58年

文春新書 1453

出版社名 文藝春秋
出版年月 2024年8月
ISBNコード 978-4-16-661453-0
4-16-661453-3
税込価格 1,210円
頁数・縦 286P 18cm

商品内容

要旨

事件発生から58年を経て、ついに再審判決の時を迎えた「袴田事件」。支え続けた姉・ひで子さんの献身、死刑判決を書いた元裁判官の告白と謝罪など、袴田巖さんが確定死刑囚のまま釈放された2014年以降の密着取材で浮かび上がる、「再審無罪」への長き闘いの物語。

目次

プロローグ 「神」になるしかなかった理由
第1章 ボクサーとしての前半生
第2章 事件
第3章 「五点の衣類」
第4章 一審死刑判決の真実
第5章 東京拘置所での日々
第6章 神になっていく袴田巖
第7章 死刑判決を書いた裁判官の告白
第8章 再審開始決定
第9章 姉・袴田ひで子
第10章 冤罪の原点
第11章 リングの中は、嘘がない世界
第12章 鑑定意見書が暴く調書の「偽装」
第13章 右足脛の傷はいつできたのか?
第14章 重大事件にみる再審制度の問題点
第15章 熊本典道元裁判官
第16章 刻み込まれた傷と「幸せの花」
第17章 再審開始決定取り消しの衝撃
第18章 証拠開示で明らかになる違法捜査
第19章 最高裁の差し戻しと再審開始確定
第20章 再審法廷
エピローグ 階段を登りきる日

出版社・メーカーコメント

1966年6月30日、静岡県清水市の味噌製造会社専務宅が全焼し、焼け跡から一家4人の刺殺体が見つかった「袴田事件」。警察は味噌工場従業員の元プロボクサー、袴田巌さん(当時30歳)を逮捕。68年一審で死刑判決、80年上告棄却で死刑が確定したが、袴田さんは公判以降一貫して無実を訴え、姉のひで子さんや支援者、弁護団は再審請求の長い戦いを続けてきた。81年からの第1次再審請求は棄却(08年最高裁)。14年3月に第2次再審請求審一審で「再審開始」が決定、袴田さんは48年ぶりに釈放された。しかし確定死刑囚として長期間にわたって常に死の恐怖を強いられた拘禁症状で、かつては明晰な文章で支援者への手紙を綴っていた袴田さんは、「袴田巌はもういない。私が全知全能の神、唯一絶対の神だ」「死刑制度も監獄も廃止された。袴田事件なんか最初から無いんだ」と語るようになり、釈放後も変わらない。しかも14年3月の釈放に対して検察は即時抗告し、18年6月には東京高裁が「再審開始決定」の取り消しを決定。20年12月に最高裁が高裁決定を取り消して差し戻し、ようやく23年3月に高裁が再審開始を決定。目下、10月末から静岡地裁でやり直し初公判が開かれている。事件から57年、獄中に47年、再審を決めるのに実に42年もの月日を費やした「袴田事件」。東京高裁の再審開始決定でも異例の捜査機関による証拠ねつ造の疑いにも言及されたにもかかわらず、未だに検察の無謬性と組織防衛的な訴訟指揮が行われている。袴田巌さん釈放時から清水市に移住、数年にわたって密着取材を続けた著者が、生い立ちから訴訟の時間的経過を軸に、終始無実を信じて長きにわたる戦いの核となってきた姉ひで子さんや、事件によって大きく人生が変わってしまった元裁判官らの物語、その他の再審請求事件とも共通する”冤罪の構造”といった論点を描く。

著者紹介

青柳 雄介 (アオヤギ ユウスケ)  
1962年東京都生まれ。雑誌記者を経てフリーのジャーナリスト。事件を中心に社会、福祉、司法などの分野を取材、『サンデー毎日』『AERA』ほかの週刊誌や『PRESIDENT Online』『日刊SPA!』などのwebメディアに寄稿。袴田事件は2006年から取材を始め、’14年に袴田巖さんが48年ぶりに釈放されたのち、翌’15年から2年ほどは浜松に居を移して密着取材。以降、月刊『世界』で「神を捨て、神になった男 確定死刑囚・袴田巖」を長期連載するなどライフワークとする。’22年、脳梗塞に倒れるもリハビリ後に復帰、その体験などを『サンデー毎日』で連載している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)