
海峡を渡るバイオリン
出版社名 | 河出書房新社 |
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出版年月 | 2002年9月 |
ISBNコード |
978-4-309-01494-4
(4-309-01494-1) |
税込価格 | 1,980円 |
頁数・縦 | 340P 20cm |
商品内容
要旨 |
世界でたったの5人だけ。ひたすらバイオリン製作に励んだ在日韓国人が、世界に冠たる“無監査マスターメーカー”になり故郷へ錦を飾る。哀惜のドキュメント。 |
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目次 |
故郷、梨川村 |
出版社 商品紹介 |
14歳の折日本へ渡り、偶然聴いたバイオリンの音色に魅せられ、バイオリン製作技術を身につけ、名匠といわれるようになった。哀惜に満ちたノンフィクション。 |
おすすめコメント
世界でたったの5人だけ。ひたすらバイオリン制作に励んだ在日韓国人が、世界に冠たる“無監査マスターメーカー”になり故郷へ錦を飾る哀惜のドキュメント
内容抜粋
本書「エピローグ」より
「芸に満足と諦念は禁物」――これが私の職人としての信条だ。私のルーツは韓国、慶北金泉の山深い村だ。今では東京でも、韓国の伝統芸能であるパンソリやサムルノリを楽しむことができる。多感な少年時代に祖国を離れ、人生の大半を日本で過ごしてきたとはいえ、そういうものに触れたときには、やはり胸中に湧き上がる想いは確かにある。そして同時に、流れ去った六〇年という歳月の重さを実感する。一方、少年時代にはまったく興味が持てなかった、歌舞伎や能といった日本の古典芸能に強く惹かれる自分もいる。私の体のなかに両国の文化が共存し、それが血となり肉となっている。私の体の中では日本と韓国の間には憎しみも差別もなく、仲良く手をつなぎ合って共存しているのだ。まるで、先日の日韓共同開催のワールドカップ・サッカーのように。韓国は私の産みの親であり、日本は育ての親なのだ。中国の詩人蘇軾の詩に「是処青山可埋骨」という句節がある。長らえて息絶えた処が私の青山だ。日本と韓国はどちらも小国であるがゆえに、ともに物作りの国家であり、そこに生きる私たち職人の使命は小さくない。この一冊の本が、両国の人々、そして職人たちの心の絆と誇りを喚起し、それが今後の両国のなお一層の相互理解に多少なりとも寄与できるのであれば、これに勝る喜びはない。また、たとえばどれほど叶いそうもない希望であろうとも、情熱を持って真摯に取り組み、根気強くがんばり続ければいつか必ず道は開けるのだということを、私からのメッセージとしてここに記しておきたい。