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神奈川大学生協書籍部のレビュー |
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掲載レビュー全60件 |
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2年目から卒業まで使える独和辞典の決定版 | ||
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拙レビューで紹介した『エクセル独和辞典』がとりあえずドイツ語を履修し、 あるいは触ってみたという初学者向けの辞書であるとしたら、こちらは1年目、 あるいは半年でドイツ語が好きになり、より深く学習を進めたくなった方や エクセルではそもそも引けない語に直面するようになった方にお奨めできる 2年目から卒業まで、あるいはその先までずっと長く付き合える独和辞典と いう事が出来るのではないだろうか。 11万という膨大な数の見出し語と、多くの関連語の掲載は複雑さを増す教科書の 例文を読む際に留まらず、雑誌の記事や新聞など、時に専門用語が飛び出てくる 文献を講読する際にも大きな助けとなり、豊富な用例の収録は単に読む際だけでなく、 書く際の表現を豊かにする上でも利用者の助けとなる。値段だけを見ると少し躊躇いを 生じそうなものであるが、第二外国語の辞書であることや収録語数、内容を鑑みるに、 この値段で長く使える辞書が手に入るという意味で、決して割の合わない買い物とは ならないはずである。 (2013年09月30日) |
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着眼点と独特のノリが楽しい作品 | ||
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「たてセタ」というジャンル(?)の開拓者にしてその語の提唱者でもある たてセタの大家、刻田門大(ときたもんた)氏の単行本。(なお、たてセタとは リブ生地の縦に織り目が入ったセーターを指す。詳細については本書あとがきや インターネット検索等を参照されたい)ふとした事から「耳魔導士」として 覚醒した主人公「カナミ」と、そのパートナー「ミミオ」が、その能力を鍛えながら、 その能力を狙う敵との戦いに巻き込まれていく…というあらすじ。 …こう書くとえらくシリアスなお話に見えるが、訳のわからぬままに覚醒し、 その能力と、それによって巻き込まれる騒動を疎ましがる主人公と、お調子者の パートナーの掛け合いが楽しく、時にフェティッシュできわどいネタ(百合ネタも 随所に盛り込まれている。)を挟みつつも、独特の勢いもあってか楽しく読める作品。 惜しむらくは本書の商品紹介ページが寂しかったり、あまり目に付かないところに あったりする点であるが、コメディとして全体的に楽しく読め、良い具合にお腹が 膨れるコミックスとしてお奨めしたい。 (2013年09月30日) |
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仏教が説く作る者、食べる者の心構え | ||
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予てより拙レビューでもご紹介した仏教、とりわけ曹洞宗における食事の心構えを 説いた『典座教訓』について取り扱う書誌の中でも、本書は特に対訳に重点を置いた ものである。あくまでも原文(書き下し・漢文)、対訳とそれを理解する為に必要な 語義について、各章毎に注釈を加えるという極めてシンプルな構成となっている。 一見すると評釈や解説を廃した構成ゆえにとっつき難さを感じるかもしれないが、 無駄が無いだけに、食に関する禅の心構えであるとか、その精神とかに向き合う事が 出来る一冊である。(世俗にどっぷりつかった不良職員がこう書くのも多分に おこがましい気がして恐れ多いが…。)また、本書は『典座教訓』だけに留まらず、 食事を受ける側、すなわち食事を頂く際の心構えや所作について著した『赴粥飯法』も 同様に所収している点で重要な一冊である。 勿論厳格な禅宗の食事の所作が直ちに我々の食卓に受け入れられるかは疑問であるが、 日常を修行と捉える禅宗が如何に食事を捉えていたのか、仏教徒ならずとも、食に 人並みに興味を抱く者であれば、一度は覗き見ても損は無いのではないだろうか。 (2013年09月30日) |
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世界で愛される地獄巡りの決定版 | ||
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「われを過ぎて、憂いの国へ。われを過ぎて永劫の呵責あり。…われを過ぎんと するものは一切の望みを捨てよ。」というような行をどこかで見聞きした人も多いのでは ないだろうか。イタリアの詩人ダンテが著した『神曲』のうちの第一編、地獄編である。 要旨にもあるとおり、人生の半ばにして正道を踏み外したダンテ本人が主人公となり、 古の詩人ウェルギリウスに随って死後の世界である地獄・煉獄・天国を巡り、そこで 様々な魂に出会うというストーリーである。地獄編では正道を外れ、暗く恐ろしい森を 抜けたダンテがウェルギリウスに出会い、彼の案内で地獄の谷を下りながら、様々な 人物の魂が、永劫の呵責に遭い、責め苦を受ける様を目の当たりにする。 難解な表現や回りくどい言い回しに終始し、敷居が高くなりがちな古典作品の 翻訳でありながら、本書はわかりやすく軽快な訳となっていて読みやすく、各歌の 終わりに挿入される注釈も、作品が書かれた時代の背景や神学的知識を持たない一般の 読者の理解を助けている。どこでも読める文庫サイズでありながら内容が充実しており、 始めて古典を読む人や神曲に興味が湧いた人にもお奨めしたい一冊である。 (2013年09月27日) |
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自転車乗りの言いたい事がたくさん詰まった本 | ||
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あなたにとって自転車とはなんだろうか。あるいは日常の便利な移動手段であり、 あるいはこの上ない楽しさをもたらしてくれる趣味の道具かもしれない。様子を 見ていると「恋人です」とか「嫁です」とかいう返事も聞こえてきそうな感じすら する昨今の自転車ブームであるが、本書はそんなブームにあって自転車通勤を推奨し、 自転車通勤族、いわゆる「ツーキニスト」の第一人者として様々な意見を投じてきた 筆者が、日本における自転車の系譜や楽しさに始まり、自転車を取り巻く社会環境と その現状、そして今後の課題について語るものである。 「自転車のここが楽しい、自転車に乗ろう!」という自転車のススメ的な話に 始まり、今では信じられないようなゴテゴテ子供用自転車の系譜、そして筆者が オススメするツーリングコースとそこでのエピソードを経て、自転車を中心とした より良い社会を作るためには何が必要か、という提言に至るまで、極めて明確で、 それでいて痛快な筆者の論調、表現は読者を飽きさせることなく、自転車乗りと しては「そうそう、そうなんだよ」と頷き、時に「そうだ!」と合いの手すら 入れたくなる本書、自転車乗り共感必至の、自転車愛にあふれる一冊である。 (2013年09月24日) |
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日常を通じて学ぶ禅の心 | ||
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禅宗というと、ひたすら静寂の中に座禅をし、悟りを求め修行する…との印象が 付きまとうが、その一派である曹洞宗を開いた道元禅師が同時に重んじたのは日常の 中にある日々の所作であり、またその一つとしての食事であった。そしてその禅寺に おいて雲水(修行僧)たちの食事を整え、一山の台所を預かる、典座(てんぞ)と 呼ばれる職について、その心構えを説き示したのが『典座教訓』である。 本書はその『典座教訓』について、鎌倉建長寺をはじめとした諸山において 典座として修行を重ねてきた著者が対訳を加え、また、自身の経験などに基づいて 分かりやすく評釈を加える内容となっている。あまりにも身近な事柄である食事だが、 それだけに、食を通じて説かれる種々の心構えにはなんともいえない重みがあり、 しかし時にすんなりと心身に沁みる事もあれば、ハッとさせられる事も多い。 堅苦しい拙レビューのせいもあって、一見難解そうな本ではあるが、わかりやすい 対訳と、どこか親しみを感じさせる評釈もあり、また、簡単な精進料理のメニューが 紹介されていたりして読みやすく、広くオススメできる一冊である。 (2013年07月03日) |
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美術成分たっぷりの美術系日常4コマ | ||
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拙レビューにおいて取り上げた『棺担ぎのクロ』の作者であるきゆづきさとこ氏の もう一つの代表作である。『棺担ぎ…』が物語の要素が強く、一種ダークな雰囲気を 醸し出すのに比べ、本作は高校の美術科に通う主人公らを中心とした日常系4コマで、 明るく、そして美術系4コマらしくカラフルな作りになっている。 相変わらず、他を凌駕する画力と独特のタッチは健在ながらも、驚かされるのは その「美術成分」の濃さで、デッサンの話や色の話、画法の話に絵画の話と、殆ど 各回に美術にまつわる話題が練りこまれており、主人公をはじめとした個性的な 各キャラクターのやり取りも相俟って、気持ちよく、そして楽しく読める作品である。 また、コミックスでありながら豊富にカラーページを使い、それらの美術ネタを 溶け込ませてくる構成も興味深い。 表紙買いの人にも、日常、学園系の4コマが好きな人にもオススメしたい作品である。 なお、表紙買いという言葉を使ったついでの余談であるが、本書をお求め頂いた際には 是非カバーの下を覗いてみていただきたい。 (2013年07月03日) |
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およそ4コマとは思えないボリューム、読後感。 | ||
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本作は、アニメ化された「GA 芸術科〜…」シリーズの生みの親である著者の もう一つの連載作品である。「GA」がどちらかというとポップで明るい雰囲気で あるのに対し、こちらはその対極で、ややダークで重厚な雰囲気を醸し出している。 真っ黒な服に身を包み、棺桶を背負って旅をする少女「クロ」とそれに付き添う コウモリの「セン」の一行が、行く先々で様々な人々と出会い、時には事件に 巻き込まれ、時には人助けをしたり…という旅話で、ユーモラスな描写や話を 織り交ぜながらも、物語りの核心にあって常にその存在を匂わせる、「なぜ彼女は 旅をするのか」そして「彼女が担ぐ棺の意味とは何か」といった謎の数々は、 著者の独特のタッチとストーリーと相俟って読者を惹き付けてやまない。 4コママンガというジャンルが多くの作品を擁するに至り、その題材も多岐に 亘る中で、これほどボリュームを感じさせ、そして読後に「お腹一杯だ」と思え、 さらに続きを渇望させられる作品も珍しいように思える。860円の値段をも決して 惜しいと思わせない一冊である。 (2013年06月23日) |
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見て楽しく、釣行に役立つ釣り場ガイド | ||
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インターネットの普及と発達により、数多の情報へのアクセスが容易となった今日。 釣りとて例外ではなく、インターネットで検索をすると数多くの情報がヒットする。 しかし、その中でもなかなか集めにくい情報があるとすれば、釣り場に関する情報が その一つに挙げられるのではないか。確かに地図や釣果を含めた情報にアクセスできる サイトも存在するが、多くを網羅的に扱い、その雰囲気までを伝えるものは少ない。 本書は、そんな釣り場の情報を空撮写真によって伝え、立ち入り禁止箇所であるとか、 釣り場のどの位置から、どんな魚が狙えるのかを視覚的に伝える釣り場ガイドである。 三浦半島から西湘地域を扱った本書では、各所に点在する漁港、防波堤はもとより、 地磯や離れ磯、沖堤防などをも網羅し、特に磯や離れの釣り場については渡り方や 渡し船に関する情報なども掲載されており、釣行のプラン作りに役立てることが出来る。 いつも通っているホームの釣り場を再確認し、今まで試していないあの場所には どんな釣果があるのかを調べてみたり、名前は知っているが試した事の無い釣り場の 雰囲気や釣果を探ってみたり、或いはエリアにどんな釣り場があるのか探ってみたり、 幅広く利用できる一冊である。 (2013年06月23日) |
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とりあえずの一冊として | ||
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一口に釣りをするといっても、その場所や方法によって様々な「釣り」が存在する。 大きく分ければ海釣りと川釣り、方法で言えばエサ釣りとルアー釣り、海釣りの中にも 陸釣りと船釣り…という具合に数多のジャンルが内在し、それぞれに多数の案内書が 著されている中で、本書はそのように数多いジャンルを一通り紹介する入門書である。 道具や糸の結び方、基本的な仕掛けに魚の捌き方といった基本的な事項に始まり、 堤防、砂浜、磯、船(ボート)釣りに川や湖沼での釣り、そしてルアー・フライと 各種の釣りについて、魚種別に仕掛けの一例と、釣り方が解説されている。勿論、 その釣りごと、ともすれば魚ごとに一冊の本になってしまうような世界であるから、 奥の深いギリギリの釣り方の解説までをこの一冊に求める事は出来ない。 しかし、とりあえず一冊手元に置いておき、糸の結び方や仕掛け作りで困った時に 参照してみたり、次の週末はどこに何を釣りに行ってみるか、パラパラとめくりながら プランを立てる上では十分に役に立つ一冊である。特に1冊で主要な魚と、海川の釣り について案内を引く事が出来る点が嬉しい。 (2013年06月08日) |
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嗚呼、すばらしきビールの世界 | ||
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いつの間にか「最近の若者はビールを飲まない。」という嘆きが聞こえてきて、 実際にビールの消費量の減少が叫ばれる昨今であるが、我々はそもそもビールの 何を知っているのか、キンキンに冷やし、喉越しに焦点を求めて今日も飲むあの 黄金色の飲み物はそもそも一体何なのか…。 本書はそんなビールとは何かという概論に始まり、世界各国各地のビールの製法や 来歴、そして日本でも手に入るという各製品の紹介に終わる、まさにビールの入門書 にして、ビールの世界の案内書、地図であるといえよう。ビールの作り方に始まり、 イギリスのビールとドイツのビールの違い、エールとは、ピルスナーとは…。そんな 疑問を、本書は作者のエピソードを交えつつ、実に旨そうに解説してくれている。 実際に読んでみて、ビールの世界の奥の深さと、いかに我々がビールについて 無知であったかを思い知らされる一冊である。なお、例によって非常に旨そうな 「垂涎の書」であり、始末が悪い事にコンパクトな新書である。くれぐれも帰りの 電車内など、口寂しくなりがちな環境での閲読にはご用心頂きたい。 (2013年06月08日) |
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読みやすい学園+妖怪(?)ファンタジー | ||
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道具を長いこと使っていると生まれるという付喪神をモチーフにしたお話で、 主人公「一也」が大切にしていた母の形見の付喪神である「桐葉」と一也がある日 ふとした事件をきっかけに出会い、クラスメートを巻き込んでいく…といったもの。 主人公に所に異界の美少女が降りてきて…というのは決して珍しい話ではない 今日この頃、しかしながらしっかりとしたものを感じさせる設定やストーリー、 そして著者のイラストレーターや同人作家としての経験に裏付けされた丁寧な 作画によって、極めて読みやすい作品となっている。 単に絵が綺麗でキャラクターが可愛いというだけでなく、バトルシーンの描写も 小気味良く、成年誌らしい些かフェティッシュできわどい描写(この辺りは人を 選ぶかもしれないが…)も健在で、楽しんで読むことが出来る。同じ値段の文庫や 新書と比べると読み終えるまでの時間が短く、燃費の悪さを否定できないコミックスに おいて、読後感に損をしたと感じさせない作品である。 (2013年06月04日) |
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塀の中と、その日常に触れる写真集 | ||
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我々一般人にとっては、塀の中の彼らがこちらを「娑婆」と呼ぶように、 一種隔絶された環境である刑事収容施設。この写真集は、中でも主要な、 あるいは特色のある施設に焦点を当て、その施設や、そこでの日常の一場面を 収めたものである。本書では立ち入ることはもとより、普段ではなかなか見る事の 叶わない施設内部の様子や、作業や各種行事に勤しむ収容者の姿などが見られる。 全国に点在する施設のうち、北は札幌から南は九州まで、初犯者のための 刑務所から累犯者を対象とするもの、そして医療、交通刑務所から少年院まで、 様々な施設が紹介されており、実際にどんな作業が行われているのか、そして 社会復帰のためにどのようなプログラムが用意されているのかが分かり、特に 職業訓練ではパソコンやCAD(製図)、果てには船員になるための資格課程など、 「こんなものまであるのか」と驚かされる。 社会の変化によって司法と我々の距離が縮まり、行刑制度にも無関心でいられない 昨今、塀の中を覗き、あるいはそこに触れるための一冊としてオススメしたい。 (2013年06月03日) |
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フジツボを愛らしく感じさせるフジツボ入門書 | ||
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いつだかの新刊情報でタイトルを目にしてから早幾年、買うか否かを 悩み続けた一冊である。磯や防波堤などにくっ付いて動かず、時として 地形の一部であるとも思わせるフジツボに着眼し、「魅惑の足まねき」 の如き怪しげなサブタイトルを付した著者と岩波書店にまず喝采を送りたい。 本書は、そもそもフジツボとは何なのか、その生態や分類について 分かりやすく説明した後で、『種の起源』で有名なかのダーウィンと フジツボのかかわり、そして我々の文化とフジツボのかかわりについて 解説する、いわばフジツボの入門書である。 カラー写真をはじめとした美しい図と、著者のフジツボ愛あふれる 文章は、本書のタイトルで初めてフジツボを意識した読者をも、徐々に そして確実に深奥なフジツボの世界へと引き込んでいく。また、ページ右下 にはフジツボの成長を描いたパラパラマンガが、巻末にはペーパークラフト が付録として付く等、遊び心があって非常に楽しい一冊である。 (2013年05月30日) |
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水底に眠る故郷の追憶と記録 | ||
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およそ2億トンの水を湛え、神奈川県内の人口の9割に対し水の供給を行う 首都圏有数の水瓶、宮ヶ瀬ダム。単に水瓶としてだけではなく、今日多くの 観光客が訪れるこの湖は、かつては清流が流れ、人々が暮らす集落であった。 本書は、宮ヶ瀬ダム計画によって水底に沈むこととなった集落と自然の 「在りし日」に着目し、残された資料や宮ヶ瀬出身者の伝承をまとめ、 かつての宮ヶ瀬の四季折々の自然や、そこで営まれていた人々の暮らし、 そして近代にいたるまでの宮ヶ瀬のおこりを写真や図と共に伝える一冊である。 豊富な神奈川の水を支え、ひいては神奈川に住む我々の暮らしを支える 宮ヶ瀬湖は何の上に成り立ったのか、今でも宮ヶ瀬湖の湖岸から湖底に 伸びる旧道の遺構を我々は目にする事が出来るが、かつてその道の先には どんな眺めが、集落が、そして暮らしがあったのかが分かる。惜しむらくは 本来より大きな判で、重厚な装丁を以て語られるべき本書の内容が冊子と して編集され、そこに留まっていることだろうか。 (2013年05月25日) |
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ファン必携の画集 | ||
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『魔界天使ジブリール』シリーズや『クイーンズブレイド』シリーズの 原画を担当し、とにかく可愛らしい絵柄で知られるイラストレーターである 空中幼彩氏の過去の作品を収録した画集。A4版1ページに1枚を印刷する形で 巻末にまとめてサムネイルと空中幼彩氏による解説が掲載されている構成。 そのほかにピンナップで表紙の女の子のカット数点と、扉絵でやはり表紙の 色違いが収録されている。 恥ずかしながら、先に挙げた2作品を中心に、『ジブリール』以降絵柄が 落ち着いてきた感が強く、「空中幼彩といえばジブリールの絵」という認識を 持っていた担当であるが、収録されている過去の作品等を見てみると必ずしも そうではなく、絵柄の変遷などを垣間見れて楽しい一冊である。また、Webでは あまりまとまった形で作品群を公開していない同氏にあって、本書は氏の作品を じっくり楽しむための貴重な手段であるともいえよう。 (2013年05月07日) |
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不思議な生物をめぐるファンタジー | ||
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北海道にあるとされる架空の町「穂幌町」を舞台として、転校してきた 主人公である美紗樹と、町の湖に住むとされる伝説の生物「ホホポ」が出会い、 美紗樹と「ホホポ」であるニオの周囲を巻き込んだ生活が始まる。しかし、 時を同じくして発生した誘拐事件の犯人たちを乗せた飛行機が穂幌町に墜落し…。 …『いばらの王』や『DARKER THAN BLACK』で知られる著者の過去の連載作品を、 エンターブレインが新装版として発売したものである。ダークなストーリーの印象が 強い著者にありながら、この作品ではかなり丸めのかわいらしい作画と、美紗樹と ニオとのほのぼのとした交流が微笑ましい。しかしながら、冒頭で触れたように 後の作品で見られるようなシリアスな展開も健在で、事件に巻き込まれてゆく 美紗樹とニオの運命は、そして背後に渦巻くものとは、と引き込まれる要素も多い。 時に笑いながら、時にハラハラしながら読むことの出来るお話で、多少荒削り ながらも嫌味のない作画と、時々フェティッシュな描写も相俟って気分よく読める 一冊としてオススメしたい。 (2013年05月07日) |
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ファーストクラスに学ぶビジネススキルと成功の秘訣 | ||
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ともすれば「ああしなさい、こうしなさい」という具合に、上から目線に なってしまいそうなビジネス書畑の中にあって、本書はファーストクラスに フォーカスを当てて成功の秘訣を探るものである。 何といっても話題の中心は国際線のファーストクラス、ヨーロッパ旅行で 座ろうとすれば往復200万円近くを工面しなければならない座席であり、まさに 雲の上の世界であるのだから読んでいて興味が尽きることはない。カーテンで 仕切られた先ではどのようなサービスが提供され、どんな食事が、どんな布団が 運ばれてくるのか、そしてそこに座ってサービスを享受する人々は一体どんな 人間なのか、彼らに学ぶべきものは何なのか。 ファーストクラスの世界にばかり頭が行ってしまいそうだが、そこは筆者の まとめ方が上手く、学ぶべきこととファーストクラスのエピソードを上手く 織り交ぜ、読んでいて疲れさせることなく両者を上手くリンクさせている。 ビジネスのヒントを求める人にも、単にファーストクラスに興味を抱いた人にも おすすめしたい、ちょっと異色の、しかし楽しいビジネス書である。 (2013年05月06日) |
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戦後混乱期を戦う「民主警察」前線録 | ||
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あさま山荘事件や東大安田行動事件などで指揮官として活躍し、また 危機管理の第一人者でもある著者の警察任官当時のノンフィクションである。 戦後の混乱の最中で警察組織も採用制度も大きく変貌を遂げつつある中、 幹部候補生である「三級職」として採用され、警察署で見習い警部補として 勤務する著者のパトロール生活を綴った一冊。 単なるパトロール日記ではなく、当時の警察組織内に根強く残っていた ノンキャリ組との軋轢や、戦後の混乱期という世相を映す椿事珍事件の数々など、 本文中に垣間見える「警察戦後史」あるいは「東京戦後史」が興味深く、また、 部下の教育に、事件処理に、時には酔っ払いの応対にと奔走する様をあくまでも ユーモラスに描いた描写が小気味よい。 また、後に重要な警備に関わることとなる著者が「成長期」である当時に参考と したものは何か、指揮官とは、上司とはどうあるべきかといった実践的な事柄に ついても著者の一家言を見ることが出来、単にノンフィクションとしてだけでなく、 参考とすべき生き方の教科書としてもおすすめしたい。 (2013年05月06日) |
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美しい写真と共に、南米古代文明の神秘に迫る。 | ||
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一見すると新書にしてはお高い値段設定であるが、驚くなかれ本書は カラー版である。新書のカラー版とはこれいかにと訝しげに見られる方も おられるだろうが、表紙の写真や冒頭の地図に始まり、マチュピチュを はじめとするインカの古代遺跡や、そこに至る道、そしてそれを覆う ペルーの自然などの写真がかなりの頻度で登場し、ともすれば「堅苦しさ」が 付きまとい気味な新書のイメージを一掃する構成となっている。 本書は斯様な美しく壮大な写真と共に、かつてインカの人々がどこから現れ、 険しい山々によって下界から隔絶されたかの地にいかにして住処を構えたのか、 そして、宗教的なものと思しき遺構が数多く残るマチュピチュや周辺の地に おいて彼らは何に祈りをささげていたのかといった事柄について想像を膨らませる。 多くの人が一度はその名を耳にし、テレビのドキュメンタリー番組などで雲に 浮かぶその雄姿を目にしたことがあるであろうインカ最大の遺跡にして聖殿である マチュピチュと、それを擁したインカへの興味をかきたててやまない一冊である。 (2013年04月27日) |
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