• 本

斜陽

改版

新潮文庫

出版社名 新潮社
出版年月 2003年5月
ISBNコード 978-4-10-100602-4
4-10-100602-4
税込価格 374円
頁数・縦 244P 16cm
シリーズ名 斜陽

書店レビュー 総合おすすめ度: 全4件

  • この本は、戦後の貴族が没落していく様子と、その貴族である主人公が妻子を持つ男に恋をする様子が書かれています。作中には貴族としてのプライドと葛藤する母や周りの人に混じろうと懸命に努力する弟など、登場人物の一人一人の心情が深く書かれており、とても胸を打たれる本です。

    (2023年7月3日)

  • 太宰治 表現力の凄さ

    この本を読んで私は、母の美しさと強さそして子供に対する愛情の深さを見ることができました。
    世間知らずの娘と、麻薬中毒で戦場から帰ってきた息子を、もうこのままでは生活が出来なくなるのを知りながら、なんとか3人での生活をする様子が描かれており、とても印象に残りました。
    戦後の日本が話の舞台になっていますが、混乱の中での生きる事への辛さや醜さが上手く表現され、特に直治が、どんどん壊れていく所に、私はなんとも言えない切なさを感じました。(平)

    (2009年6月25日)

  • 太宰治作品の中で一番おススメでしょうか。

    太宰治は青春時代にかかる”はしか”のようなものだと聞いたことがあります。そう、誰もが一度はかかるもので、それは若いときの方がいいと。それは、そこを通過することによって、生きるための免疫ができるからだとも捉えることもできるかもしれません。太宰治の作品は多くが、自らの破滅に向かって進むものが多く、ある人には毒になり、またある人には苦い薬にもなる。そんな感じがします。私も例に漏れず”太宰治病”にかかって抜け出すのに苦労した口です。この『斜陽』で大きな衝撃を受けたのがその始まりだったかもしれません。没落した華族を取り上げたこの作品。今でも印象に残るのは、”母”がスウプ(本文より)を飲むのに、スプウン(本文より)を口に直角になるように持っていき、さらさらと流し込む。そんな冒頭のシーンです。その情景が目に浮ぶようです。ちょっと独特な表現が、この作品の重苦しさを和らげている気がします。私が読んだそう多くない太宰作品のなかで秀逸の作品だと思います。

    (2009年6月24日)

  • 太宰治 生誕100年

     太宰治 生誕100年だから、何か話題になっているから読んでみるのもいい。読書はそこから始まるのです。
     太宰作品には、重い、暗いイメージはありませんか?この本に登場する弟や小説家は作者そのものであり、自分の人生を書き写したように思えます。
     読後、登場人物に対する感想は人それぞれ受け止め方に差が出る作品のようですが、太宰治は、こんな人だったんだろうなと想像できる本だと思います。

    (2009年6月19日)

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おすすめコメント

「僕は恥ずかしさのために死にそうです」。カッコよく、堕ちていくのも悪くない。破滅への衝動を持ちながらも“恋と革命のため”生きようとするかず子、麻薬中毒で破滅してゆく直治、最後の貴婦人である母、戦後に生きる己れ自身を戯画化した流行作家上原。没落貴族の家庭を舞台に、真の革命のためにはもっと美しい滅亡が必要なのだという悲壮な心情を、四人四様の滅びの姿のうちに描く。昭和22年に発表され、“斜陽族”という言葉を生んだ太宰文学の代表作。