• 本

ヴィヨンの妻

改版

新潮文庫 た−2−3

出版社名 新潮社
出版年月 2009年3月
ISBNコード 978-4-10-100603-1
4-10-100603-2
税込価格 539円
頁数・縦 206P 16cm
シリーズ名 ヴィヨンの妻

書店レビュー 総合おすすめ度: 全3件

  • 太宰のおもしろさ

    太宰治が生まれて100年ということは、もちろん物語の時代設定は
    著者が生きてきた時代を投影しているはずだ。
    しかし、読み進めてみると実に現代であり、身近で新鮮な気持ちにさせられるのはなぜだろう。
    この『ヴィヨンの妻』のおもしろさは、私たちの見て見ぬ振りをしている
    日常の潜在的な部分を、洗練された文章術によって、
    まるで、目の前に映像が見えるがごとく、細部に渡って実にうまく表現されていることではないか。
    短編集であるが、各篇、長編的な重みを含んだ物語である。

    (2009年6月26日)

  • ユーモア小説の名手

    「とにかくそれは、見事な男であった。あっぱれな奴であった。好いところが一つもみじんも無かった。」と、太宰治ならではの切り口で始まる「親友交歓」小学校時代の同級生(親友)が、ありったけの無礼・無作法で主人公を振り回したあげく最後のオチで加害者だったはずのこの(親友)が一転、被害者になりすます!(極度の被害妄想)こんなコントの様な展開に今までの太宰治のイメージが覆る人もきっと多いはず!太宰といえば「暗い」「重い」といった固定観念がありますが、「人を喜ばせることが、何よりも好きであった!」という太宰治は、こうゆうユーモア小説の方が天才的な力を発揮していた!と思わせてくれる作品です。

    (2009年6月26日)

  • こんな男は願い下げだ!!

    私がヴィヨンの妻ならこんな男は願い下げだ!!そう言ってこっちから三行半をたたきつけてやろうと思うが、古き良き時代と言ってしまえばそれまでの、何も無い時代が舞台であったがためのお話だよね。こんな時代だったから優男がもてたのだろうか???今ならこんな男は珍しくも無い。そしてやっぱり、これもどこかが太宰本人なんだろうなあ。としみじみ感じたお話でした。

    (2009年6月19日)

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商品内容

要旨

新生への希望と、戦争を経験しても毫も変らぬ現実への絶望感との間を揺れ動きながら、命がけで新しい倫理を求めようとした晩年の文学的総決算ともいえる代表的短編集。家庭のエゴイズムを憎悪しつつ、新しい家庭への夢を文学へと完璧に昇華させた表題作、ほか『親友交歓』『トカトントン』『父』『母』『おさん』『家庭の幸福』絶筆『桜桃』、いずれも死の予感に彩られた作品である。

おすすめコメント

妻、女……それが無理なら、せめて人として生きたい。新生への希望と、戦争を経験しても毫も変らぬ現実への絶望感との間を揺れ動きながら、命がけで新しい倫理を求めようとした晩年の文学的総決算ともいえる代表的短編集。家庭のエゴイズムを憎悪しつつ、新しい家庭への夢を文学へと完璧に昇華させた表題作、ほか「親友交歓」「トカトントン」「父」「母」「おさん」「家庭の幸福」絶筆「桜桃」、いずれも死の予感に彩られた作品である。

著者紹介

太宰 治 (ダザイ オサム)  
1909‐1948。青森県金木村生れ。本名は津島修治。東大仏文科中退。在学中、非合法運動に関係するが、脱落。1935(昭和10)年、「逆行」が第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。この頃、パビナール中毒に悩む。’39年、井伏鱒二の世話で石原美知子と結婚、平静をえて「富嶽百景」など多くの佳作を書く。戦後、『斜陽』などで流行作家となるが、『人間失間』を残し山崎富栄と玉川上水で入水自殺(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)