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検証日本の「失われた20年」 日本はなぜ停滞から抜け出せなかったのか

出版社名 東洋経済新報社
出版年月 2015年6月
ISBNコード 978-4-492-39617-9
4-492-39617-9
税込価格 3,080円
頁数・縦 477P 21cm

商品内容

目次

「失われた時代」をトータルに捉える
人口―失われた人口とそこからの回復策
金融・財政―「失われて」いた協調的な金融・財政政策
マクロ経済―不良債権処理の先送りと景気刺激策の20年
企業競争力―なぜ日本企業はデジタル革命で負けたのか
労働・雇用・格差―「失われた20年」を職場、学校、男女、富と貧困から考える
教育―「キャッチアップの完了」がすべてを間違わせた
原発政策―福島原発事故‐「安全神話」が安全対策を失わせた
政治改革―膨大な改革がなぜ成果を生まなかったか
安全保障―湾岸戦争が変えた日本の安全保障観
貿易―多くの機会を逸した日本の対外経済政策
中国・アジア太平洋―「大国・日本」から「アジアの一主要国・日本」は
日米同盟―冷戦後時代の安全保障計画の変化
歴史認識―なぜ中韓との和解ができないのか
国連外交―安保理常任理事国入り失敗で失ったもの
理念・価値観―グローバルな部隊で役割を模索する日本
未来の何を「失った」のか

おすすめコメント

日本の「失われた時代」の原因として、次の5つが指摘できる。その第一は、「最優先課題」と「損切り」の先送りである。これは、バブル崩壊後、金融機関が背負い込んだ不良債権の処理をめぐって典型的に表れた。第二は、部分最適と全体最適のトレード・オフを克服し、全体の利益を追求する国家戦略を打ち出せなかったことだ。政府が重要な決定を下すにあたって、全体最適解を下そうとする際、それに抵抗する政治力の強い組織的ストレスを克服できず、その組織の部分最適解を優越させてしまう。このことは、国家課題に関する明確な政策優先順位を設定し、それを容赦なくかつ効果的に追求し、実現する意思と能力の不在とリーダシップの不在を示している。第三は、既得権益層の岩盤構造である。これは、既得権益層がインサイダー集団を形成し、そこで手にするレント(過剰利潤)を守るために改革に抵抗する政治的に強固な構造のことである。第四は、政府も企業も「成功体験の虜」になったことだ。グローバル化とIT化と新興国の台頭と挑戦という新たな環境の下でも、日本企業の多くは高度成長期のビジネス慣行を維持し、それにしがみついていた。最後の第五は、官民問わずに危機意識が不十分だったことだ。日本の危機感の乏しさは、この間に深まった日本人の悲観主義の高まりと著しい対比を成している。そうした危機感なき悲観論の傾向は二一世紀初頭にはすでに明瞭に表れていた。これら五つの原因のうち、部分最適解と全体最適解のギャップにこそ、日本の「失われた時代」の本質がある。日本の「失われた時代」の行方は、世界に大きな意味を持つだろう。その行方は、アベノミクスの成否という次元にとどまらない。それは、日本の歴史的な役割と世界、なかでもアジア太平洋の地政学におけるプレゼンスと安定といった世界史的な意味合いを帯びることになるだろう。

出版社・メーカーコメント

「失われた20年」の徹底検証を通じて日本再生の道を探る。財政金融、人口動態、企業競争力、政治、原発、教育などの専門家が結集

著者紹介

船橋 洋一 (フナバシ ヨウイチ)  
一般財団法人日本再建イニシアティブ理事長。元朝日新聞社主筆。1944年北京生まれ。東京大学教養学部卒。1968年、朝日新聞社入社。朝日新聞社北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長等を経て、2007年から2010年12月まで朝日新聞社主筆。2011年9月に独立系シンクタンク「日本再建イニシアティブ」設立、理事長。福島第一原発事故を独自に検証する「福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)」を作る。『カウントダウン・メルトダウン』(2013年、文藝春秋)で大宅壮一ノンフィクション賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)