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お伽草紙

改版

新潮文庫 た−2−7

出版社名 新潮社
出版年月 2009年3月
ISBNコード 978-4-10-100607-9
4-10-100607-5
税込価格 737円
頁数・縦 410P 16cm
シリーズ名 お伽草紙

書店レビュー 総合おすすめ度: 全2件

  • リメイクっておもしろいか?疑問を感じたらこれを読んで!

    昨今映画でもTVドラマでもリメイクばかりが目につきます。同じ話をもう一回やってどうするの?なんておもっているあなたには太宰治がおすすめです。
    たとえばこの「お伽草紙 」にとり上げられているのはどれもおなじみの話ばかり。なにも太宰がリメイクすることはなかったと思います。おはなしもラストが変わっているといったこともなくもとのまんまです。
    ところが心の奥底、暗いところを描きたいなんていう太宰にはお話がハッピーエンドかどうかに関係ないんです。たとえば、いいことをしたから、いい爺さん、ではないでしょ?ひとのため良かれと思ってつくす人、でなきゃ。波乱万丈の展開よりも、その時々でどんなに心がゆれ動いたか。
    つまりストーリーなんて飾りです。偉い人にはそれがわからんのです。
    もちろん原作を選んだ羅生門はもっとおもしろい。これが気に入ったら次はぜひ羅生門を。

    (2009年6月25日)

  • センスある解釈に脱帽

    今年生誕100年を迎えることで、いろんな場で注目され取り上げられている太宰治氏。その作品は全体的に暗い・気難しいイメージが強いですが、数多い作品の中には、意外とユーモアあふれるものもあるのです。今回紹介したいのはこの『お伽草紙』です。父が防空壕の中で、幼子に絵本を読んで聞かせる設定なのですが、この父が物語を自分なりの解釈で、おもしろおかしく脱線しまくりで語るのです。語られるのは「瘤取り」「浦島さん」「カチカチ山」「舌切雀」。どれも名作ですが、登場人物や動物の性格をこと細かく分析し、その性格ゆえの失敗であったとか当然の報いであったとか、ユーモアの中にも皮肉が見え隠れしています。子どもに読んで聞かせるには、夢がなく少し現実めいた気がしますが、戦時中の作品であるためか、防空壕の中で語られるという設定の前では、現実の方が大事だったのかもしれません。「もっとお話聞かせてー!」それは叶わぬ夢なのですね。

    (2009年6月25日)

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おすすめコメント

ムカシムカシノオ話ヨ。瘤取りじいさん、浦島太郎、カチカチ山。太宰があの名作を徹底解剖、大人を唸らす残酷民話集。困難な戦争期にあって、深く芸術世界に沈潜することで時代への抵抗の姿勢を堅持し、日本文学の伝統を支えぬいた太宰中期の作品から、古典や民話に取材したものを収める。“カチカチ山”など誰もが知っている昔話のユーモラスな口調を生かしながら、人間宿命の深淵をかいま見させた「お伽草紙」、西鶴に題材を借り、現世に生きる人間の裸の姿を鋭くとらえた「新釈ゥ国噺」ほか3編。