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平山書店のレビュー

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掲載レビュー全609件
 
渥美清 浅草・話芸・寅さん
堀切直人/著
晶文社
税込価格  2,090円
 
通常1〜2日で出荷
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おすすめ度:
松竹映画、寅さんシリーズは48作を数える国民的映画である。寅さんの魅力の一番はストーリーもさることながら、立て板に水の如くの口上の上手さにあるのではないか。その話芸はどこで生まれ、どこで鍛えられたか。小学生のとき患った関節炎で病床に臥していたとき、聞いたラジオから流れる徳川夢声の「宮本武蔵」語りだったと述懐している。母親に聞かせ、それをまた母親はそれを丁寧に聞いてくれたという。勉強は出来なかったが、話術で教室では大変な人気で先生も一目置く存在になっていった。フランス座で一層鍛えられてゆく。今は懐かしい、関敬六、谷幹一と舞台の上での食うか食われるかの真剣勝負。観客の笑いが寄せては返す波のようにざわめいたという。それからNHKテレビ「夢であいましょう」にステップアップして、寅さんへと開花してゆく。昭和の時代を渥美清を通しても読みとれる好著である。 (2007年12月28日)
QUIZで鍛えるビジネス算数脳
Kobunsha Paperbacks Business 012
藤井耕一郎/著
光文社
税込価格  1,047円
 
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著者の藤井耕一郎氏は、社会常識化された情報の裏に隠された真実を独自の分析で浮き彫りにするジャーナリストである。「年俸制と月給制はどちらが得か」というサラリーマンには必須の問題で読者を引き込み、非常に詳細な解題で関連するビジネス情報を提供する。インターネットで簡単に情報が手に入る現代にあって、巷に氾濫する情報に惑わされず、それぞれの意味を引き出すためのトレーニング用教材として、これほど格好の書はないだろう。(のり) (2007年12月28日)
また会う日まで
柴崎友香/著
河出書房新社
税込価格  1,320円
 
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著者の柴崎友香さんは、1973年大阪府生まれの大阪育ち。4年間のOL生活ののち、1999年に短編『レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー』でデビュー。以降順調に著作を発表し、今回のは、第20回三島由紀夫賞候補作となった作品である。関西弁のせりふ、ゆるりとした日常の描写が持ち味の著者であるが、本作でもそのテイストが存分に生かされている。何気なく通り過ぎる風景の瞬間をとらえて表現するその優れた感性には思わずはっとさせられ、幾たびも味わうように読み返すときの余韻がたまらない。結局、純文学の世界では、感性がすべてといっても過言ではないが、著者の柴崎さんははその資質を十分に備えている作家であると強く感じた1冊。(のり) (2007年12月24日)
秋の金魚
小学館文庫
河治和香/著
小学館
税込価格  628円
 
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新進時代小説作家、河治和香(かわじ わか)さんのデビュー作をご紹介する。舞台はは幕末から明治にかけての江戸。二人の海軍青年士官のあいだで生きた女性の半生を描く。男たちは船乗りゆえ、長く帰らないことが多い。この作品の良さは、帰りを待つ女ごころのいとしさを見事に描ききったことだろう。女性が男たちの碇となった時代を素直に表現してみせてくれた。日々の営みをいとおしむように生活する女性の丁寧な描写は、まさに著者の矜持を感じさせる。航海に出ては女性のもとへ帰る生活のなかで、一人は破綻し、もう一人は晩年死の間際まで添い遂げたこの明暗が好対照。また、的確な時代考証が本作に重みを与えている。表紙の挿絵は、著者が師事した画家の三谷一馬氏の手になるもので、受賞のお祝いにと御年90歳で絵筆をとったという。現在『国芳一門絵草紙』シリーズを展開中の河冶さんだが、そちらのほうもぜひ手にとってみていただきたい。(のり) (2007年12月23日)
あだ惚れ
小学館文庫 か4−3 国芳一門浮世絵草紙 2
河治和香/著
小学館
税込価格  586円
 
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時代小説界に吹いた爽やかな新風、注目の新進作家、河治和香(かわじ わか)さんの小学館文庫書き下ろしシリーズ第二弾登場である。江戸時代の浮世絵師は、現代の芸術家と違い、プライドは高くとも実入りは非常に少なかったらしい。不安定な立場だからこそ矜持や誇りをもたないとやっていけない。この精神の発露としての反骨心や侠気(おとこぎ)が、主人公の江戸っ子浮世絵師歌川国芳のたまらない魅力となっている。今回で大きな働きをするのが遠山の金さん。高野長英の脱獄にまつわる一件で、この金さんがみせた侠気が国芳たちの心を揺さぶる場面はこの巻のハイライト。お奉行と貧乏浮世絵師、置かれている状況は違うが矜持を同じくする者同士が交わした人情の機微。時代小説読みの読書ごころをくすぐる仕掛けが満載の本書、第一弾を上回る面白さをぜひ堪能してもらいたい。(のり) (2007年12月23日)
侠風むすめ
小学館文庫 か4−2 国芳一門浮世絵草紙
河治和香/著
小学館
税込価格  586円
 
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柴又生まれの江戸っ子作家、河冶和香さんの書き下ろしシリーズ第1作である。今回のは江戸末期を代表する浮世絵師の一人、歌川国芳一門の活躍を娘登鯉(とり)の眼から描いた作品である。登鯉は入墨が好きで吉原や博打場にも平気で出入りする”侠風(きゃんふう)むすめ”。この早熟な娘を通じ、当時の江戸の風俗がとても生き生きと描かれており、その映像が目に浮かんでくるようである。遠山の金さんも脇役の一人に名を連ね、物語に華を添えているあたり、時代小説ファンにとってはたまらない展開である。まだ書き尽くしていないところがあちこちに見られ、今後のシリーズ作品で明らかにされていくのが楽しみでならない1冊。(のり) (2007年12月17日)
さよならを告げた夜
マイクル・コリータ/著 越前敏弥/訳
早川書房
税込価格  2,200円
 
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アメリカ私立探偵作家クラブ新人コンテスト第一席受賞作。 著者のマイクル・コリータ氏はインディアナ州出身、弱冠21歳のデビュー作でこの賞を射止めた注目の作家である。物語は、調査が進むにつれて次々と事実が明らかになってゆくというオーソドックスな手法で語られる。伝法な口調の主人公リンカーンの危なっかしい魅力と相棒ジョーの的確なサポート、そしてリンカーンとお互い憎からず思っている記者のエイミー、この3人の人物造形が実にバランスマッチしていて素晴らしい。このシリーズ、第2作目は本国で刊行されており、邦訳が待たれる。(のり) (2007年12月17日)
空白の叫び 下
貫井徳郎/著
小学館
税込価格  1,870円
 
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この下巻、第3部では少年院での生活を終え社会に戻った3人の少年達の様子が描かれる。人間性を回復し社会復帰を果たそうとする彼らの行動は、何者かに見張られてことごとく邪魔をされる。上巻の悪漢小説風なトーンとは異なり、下巻はミステリー仕立ての筋立てとなっている。次第に行き場を無くして行く少年たちは、ある計画を成功させるが、無残な結末が待っていた・・・。救われない小説である。少年達の目線から描いたものであるだけに、犯罪を犯した少年達に対する社会の現実が、より重くつらく感じられる。読後非常に疲れを感じた。(のり) (2007年12月17日)
空白の叫び 上
貫井徳郎/著
小学館
税込価格  1,870円
 
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おすすめ度:
少年犯罪を少年の視点から描いた貫井徳郎氏の大作。この巻は第二部までが収められている。第一部では3人の14歳の少年が殺人者となるまでの経過を克明に綴る。読んでいると、少年たちの塞いだ心に渦巻く様々な思いに影響され、こちらの心も鬱になりそうである。元々言葉に力のある著者だけに、より一層胸に重くのしかかる。それでもページをめくる手が止まらないのは、どこか感情移入できる部分があるからではないかと思う。犯罪者の側に転落する要素は、この話に共感した人の内部にも存在していることに気付き、背筋が寒くなる怖さを感じたものである。これだけでも十分読み応えがあるが、もちろんこれだけでは小説は成り立たない。この後3人の少年が少年院から社会に戻り、どのような経過をたどるのか、少年事件という微妙なテーマだけに先の見えない期待感がつきまとう不思議な作品である。(のり) (2007年12月17日)
牡丹酒
深川黄表紙掛取り帖 2
山本一力/著
講談社
税込価格  1,760円
 
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さて、人気のシリーズ第2弾。今回のは”食と人情”がテーマである。舞台は南国土佐、銘酒「司牡丹」の江戸売り込みをめぐり、蔵秀と雅乃、宗佑と土佐の旅籠「大正屋」母子との恋模様・人情模様が描かれる。酒のつまみとして欠かせないのが、「酒盗」。鰹のわたの塩辛である。その名の由来として、「酒の肴でありながら、酒をわきに追いやりかねない美味さだ。それゆえ酒を盗む。酒盗だ。」と作中の柳沢吉保に語らせている。読書子もほぼ毎日飲みに出かけるほど酒好きであるが、この酒盗は欠かせない。ウズラの卵を落としてかき混ぜると、塩辛さにまろやかさが加わり、酒好きにはたまらないつまみとなる。また、宗佑の徹夜仕事の際、「大正屋」母子が夜食に差し出した、おにぎりと刻みねぎを散らした玉子焼きは、その美味そうなこと!これら食の描写にどことなく池波さんを感じるのである。(のり) (2007年12月11日)
図書館内乱
有川浩/著 徒花スクモ/イラスト
メディアワークス
税込価格  1,760円
 
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読者からの絶大な支持を受けた前著『図書館戦争』シリーズ第2弾。今回のも期待にたがわず笑わせてくれる。このシリーズにおける著者、有川浩氏の魅せてくれる持ち味は、会話のノリの良さとツボに嵌る笑いのセンス。キャラの特徴を存分に強調した躍動感あふれる会話の流れ、そして印象的なセリフの数々は、まさに人気マンガのJOJOシリーズの域にまで昇華している。これはもうひとつの稀有な才能であろう。本書はきっとマンガ世代の読者にも入りやすい作品と思う。前作から続けて読めばハマること間違いなしの1冊である。本書が気に入ったら、著者の恋愛小説も読んでみられるとよいだろう。違うジャンルの作品で共通する作風を見い出す楽しみも味わえることを保証する。最後に、徒花スクモ氏の表紙イラストは読後の楽しみとして最高。本書の内容を二度楽しめる。本文をよく読み込んでいることが感じられ、まさにGJ(Good Job)である。(のり) (2007年12月11日)
深川黄表紙掛取り帖
講談社文庫
山本一力/〔著〕
講談社
税込価格  692円
 
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人気時代小説作家、山本一力氏の新シリーズ登場。舞台は五代将軍綱吉の元禄、武士から町人へと文化の花開き、江戸の町もその抱える人口を増して来た時代。急速に拡大する江戸の町で、よろずもめごと解決を請け負うのが、定斎(夏負けに効く強壮剤)売りの蔵秀をリーダーとする四人衆。これら四人の特徴は、腕力ではなく、頭を働かせた知恵でもめごとを解決するところ。まさに武士から町人への移行期、成熟していない町人社会の隙をつき、ずるいことして一儲けを企む悪い成金商人をとっちめるのが本書のストーリー。元禄時代は綱吉の悪政で町人が迷惑したという印象があったが、この作品には少しもそれが感じられない。むしろ、生き生きと江戸の町で活躍する町人たちのたくましさが目に付く。締め付けが厳しいほど抜け道が多様化する、そこにドラマを見出した著者会心の1冊(のり) (2007年12月11日)
闇の底
薬丸岳/著
講談社
税込価格  1,650円
 
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著者の薬丸岳氏は1969年東京都生まれ。2005年、少年法を扱った『天使のナイフ』で、ミステリー作家の登竜門とされる第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビューした。この作品は、各誌ミステリーランキングの上位に入賞し著者は一躍話題の作家となった。本作が江戸川乱歩賞受賞後第1作となる。前作と同じ、犯罪被害者の遺族を主人公に仕立てた筋立てだが、相変わらず遺族の内面描写は真に迫るものがある。今回は児童殺害事件がテーマであるが、何年たっても加害者を許せない心理は主人公の日常生活に纏わりつき苦しめる。特徴的なのは加害者の側に影を落とす事件の影響を描いたことにある。犯罪加害者の究極の贖罪とはどのような形で表わすべきか、難しいテーマに挑んだ作品である。ただし、読書子はこの加害者の気持ちに共感はできなかった。それは、犯罪加害者、特に児童関連の者は再犯を繰り返すという常識論に慣らされているせいかもしれない。あえて常識の裏を行ったこの作品。著者の意欲的な試みとして、次作につながる期待を込めこれからの活躍を期待したい。(のり) (2007年12月11日)
天国はまだ遠く
新潮文庫 せ−12−1
瀬尾まいこ/著
新潮社
税込価格  572円
 
通常1〜2日で出荷
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本書は2004年に刊行された同名作品の文庫化である。本作は著者の瀬尾さんにとって作家デビュー3冊目にあたり、この後に発表された『幸福な食卓』で吉川英治新人文学賞を受賞したのはまだ記憶に新しい。現役中学校教師の彼女が、数年前丹後の小さな学校へ赴任し、その地で生活したことが本作執筆のきっかけとなったという。この作品の舞台は海と山に囲まれた田舎であるが、車で少し走れば、街があり、そこでは都会と変わらない物を手に入れることができる。それでも、田舎に居続ける人々にはその場所に居る意味があることに主人公の千鶴は気付く。そして自分にはそれがないことも。自殺するために訪れた場所が転機となり、千鶴は自らの居場所を求めて一歩を踏み出してゆく。著者の瀬尾さんの感性が素直に反映された佳作。田舎の生活描写も的確で、小品ながらよくまとまった1冊である。(のり) (2007年12月05日)
空飛ぶタイヤ
池井戸潤/著
実業之日本社
税込価格  2,090円
 
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経済小説とミステリーを絡ませた作風で知られる池井戸潤氏の作品。今回のは町の運送会社社長が、巨大グループの一員である自動車メーカー相手に、敢然と立ち向かうストーリー。横浜市で起きたトラックの走行中のタイヤ脱落により、母子3人が死傷した事故など、世間を騒がせたある自動車メーカーの一連の不具合車両に対するリコール隠しが土台となっているのは想像に難くない。なお、付け加えると、本作は2007年上半期直木賞候補作となったものの、受賞は逃がした。奇しくも本作出版と選考会の間に元会長らに対して無罪判決が下され、この判決が選考に影響したとの憶測も飛んだいわくつきの1冊。(のり) (2007年12月05日)
浮世でランチ
山崎ナオコーラ/著
河出書房新社
税込価格  1,430円
 
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2004年文藝賞受賞時、選考委員に絶賛を受けた『人のセックスを笑うな』の著者、山崎ナオコーラさんの受賞後第1作である。主人公は25歳のOL。ランチはいつもひとり公園のベンチ。同僚との意味の無いおしゃべりにつまらなさを感じ、いつのまにかそうしている。勤めていた会社を退職し、幼馴染のいるミャンマーへひとり旅立ったその宿で働く日本語を話すミャンマー人と出会う。なんと驚くべきことに、彼は子供のとき仲違いをし、ついに気まずいまま仲直りが出来なかった同級生の夫であった。別れ際、彼女が渡した手紙には長年のわだかまりを吹き飛ばす感動の言葉が書き記してあった。目的を離れた人とのかかわりの中に奇跡が起きる。そのような人生の妙味を味わわせてくれる1冊。素晴らしい傑作、自信を持ってお勧めしたい。(のり) (2007年12月02日)
人のセックスを笑うな
河出文庫 や17−1
山崎ナオコーラ/著
河出書房新社
税込価格  660円
 
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著者の山崎ナオコーラさんは、1978年福岡生まれ、埼玉育ちで、現在東京に在住している。本作は2004年第41回文藝賞受賞作であり、また翌年第132回芥川賞の候補作にもなった作品である。文藝賞選考委員の田中康夫氏が、選評で「想わず嫉妬したくなる程の才能」と絶賛した著者の、文章からほとばしる感性をぜひ味わってみて欲しい。(のり) (2007年12月02日)
夜のジンファンデル
篠田節子/著
集英社
税込価格  1,650円
 
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著者の篠田節子さんは1955年東京都八王子市生まれ。市役所勤務を経て、作家活動へ。1997年『ゴサインタン』で第10回山本周五郎賞を、『女たちのジハード』で第117回直木賞をダブル受賞したのはまだ記憶に新しい。とりわけ、直木賞受賞作はこの著作の後次々見かけるようになる、ビジネス社会で活躍する女性を描いた作品群の嚆矢となり、この作品をきっかけに彼女のファンになったという人は多い。さて、今回の作品は日常に潜む奇妙な出来事を綴ったちょっぴり怖い物語。どの話にもドッキリする仕掛けが施してあって、相変わらずの物語巧者ぶりはさすがの一言。読ませる1冊である。(ノリ) (2007年11月29日)
不当買収
江上剛/著
講談社
税込価格  1,980円
 
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経済小説の書き手としてすっかり世に定着した江上剛氏の作品である。今回の作品は、二部上場の中小企業をめぐり買収と防衛の闘いが繰り広げられる。親友と恋人の両方と敵対することになってしまった主人公の活躍がシチュエーション的に興味を引く。ところで、本書には実在の人物がモデルと推測されるような人物が登場する。テレビ局の買収を試みるIT企業の若き社長、どんぐりまなこのファンドマネージャー。さすがの江上氏も株主主義という不穏な時代の流れには勝てなかったのかと思いきや、ラストはやはり魅せてくれた。会社という組織の原点を、コツコツとものづくりをする姿に投影し、日本的な調和の社会への希望を示している。著者の経済社会に対するスタンスが窺われ、興味深く読ませていただいた1冊である。(のり) (2007年11月29日)
シティ・オブ・タイニー・ライツ
パトリック・ニート/著 東野さやか/訳
早川書房
税込価格  2,310円
 
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著者のパトリック・ニート氏はイギリスの小説家。2000年に作家デビューを果たし、以降着実に著作を重ね、そのいずれもが高い評価を得ている。年齢は30代半ばのようであるが、詳しいことはわからない。さて、本作はイギリスのロンドンを舞台とした探偵小説である。登場人物はすべて移民であるのが特徴で、作中には彼らの出自についての記述が多く見られる。そのため、推理小説というよりも、むしろ移民たちの受ける偏見やアイデンティティにまつわる人間模様を描いた社会派小説といったほうが良いかもしれない。コメント欄で紹介されているように、本書の発売1週間後にロンドンで大規模テロが発生し、あたかも事件を予言したかのような出来事に話題となった作品でもある。著者はこの事件に関し、いたずらに愛国心を煽るような論調に懸念を示しており、本書のカラーから窺い知れるように移民たちに理解を示している部分が少なからずあるようである。ロンドンがこれほどまでに移民社会であったことは新しい発見で、新鮮な驚きを覚えたとともに、読書による異文化へのアプローチを心ゆくまで堪能した(のり) (2007年11月29日)

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