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渕書店 BOOKSTORE FUCHIのレビュー

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掲載レビュー全109件
 
何のために「学ぶ」のか
ちくまプリマー新書 226 中学生からの大学講義 1
外山滋比古/著 前田英樹/著 今福龍太/著 茂木健一郎/著 本川達雄/著 小林康夫/著 鷲田清一/著
筑摩書房
税込価格  886円
 
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若い。それだけで特権階級。でも。
おすすめ度:
本書は、まだ社会に出ていない学生を対象にして各界の賢人が語りかける講義スタイル。メンツは、外山滋比古、前田英樹、今福龍太、茂木健一郎、本川達雄、小林康夫、鷲田清一。読者が知る人もいれば、勉強不足で知らない人もいる。ただ、著作として紹介されている代表著に聞き覚えはあったりするという、まあ、知の猛者達と言えるのでは。その語り口はひたすら直線的。いろいろと回りくどいことは言わない。限られた時間の中でいか若者の知識欲なり、行動動機なり、いい意味での刺激を与えるかに各人構えを見せている。彼らが教える、経験と努力、学ぶための態度。「文武両道は当たり前」「まずは体を動かせ」「辛い境遇から逃げるな」「人には限界があり、人の10倍働く、1日10冊の本を読む。これらはインチキ」「愛読書を持て」「パッケージはわかりやすいのは当然。すでにある。わからないことにはポジティブでおもしろい未知がある。この感じ方が大切」「頭がいいとは努力のしかたを知っているということ」「無理めの課題で快感を感じるドーパミンが出やすいシナプスのネットワークを作る、強化学習」「体のパン(実際)・心のパン(宗教、芸術)・頭のパン(学問)」「世界と自分のズレの中にあらゆる将来の種がある」「エラー、失敗の中、エラーする力こそ世界を変える」等々・・熱い。学生に語るという講義スタイルだが、「学び」を忘れない者は全員彼らの前では学生となるはず。読者の年齢で選ぶことを本書はしてない。ただ、学生であることが物理的に長時間となる現役学生のほうがやはり有利? 若い「学生」。古い「学生」。それぞれのエンジンで動く。本書はガソリン、あるいは水素、電気です。 (2018年07月25日)
とのさま1ねんせい
長野ヒデ子/作・絵 本田カヨ子/作・絵
あすなろ書房
税込価格  1,404円
 
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とのさまのくせに1ねんせいになるのをいやがるな!すでに変−。
おすすめ度:
なぜ、とのさまが、今度1ねんせいになるのか?ひげを生やしてるのに、大きなお城を持っているのに、けらいもたくさんいるのに?さらに、このとのさま、あそび好き。お手玉、昆虫採集、けん玉などなどで毎日遊びふけっている、とのさまのくせに・・・。でも、このお話においてそれが、なぜ?とは、どんな読者も、ましてやこども読者はけしてしない。できない。そうなのだからしかたない−。とのさまは、あそびができなくなると思ったのだろう、1ねんせいになるのを嫌がる。けらいたちは、なんとかしてとのさまを説得しようとするのですが、とのさま、逃げる逃げる。逃げるのもとのさまにとっては追いかけっこにすぎないらしい。では、どうやってけらい達がそんなとのさまを1ねんせいになるように仕向けるか?そこがたまらなくおもしろく、この、あっけらかんとしたコミカルな様子を伝えるのはむずかしい・・・。1ねんせいに上がるとのさまのために、うわばき入れやぼうさいずきんという入学定番グッズに、けらいたちが「とのさま」という縫いこみをしたりする場面などおもしろすぎる。笑ってしまう。でも、全編通しておもしろすぎるから言い足りない思いでいっぱいになる。そもそも絵が笑える。笑える絵。というか、絵が笑ってる。なので、爆笑するには読むしかないわけです。 (2018年06月16日)
はみがきあわこちゃん
ひまわりえほんシリーズ
ザ・キャビンカンパニー/作・絵
鈴木出版
税込価格  1,404円
 
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あわわわわと、泡を吹く読者。この色彩!イマジネーション!!
おすすめ度:
ある日、あわこちゃんはいつものように朝、歯磨きをしている。と、すると、なぜだかいつもと違う現象が起きる!!なんと、あわこちゃんの口から歯をゴシゴシ磨いて出たあわが、マンガのセリフみたいな感じで溢れ飛び出してきてしまう・・・。ぶくぶくぶくぶと、それは広がり大きくなってゆき、街まで飛び出し、街を海のごとく覆ってしまう。さらにさらにと読者のイマジネーションを喜ばせる予想外の光景が展開される。まったくページをめくる手を止めてくれない。泡が海なら当然海につながっている。ほんものの海にあわに乗って出てしまうあわこちゃん。クジラがばったり!結末はここでは避けましょう。何よりこの作家(夫婦で二人でチームになって描いているらしい)の一番の特徴は色、だし、絵具のデコボコが見える筆致だし、セリフまでを筆で描くという絵本の隅々までにおよぶ作品の全体のようすだし、・・・まあ、読者の批評はどうでもいいとしひとまずおいても、読む人は、それぞれのことばを使ってこの作品をほめると思う。1ページごとが部屋に飾れるような完成度。少しむずかしく本書を語れば、絵本の要素、まるごと、を使っての表現(ことば、本そのものの大きさとカタチ、色、筆致、レイアウト、セリフ、物語構成・・・etc)が、これまでに触れたことのない新鮮さを持って読者を迎えてくれると思う。むずかしく言わなければ、あわこちゃんの口から飛び出して街に広がり海に同化するあわみたいにすごいのである。
(2018年04月20日)
草間彌生、たたかう
ワタリウム美術館/企画 草間彌生スタジオ/協力・監修
ACCESS
税込価格  2,484円
 
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偏愛ゆえにでいい。「草間彌生は、凄い。」と言いたい。
おすすめ度:
今や、自身の美術館すら持つ日本屈指のアーティスト草間彌生。彼女は幼い頃より目の前に常時ドット(水玉)が見えるという強迫に苛まれ続けた。そして、それを克服するため創作へと向かう。本書は、そんな草間氏における、ニューヨークでの活動と名声を伝えるもので、作品、本人の写真、フライヤー、批評記事、当時を回顧する本人のコメント、文章などを収めるコンパクトなもの。時は、美術界のメジャーシーンがパリからニューヨークへと移る節目。戦後の暗い世相もあり、閉ざされた少女時代を過ごした彼女の胸にあったのは、遠い世界に住む人々との、作品を通じての心の交流への渇望であった。アメリカの有名女性画家との文通を機にして、取り分け保守的だった家柄で猛反対する母親を8年に渡り説得して出国。年齢28。ファンなら喜ばないはずはない貴重な一冊だと思うが、作品は知れど、若き草間氏の写真を見るのは初めてという読者は、今のクールさとは別な、タイトなかっこよさに打たれると思う。寝ても冷めてもアトリエで、「網目」「水玉」を無限に描いていたために、気づかぬうちにキャンバスからはみ出し、家具や床、壁、そして自分の体にまでそれを描いてしまう。創作過程では、幾度も救急車に載せられ、病院から「また、あなたですか?」とあきれられたという。そして、面白いのは、彼女の個展に遊びにきたウォーホールが、「ワーオ、ヤヨイ、これ、なーに?」「素晴らしい」と叫び、数年後シルクスクリーンで刷ったポスターを、天井や壁一面にびっしりと貼って埋める作品を発表したくだり。ウォーホールの作品作法の一つである「常同反復」がどこから出てきたのか考えさせられる(草間氏は「(ウォーホールによる)真似だった」と語るが)。やがて表現は、時代に拮抗する政治色やタブーの解放という色合いを帯び、当時のニューヨークでブームとなった「ハプニング」でアメリカ社会における存在を決定的とするのだが、日本ではスキャンダラスなものとしてしか受け入れられない。まさに芸術家としての人生しかありえないだろうと思わせる草間氏の若き日の「生の格闘」の刻印。表紙に写る少女の面影を残す草間氏はなんらかの眩しいものに負けじと一点を見つめている。その先に今の草間彌生があるというわけか?しかし、本書は2011年に刊行されたにも関わらず未だ初刷のみ。つまり、日本ではまだまだ草間彌生はゲテモノ扱いなのである。
(2018年04月14日)
深読み日本文学
インターナショナル新書 016
島田雅彦/著
集英社インターナショナル
税込価格  821円
 
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スマートでポップな文学論+α。と、「深読み」する。
おすすめ度:
近代文学を中心とした日本文学論。ポップな感覚でスパスパと、作家と作品が論じられる。日本文学の母胎を『源氏物語』として、本書の『深読み』は始まる。「光源氏を天皇に見立てる」宗教学者中沢新一の「読み」が『源氏物語』を面白くさせると勧め、それは、藤原氏による政治戦略という読みかたを提供し、右記のような読み方すら生むもの〜『源氏物語』は天皇のためのポルノグラフィーであったとも言えるでしょう(p28)〜。全体を見れば、過去から未来へ時間軸に沿い書かれる本書ではあるが、忠実には従わない。ザッと食い荒らすと、『枕草子』は「ガールズトーク(本文)」、樋口一葉は自由民権運動の最中フィクションの中で社会的弱者を解放した作家、漱石など近代文学作家達の作品は、日本の近代化において「自我」と「超自我」が苦闘した歴史であり(ちなみに村上春樹の「超自我」に当たるものはアメリカだとする)、ライトノベルのキャラクターと、西鶴、近松などの江戸時代の本の挿絵に類似性を見つつ、世界に愛される谷崎潤一郎にいたっては、冒頭の『源氏物語』から日本文化に通底してゆく「色好み(本文)」を西洋的解釈で作品に昇華した「圧倒的なスケベ(本文)」となる。また、『日本風景論』『代表的日本人』『武士道』『茶の本』が近代国家成立に不可欠なナショナリズムの土台となったとか(「ナショナリズム=人類の麻疹」というアインシュタインの言葉もひょい)、疑念なく、中上健次が近代文学を終わらせたとバシリ!と決める豪速球すら、熱心ではない読者のミットにも収まる。さらに、現代文学の世代間確執という主題を「父親殺し」と表現したりと、とにかくわかりやすい。シニカルとユーモアが混じる軽快なトーンが説得力を持ち「文学」を伝える。もろもろと書き出してもしかたがないのだが、最後に『農業革命』『産業革命』に次ぐ、人類の歴史における第三の革命である(らしい)『情報革命』の中でどんな文学が生まれてゆくか?人工知能と人間の対峙は?という点まで行き、本書は終わる。終わるのだが、本書を読み終え「あれれ・・」と思ったのは、本書が文学論でありながら、日本を主題とする「エッセイ」という印象があることで、そういう角度で本書を見渡せば、日本の「文化」「伝統」「国際的位置」「社会構造」などが、著者視点でスパスパなのである。ポップ表現と知性の間柄が本書でなんとなくだが分かる。

(2018年03月23日)
中をそうぞうしてみよ
かがくのとも絵本 knowing how
佐藤雅彦/作 ユーフラテス/作
福音館書店
税込価格  972円
 
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想像力爆発のために周到に用意された写真絵本
おすすめ度:
おもしろい。そして制作者の、この写真絵本にこめた意味深い意図を感じる。とても言葉でまとめ上げることなど読者の力では不可能。或いはいくらでも本書を評することはできるが、多分そのスキームをするするするするといくらだって360°の方向へとふらふら逃げていくに違いない。〜イスに打ち込まれイスを支えてる釘がイスの中にどう打ち込まれているか?針山に突き刺さっている針がどのように針山の中に突き刺さっているのか?ブタの貯金箱の中でコインはどのように眠っているか?・・・等々、ページをめくるごとに登場するモノの中身を、想像してみろという問いとその答え。とてもシンプルなQ &A集。人が目に見えないものを想像する力をひそかににくすぐる。読者は、これを奔放な想像力を持っているであろう子供が読めば、本書の答えとは全く異なる別の答えを、大人が納得せざるを得ないものとして提出しそうな気がする。そして、微笑ましく思いそうだし、驚愕しそうな気もする。これは製作者側も意図できない、いわば想像力爆発の瞬間との出会い。仮にそうだとすればそれは読者が本書を語ることができるはずはないのである。
(2018年03月02日)
コンビニ人間
村田沙耶香/著
文藝春秋
税込価格  1,404円
 
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人生それぞれ。何が悪い?ゴーゴー!!
おすすめ度:
幼い頃「合理性」という基準で粗暴な行動を起こすなど問題児であった主人公。カウンセリング等も受けたようだが周囲の人間から「治らない」と心配される。いわゆる障害、とされるが知能にそうしたところは全くない。情緒障害とも違う。「合理性」こそが彼女を動かし自分ではどう他人と違うのか分からない。そこにコンビニという「合理性」の塊のような環境が現れる。その環境の中に入ってマニュアルに従っていれば、まとも、普通、正常であるとなんとなく他人から見られることを知り自分でも納得がいくというわけだ。『ああ、私は今、上手に「人間」ができているんだ(本文)』。そこに新しい価値観を突きつけてくる人間が登場する。「婚活」のためというわけのわからない理由で入ってきた35歳の男。縄文時代に自分の不甲斐なさの言い訳などを求めている屈折したさえない男だがこの男と主人公のやりとりがたまらなくおもしろく読んでいてのけぞる。一体二人で何を言い合っているのだろう?と笑いが止まらない。しかし、彼の「指示」に従うことで主人公の周囲が彼女を「仲間」と見做しだす。二人は同棲する。そして主人公はコンビニ店員に自分らしい人間の原型を求めた生き方の「方法」のようなものをを崩される・・・。

主人公の周囲に対する冷めた温度感は読者を妙に安定させる。彼女の生きざまを「障害」とみる見方もあるし、彼女の周囲はそう考えるわけだが−。読み終えた後、主人公が意気揚々と人生を歩んでゆく姿が見えた。何が悪い?ゴー、ゴー!!

(2016年09月04日)
未来の年表 人口減少日本でこれから起きること
講談社現代新書 2431
河合雅司/著
講談社
税込価格  821円
 
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数字に炙りだされる酷薄の日本!夢をとじて、夢をはじめる。
おすすめ度:
本書は、まず、いかんともしがたい数字(「内閣府報告書」「国土交通省」「経済産業省」「国立社会保障・人口問題研究所」「国勢調査」等に拠る)をもとに、人口減少が招く日本の未来像を描きだす。ぼんやりしてるといつのまにか現実に、というインパクト。2018年から6年後に3人に1人が65歳以上(「超・高齢者大国」)、死亡率が出生率の2倍となるのも2024年・・ごく数年後の現実が時間とともにー。さらにどうなる?どうも今のままでは地方衰退、東京一極集中、日本の疲弊は止まりようがないよう。いずれにせよ読者それぞれが暮らす地域に起きるとされる負のイメージは相当にシビア。逃げ場などないという印象。第二部で展開されるのは、そんな負のイメージを払拭すべく著者が挑んだ「処方箋」の提示だが、人口減少→労働力不足を問題視した回避手段として、外国人労働者、AI、女性、高齢者という読者などもよく見聞きする問題解決のためのキーワードをあげるも「4つとも決定的な切り札とはなり得ない(p159)」と、それらが持つ難点を説き、浅はかな期待の表面を掘り下げる。では?と読者が困りはてるところに、本書が書かれた動機とも思える直球をよこす。変えねばならないのは人口減少化ではなく、マンパワーを要する「発展途上型ビジネスモデル」での成功イメージにこそあり、それを「戦略的に縮める」という方向に転換すべき、と。年齢定義の変更、居住・非居住エリアを決めることでのインフラ節減、都道府県の地理的線引きにとらわれない飛び地合併での財政担保、大学連携型CCRC・・・ページをめくる手を幾度も止めさせるアイデアが続く。本書を読んでいくと地方創生という言葉の意味も再考する必要性があるように思う、それがただ単に中央を追うという思い込みのものであればだが− 。何はともあれ日本がどう変容してゆくことが幸福なのかを読者自身が見つめ直す契機となる可能性を持つし、著者によるドラスチックな変革方法を全て受け入れることだけが正しいのだという読み方をする必要もないとも思う。つまり、受け取り方は読者次第だと思うが、この、相当に困った未来予測は警鐘となり、現実を律し想像力を育むという点で功績を持つものだと思う。  
(2018年02月05日)
どうぶつがすき
パトリック・マクドネル/さく なかがわちひろ/やく
あすなろ書房
税込価格  1,620円
 
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最後のページ、○○!鮮やか!実話がもとの夢のような絵本 ー。
おすすめ度:
 ある日チンパンジーのジュビリーというぬいぐるみをパパからもらったジェリー。ジェリーはどこに行くのも彼といっしょ。彼とともに目にする自然、生き物はジェリーをとりこにします。だからジュエリーは大きくなるに従って生き物のことが書かれた本を読んでどんどん生き物について詳しくなっていきます。ベッドに入るときもジュビリーといっしょ。ブナの木の太い枝にこしかけて、「ターザン」の本を読む。その中に出てくる女の人もジェリー。・・・わたしもアフリカにすみたいな。
 ジェーン・グールドはチンパンジーが道具を使う、作るという今では誰もが知っている常識を発見して世界中の学者を驚かせ、「動物と人間の違いは何か?」と彼らは議論に入る。いわば一つの歴史的瞬間な訳です。そして、それを通し環境、社会問題に関心を抱き、子どもたちと共に活動する「ルーツ・アンド・シューツ」を起こしてそれは世界中に広がる。ゴミひろいやリサイクルから湿地の復元、犬の保護施設、ストリートチルドレンのための募金活動にまでそれが拡がっていく。
 最後のページをひらく。実話。すごい。やられた。まあ、かんたんに言えば【感動】しましたー。
(2018年01月11日)
りんごかもしれない
ヨシタケシンスケ/作
ブロンズ新社
税込価格  1,512円
 
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少年のあたまいっぱいにひろがるifの想像力
おすすめ度:
ある日キッチンにおかれてるリンゴをみつけた一人の少年が「もしかしてリンゴじゃないかもしれない」という想いに駆られ、いろいろとそのものが何であるのかを想像してゆく。その想像力は自由で、まったくしばりがなく、少年が成長してきたわずかな年数の経験、得てきた知識が総動員されます。ほんとうに「リンゴじゃないかもしれない」と読むものをひきこみます。同じ立場の子どもならなおのことでしょう。あたりまえだけど子どもってすごいかもしれない。If。 (2015年06月02日)
だから、居場所が欲しかった。 バンコク、コールセンターで働く日本人
水谷竹秀/著
集英社
税込価格  1,728円
 
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日本社会を変えようという気概ある人の参考文献にもなる。
おすすめ度:
「堕ちた」という厳しい言葉を含むスレッドが立てられ2ちゃんねる上で誹謗中傷されている人達がいるという。バンコクのコールセンターで現地採用された人達だ。求人誌にある募集要件には学歴不問・タイ語も英語もできなくても可、キャッチコピーには海外に出て働いて見ませんか?とある。企業が効率化のために設けた海外拠点が仕事場であり日本に住む日本人への電話セールスなどが仕事内容。読み進めていく。そこにはレポートされる取材対象の人々の、目を背けたくなる生活があった。読者は実際耐え難くなり途中で活字を丹念に追うことを中断。そこは作品中盤で、ルポされる女性がゴーゴーボーイとタイで呼ばれる男たちを買春するために倹約して薄給を貯めては興じるという内容のインタビューのところでだった。「あとがき」が付けられていたため、一体何が著者を動かし痛ましい暮らしを続ける人々(男女を問わずである)の闇を書かせたのかということだけでも確かめたくて非常に失礼を感じるものの一気に斜め読みして(事象の違いこそあれ徹底して暗く苛酷な生活、そこを抜け別職についた勝ち組の現役に対する侮蔑に溢れているよう見えました)−「あとがき」へ。著者が主張するのは、現代日本社会が健全さを微塵も持たない「歪み」を持つものと化してしまい、人が生きづらい社会に成り果ててしまったというようなこと。それは例えば、年齢に比してやり直すことを許さない社会構造にあり、そう考えるとバブル崩壊、リーマンショック、失われた20年、派遣切り、就職氷河期などに直面したおおよその世代は被害者であるといって過言ではないのではなかろうか?そして著者の視点はさらに進んでゆく・・そんな社会にとどまる必要もない時代になったと。揺るぎない視点があるがタイのオペレーターたちがそれで救われるわけでもない・・・。では、著者の標的はどこだ?!読者は想像もしたー著者が冷徹な批評眼と醒めた感性を持ちえるのは外側(フィリピンに在住)から日本とタイを見ているからではないか?と。当事者がこれを書き上げるには想像を絶するタフなメンタリティーが要るのでは?と。ここは当然may beですー。    *斜め読みのため評価をつけたくなかったのですがシステム上必要なので★★にしています。ご了承下さい。それから本書の未読部分は冷凍保存後解凍して読みます。 (2017年12月18日)
蜜蜂と遠雷
恩田陸/著
幻冬舎
税込価格  1,944円
 
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この臨場感。ほんとにピアノコンクールを体験しているみたいだ。
おすすめ度:
蜂の羽音、雨がトタン屋根を打つ音、それすらも旋律に聴こえる者がいる− 。ピアニスト達がプロを目指し技量を競うコンクール。そのひとつである芳ヶ江国際ピアノコンクール数日間の物語。本コンクールは世界レベルのもので、登場する主要人物たちは皆、才能に恵まれた音楽家達だ。伝説のピアニストであるホフマンの最後の弟子であり、音楽界に彼が生前、遺言のような紹介状とともに送り込んだ「ギフト(作中表現)」である無名の少年ピアニスト風間塵が物語のリード役となるのだが、天才少女であった過去を持つが母の死をきっかけにクラシックから身を引いて長いブランクのある亜矢、コンテスト審査員の愛弟子である才能豊かで既に音楽業界で定評のあるマサル、楽器店に勤めプロになることを諦めていた28歳の明石、この4人が主要人物となる。ただ本作の妙は、その他のコンテスタント(出場者)達、その実力を見極める審査員、多数の観客者、それらの心の動き、会場の雰囲気を伝える描写(例えば、ピアノの調律のシーン。コンテスタントの出したい音を調律師との間で演奏前に確認をする様などはほとんどの読者を驚かせるだろう)にあり、それらがつぶさな筆致で描かれ、読者をコンテスト会場の中にいるような臨場感に浸らせるところにある。さらに素晴らしいのは、作中で奏でられる音楽の、本来不可能であるはずの言語表現にある。一歩引くならば文章が音楽を想わせることに成功しているということ。その音楽的な文章に乗り、コンテスタント、その身近な応援者、審査員、一般の観客等、コンテストに関わる全ての人がそれぞれのポジションごとの熱を持ち、コンテストの全体像が浮かび上がる。物語が進むにつれコンテストという怪物がその呼吸ごとに膨らみ縮む。読者を含めて彼ら全員がその中で一喜一憂するという具合である。ホフマンの遺言となった「音楽を外に連れ出す」という言葉が作品の謎かけになっているのだが、塵の演奏中に亜矢の心の中で彼と会話するという場面がある。完全にファンタジーなのだが、もしかしたらそうしたやり取りができる能力がある者達が実際にいるのではないかというような錯覚に読者は陥る。「音楽の神様に愛される」ー 物語に出てくるこの言葉が作品全体を覆う。読者をぐいぐい惹きつける。 (2017年12月05日)
対岸の彼女
角田光代/著
文藝春秋
税込価格  1,728円
 
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私たちが歳を重ねるのは成長するため、それを肯定しよう。
おすすめ度:
幼い子を持つ専業主婦で公園ジプシーの小夜子は些細なきっかけから自身の社会的存在を再確認するかのようにプラチナ・プラネットという名の会社に入社する。葵という女性が社長のサークル活動のような女性ばかりの会社なのだが、それを経営する葵は小夜子の目には自分とは対極に立つエネルギッシュに人生を謳歌する独身女性のように見える。家庭を持つ小夜子は他の社員とバランスを取りつつ葵の新規事業に関わるが、それと並行するように葵の別人のような高校生時代が描かれて、物語は行きつ戻りつする。葵の高校生時代の友人であるナナコという人物が現在の葵であるかのように底抜けに明るい女の子として描かれるが、葵にだけその反面に持つ自分のほんとうの姿、ほんとうの気持ちを見せる。ハイライトとして映ったのがそのナナコと葵の自由になるための彷徨の顛末。安宿としてのラブホ、年齢詐称のための脱色、恐喝、女性割引ディスコでの食事、バイトで貯めた共有の所持金が彼女達を追いつめ消えてゆく・・・そんな生活の行き着く果て−。少女たちの心の景色、世界中でたった二人きりという寒々とした疎外感が読者を慄然とさせる。そして、プラチナ・プラネットという社名(ここは読んでください)や、小夜子が高校生の頃に心情を重ねたスキャンダラス報道当人の一人が葵であるということを同僚の悪口から知ることが、過去と現在をつなぎ、二人に共通するものとして、年齢を重ねたことでも拭えない人との関わり合い方への根本的な不安感、が抉り出される。ラストに向かい社員の裏切りに会い葵は一人となるのだが・・・。小夜子が最後にたどり着く人との向きあい方の自覚はひとつの発見で、彼女の成長であるだろう。読者は物語が終わった後の小夜子と葵の関係、それから生まれるであろうもの、それを想像してポジティヴな気持ちになる。 (2017年11月08日)
もりのなか
世界傑作絵本シリーズ
マリー・ホール・エッツ/ぶん・え まさきるりこ/やく
福音館書店
税込価格  1,080円
 
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少年のラッパで森のたくさんの動物がパレード!!
おすすめ度:
紙の帽子を被った少年がラッパを吹きながら森の中を散歩をしているとライオンに出会い「ちゃんとかみをととのえたらぼくもついていっていいかい?」・・・。散歩をそのまま続けているうちに象や熊、カンガルーなども散歩に参加して、いつのまに森で暮らすたくさんの動物たちと少年はカーニバルのように行進してゆく・・・・。オチもしっかりあります!そんな夢のようなできごとが、モノクロの木炭で描かれたようなぼんやりとした優しい絵で描かれた絵本です。
(2017年10月24日)
砂上
桜木紫乃/著
KADOKAWA
税込価格  1,620円
 
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本作は読む者に、ある種「覚悟」を強いるー 。
おすすめ度:
とても暗い小説だなという感想がまずあります。舞台は札幌から少し離れた町。その情景は寂しく描かれ作品の最後まで読者の気持ちを引っ張る。雑誌の小さなエッセイ賞に引っかかった小説家志望の柊令央は直後に出版社女性編集者の小川乙三に喫茶店に呼び出される。別れた夫から毎月支払われるわずかな慰謝料とアルバイトでの生活をしている40歳。乙三はそこで作中でしつこいほど登場する「主体性がない」という言葉を令央に浴びせる。そして編集者としての冷徹さを持って数え切れないほどの書き直しを令央に命じる。生半可な夢として小説を書き続きていた令央だが乙三との出会いにより小説に真正面から向き合うことになる。作者における彼女の日常の丹念な書き込みは読み進めてゆくうちに読者の骨にまで沁みる。主人公の生活は地味なのだが彼女が関係する家族の有り様、人間関係は普通とはとても言えず、書き直しを続ける小説内に次第次第に組み込まれ虚構と現実との区別が不明になるようなものへと変わってゆく。暗いと感じた本作であるが、主人公が最後に獲得したかにみえる成功、その先にある希望を主人公と共有するためにそれは覚悟しなければならないものなのかとも思った。
(2017年10月19日)
キレる女懲りない男 男と女の脳科学
ちくま新書 988
黒川伊保子/著
筑摩書房
税込価格  821円
 
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人類がヒト科を地球から絶やさぬため、必ず読むように!!
おすすめ度:
コンピューター・メーカーで人工知能プロジェクトの一員として働いていたという著者。その研究から男女の脳を科学的に分析。特徴を明らかにし、取扱説明書(トリセツ)にしてその扱い方を指南したユーモアと毒をあわせ持つ禁断の書。女性は目前にある現象から昔の記憶をすぐに取り出しそれを答えとするとか、男は女より技術や決まったことの精度を高める面があるとか。なぜか?大前提が男女では脳梁という器官の太さが歴然と違うということ。この脳梁、右脳と左脳に脳神経細胞(ニューロン)を連携させる器官。また、信号特性であるそれぞれのホルモンに脳は反応し各々の行動を誘発するという。日常で異性に対して苛立ったり違和感を覚えたりする傾向は科学的根拠に基づいているものであり、そこから「トリセツ」をあぶりだせば、相互理解が深まり、お互いを取り扱うこともできるからというわけだ。「オーブントースターにふっくらごはんを・・(本文)」というようなことを期待するな、と。ー本書が生まれたきっかけは、男女雇用機会均等法が施行されたことにあるらしく、単に雇用条件を平均にするだけでは女性は男性型に作られていた社会に放り込まれるだけで、サバイバルするために女性脳的なものを捨てざるを得なくなり、結果として社会は少子化に向かうーと、憂慮したことなどにあるよう。男性化する女性脳は本来「猥雑と例外のかたまり」である育児に耐えられないー。ここで付記しておかなければならないのは、本書はある規定において脳の性格を男女に分けて説明しているだけで、男性が必ずしも男性脳のみで、女性はその逆で、活動をしているわけではないと言ってるところ。割り切りなど不可能だと。そこを踏まえて読まないと本書は納得のいかないものとなる。現に著者は同一性障害の人を取り上げ「最強の脳(本文)」かもしれないと洩らす。さらに何も徹底的に合理化されている社会に女性は不向きというわけではなく、女性脳は組織の能力向上のためには必要というようなことも言う。人類が男女間の諍いで人類を絶滅させないために必ず読むようにしたいのが本書であったりなかったりする (2017年10月09日)
ハケンアニメ!
辻村深月/著
マガジンハウス
税込価格  1,728円
 
通常1〜2日で出荷
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食らえ。一冊、まるごと、アニメ愛の塊だぜ。
おすすめ度:
ハケン ―これは「覇者の権利」という意味。そのクール(期間)に同時放映されるアニメの中で制覇を獲得するものを指す。すなわち「覇」者の「権」利。そのハケンをめぐり、プロデューサー、監督、アニメーター、声優、造形師らが、自らの仕事に昼もなく夜もなく情熱を注ぐさまが本作では描かれる。むろん彼等にとってハケンは一つの結果に過ぎない。妬み、憧れ、信頼、商売、恋・・・そんなアニメ業界の物語。

物語は、好きな人が好きなことをやるというこれでもか!という躍動感でいっぱいだ。そこに人知れない苦労があろうとも 完成時の達成感、その際に訪れる僥倖が彼等を圧倒的に救う。人に、自分の渾身の表現がかたちとして伝わるという喜び。ファンから愛されファンを愛す世界。

物語ではハケンを争う人々が敵、味方という位置づけでいながら、互いの仕事を認めあう真の意味での「ライバル関係」で描かれているところがいい。そのさまは清々しく、読者はそれを最終章で(読んでください)存分に味わえる。(アニメに対して)まったくの門外漢ですが、本作はたっぷり楽しめました。アニメってそれだけじゃ採算取れなくてパッケージ(DVD等)で収益が生まれるのか、とか業界の内幕をのぞくこともできます。 (2015年06月01日)
日本の歴史 集英社版学習まんが 全面新版 特価セット 20巻セット
設楽博己/ほか監修
集英社
税込価格  19,440円
 
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第二巻。中央集権という国家思想の始まりの始まり。
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ヤマト政権の長へ蘇我氏を通じ百済から仏像・経典が届く(538年)。この信仰に物部氏が反対するが大陸文化を伝え発展に寄与した渡来人に仏教徒が多いため受け入れられる。両氏はぶつかり蘇我氏が勝利。仏教文化は天皇の血統にある厩戸王(聖徳太子)を中心に広まる。王の象徴が古墳から寺院へ。厩戸王を側にし女帝推古天皇が誕生。百済中心に文化を築いたヤマトだが大陸に隋という国が出来上がっていた。厩戸王は推古天皇に遣隋使を送ることを進言。厩戸王は冠位十二階で氏姓による権力構造を能力中心へ。仏教を規範に役人の心構え、道徳が示された憲法十七条が制定され飛鳥文化という仏教文化が倭に浸透。2回目の遣隋使小野妹子が隋との国交を成立させる。歴史書「天皇記」「国記」が完成。隋はその後、唐に。厩王戸、蘇我馬子、推古天皇と飛鳥時代を築いた3人が死亡。その後、厩戸王一族は蘇我入鹿に滅亡させられる。唐で学んだ者達の塾に中臣鎌足がいた。彼は蘇我氏中心の政治に行く末を案じ、厩戸王の目指した王君中心の国家体制を唱え、中大兄皇子と組んだ蘇我氏滅亡となるクーデター「乙巳の変」を起こす。645年孝徳天皇が即位。孝徳天皇は史上初めての年号「大化」を制定。「公地公民・班田収授」などで豪族の土地が国のものに、民に区分された土地から税が生まれ中央集権国家が誕生。「乙巳の変」からのこの流れは「大化改新」と呼ばれる。唐と百済は争いを続け、両国と国交を続けたい中大兄皇子は唐に外交に絞ろうとする孝徳天皇と袂を分かち都を飛鳥に戻し飛鳥は発展する。その後唐と新羅が百済を攻める。倭はそれらに対峙することを決めるが唐の圧倒的な軍事力に敗れる。倭は壱岐・対馬・筑紫に「防人」を置き、国防強化をはかる。その後、中大兄皇子は外敵(唐)への危機管理に近江大津宮に遷都、中央集権体制を強化、天智天皇となり、税と兵を集めやすくするため戸籍「庚午年籍(670年)」を生む。天智天皇の策略で、弟の大海野皇子は出家し吉野へ「トラ」と呼ばれる。天智天皇は「トラ」を邪魔だと吉野を攻める。農民にも武器を持たせた。「トラ」は再び戦いの舞台へ。これが古代最大の内乱「壬申の乱」。結果天智天皇は破れ673年大海野皇子は都を再び飛鳥に戻し天武天皇として即位、「律令体制」を固める。−本巻でこの辺から<外国への武力・中央集権国家・法律>という思想が生まれたと見える。 (2017年04月01日)
リーダー論
講談社AKB48新書 002
高橋みなみ/著
講談社
税込価格  800円
 
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“たかみな”は「考えるアイドル」である。
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言わずと知れたAKB48グループの初代「総監督」の著書。たかがアイドルの語り下ろしと高をくくって読んでいくと、「あれ?するど・・」、為になる。その努力と観察力、実行力に敬服させられる。AKB48の基本は「走りながら考える」(本文)のだそうだ。次々と進化、展開していったグループのスピードを考えるとなんだか分かる。彼女の努力には汗臭さがない。どうしてか?それは彼女の「努力」がひと昔前のスポーツ選手にあるど根性イズムの上にあるものではなく現代的アスリートのメンタリティーを持つからだ。本書を読めばそれが分かる。例えばある時、たとえ総監督というポジションにいようとも自分ひとりではすべてのメンバーひとりひとりと関係を結び全体を指揮するのは無理であると考える。そして自分に課したその課題をそれぞれのチームリーダーに仕事を「任せる」ことで解決させるにいたる。そう、まるで「経営者」のようなのだ。「走りながら考える」そして学んだことをひとつひとつ自分自身の教訓にしてゆく。気に入った一節を最後に紹介します。

ー「やばい」と思えたら、「まだいける」
「できないこと」は努力しだいで「伸びしろ」になると思うんです。
弱いからこそ、強くなれる。凡人はつよいです。(p133) (2016年04月05日)
ボクたちはみんな大人になれなかった
燃え殻/著
新潮社
税込価格  1,404円
 
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すごい・・。感動したヨ!誰かに明るく話す気にはなれないけど。
おすすめ度:
読み終えてしまうと寂しくなるかもと思わせるような小説。なんでもツイッターで配信されたものがカタチになったということ。童貞で、ベルコンに乗ったエクレアをただ詰め込むだけという工場勤めをしている主人公。「社会の数にカウントされてなかった(本文)」不甲斐ない感じの青春時代に求人情報誌の文通欄を通じて容貌のさえない、いわゆるブスである一つ上の女性と出会う。「好きな人ってなんなの?って思って生きてきた」といとも簡単に口にする彼女を主人公は好きになる。ラブホテルの浴槽に浸かりながら地球の絶滅への願いをため息交じりに話せる、本物の自分をさらけ出せる関係。著者が想いを必要以上にこめていると読者から見破られることのない飾り気のないそれでいて滴るような情感に溢れた言葉たちで綴られている。小沢健二であるとかWAVE(昔あったレコード店)とかホットドックプレス(雑誌)とか、ツイッター、恋するフォーチューンキッキー・・・等々の時代を感じさせるアイコンとして機能する固有名詞が全編に散りばめられていて、その時代を通り過ぎた主人公と同じ年代の読者には思い入れが持ちやすく他の世代よりも高い共感度を持つかもしれない。主人公の青春ははかなくて寂しいものだが、読者に正直さゆえになんとも言えない安心感を与えるし、まずそれは主人公を支える世界でたったひとつの揺るぎない愛が描かれているからだろうと思う。時の流れが人の外見・立場を変えるがその一方で内面を変えないと仮定したら、その真実を凡庸でない説得力で物語は放つというより洩らす。夕暮れの美しい光景が物語に置き換えられたような読後感。せっかく才能に恵まれいるのになんだか全部出した、という感じだと思いました。騙されているとしたらそれはそれで嬉しいです。
(2017年09月30日)

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