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複数のヨーロッパ 欧州統合史のフロンティア

出版社名 北海道大学出版会
出版年月 2011年6月
ISBNコード 978-4-8329-6749-6
4-8329-6749-5
税込価格 3,520円
頁数・縦 329,8P 21cm

商品内容

目次

第1部 ポスト「正史」のゆくえ(ヨーロッパ統合史のフロンティア―EUヒストリオグラフィーの構築に向けて)
第2部 ヨーロッパの「暗い遺産」(戦争のなかの統一「ヨーロッパ」、一九四〇‐一九四五年
黒いヨーロッパ―ドイツにおけるキリスト教保守派の「西洋」主義 ほか)
第3部 統合の複線的系譜学(もう一つの「正史」―農業統合の系譜とプールヴェール交渉、一九四八‐一九五四年
経営者のヨーロッパ統合―一九五〇年代前半における西ドイツの事例から ほか)
第4部 多極化する世界とヨーロッパの模索(「全欧」と「西欧」のあいだ―ブラントの東方政策におけるヨーロッパ統合問題
完成・深化・拡大―ヨーロッパ政治協力の進展と限界、一九六〇‐一九七二年)

出版社・メーカーコメント

 ヨーロッパ統合史は,いま最もスリリングな学問領域の一つである。公開された史料に基づく実証的研究が日進月歩の勢いで積み重ねられていく一方,それまでの歴史叙述を「脱神話化」していく作業も進められている。本書は、そうした実証的・先端的研究を担う若手の研究者を集め,ヨーロッパ統合史研究のあり方を根本的に問い直し,その地平をさらに広げることを企図するものである。 本書のタイトル『複数のヨーロッパ』は,単にヨーロッパ像の多様性を示すものではない。『複数のヨーロッパ』とは、従来の,しばしば単線的で閉鎖的であったヨーロッパ統合史研究をいったん解体し,時系列的・空間的・アプローチ的に開放された新しい統合史研究を打ち立てるために選び取られた,きわめて挑発的な視座である。本書は,時代的には戦間期から1970年代までの長い期間を扱い,空間的には域内/域外、国際/国内を往還しつつ,政治・社会・経済・文化など多様な次元において,無数のアクターとそれらが担う複数の「ヨーロッパ」像が相互作用しながら構築される過程として,ヨーロッパ統合の歴史を描き出す。このため本書には,国際政治,外交史,思想史,経済史,社会史など,多様な専門的バックグラウンドをもつ執筆者が戦略的に集められている。 本書の各部・各章は有機的に構成されている。第1部第1章は、既存のヨーロッパ統合史研究を批判的にレビューしつつ,統合史研究のフロンティアを設定している。それをふまえて第2部では,ヨーロッパが歴史的に抱えてきた「遺産」,すなわち戦争(第2章)や,キリスト教および保守主義(第3章),そして植民地(第4章)が,ヨーロッパ統合の歴史に影を落としていることを示す。そして第3部では,これまで見落とされがちだった経営者(第6章)や労組(第7章)のようなアクター,あるいは農業というセクター(第5章)を取り上げつつ,「正史」に回収されない複線的な統合の系譜を明らかにする。最後に第4部では,東方外交(第8章)やヨーロッパ政治協力(第9章)を題材に、最新の外交史料を駆使しながら,1960~70年代の多極化する世界のなかで模索された「ヨーロッパ」のかたちを浮き彫りにする。こうして,多国,多次元,多領域にまたがる豊かな歴史が立ちあらわれるだろう。

著者紹介

遠藤 乾 (エンドウ ケン)  
北海道大学法学部・公共政策大学院教授(国際政治、ヨーロッパ政治)。北海道大学法学部卒業、ベルギー・カトリック・ルーヴァン大学MA、オックスフォード大学政治学博士号。欧州共同体(EC)委員会「未来工房」専門研究員、ハーヴァード法科大学院エミール・ノエル研究員、欧州大学院大学フェルナン・ブローデル上級研究員、パリ政治学院客員教授などを経て現職
板橋 拓己 (イタバシ タクミ)  
成蹊大学法学部助教(ヨーロッパ政治史、近現代ドイツ政治史・思想史)。北海道大学法学部卒業、北海道大学大学院法学研究科博士後期課程修了、博士(法学)。北海道大学大学院法学研究科附属高等法政教育研究センター助教を経て、現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)