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秋の四重奏

lettres

出版社名 みすず書房
出版年月 2006年5月
ISBNコード 978-4-622-07216-4
4-622-07216-5
税込価格 3,080円
頁数・縦 242P 20cm

書店レビュー 総合おすすめ度: 全1件

  • 舞台はロンドン、定年を間近に控えた独身の男女四人を描いた長編作品である。この四人、同じオフィスで働きながらも、友人とまではいえないほどの距離をおいた関係を保ちつつ、平凡な日常の風景が綴られる。この小説に描かれる職場の同僚という関係に最もリアリティを感じるのは、とりもなおさず現代の日本社会なのかもしれない。なぜなら、俯瞰してみればただの単調な小説にすぎない作品が、これほど日本の読者の心を捉えることに、読書子自身納得し、また、この小説の価値に思い至ったのであるから。(のり)

    (2008年3月17日)

商品内容

要旨

ロンドン、全員ひとり暮らしの男女が四人。共に、同じ会社に勤め、定年間近の年齢である。まず女性二人が退職する。そのうち、マーシャがやがて亡くなり、レティは老後の生活になんとか順応しようと努める。男たち、エドウィンとノーマンはまだ勤めているが、まもなく会社を去ることになるだろう。こうした四人の平凡な日常風景―職場のやりとりや昼食、互いのささやかな思いやりやすれ違い、ヴァカンスやクリスマスの計画、遺産相続などが淡々と描かれるだけで、何であれ、劇的な事件には発展しない。マーシャの死さえも日常生活の中の一齣にすぎない。これら凡庸な四人のありふれた「老い」が、この味わい深い上質のユーモアに満ちた「コメディ」の核心をなしている。われわれはここで、静かに奏でられた、ふつうの現代人の、孤独な「生と死」の意味あるいは無意味に向き合うことになる。温厚かつ辛辣な作風によって、「現代のオースティン」という声価を得た英国作家の代表作。

出版社
商品紹介

同じ職場で働く定年間近の男女4人の人生の秋=それぞれの日々を淡々と描く。現代人の孤独と死を浮き彫りにする佳編。

著者紹介

ピム,バーバラ (ピム,バーバラ)   Pym,Barbara
1913‐80。英国シュロプシャに生まれる。オクスフォード大学在学中に第一作『なついた羚羊』を執筆(50年刊行)。海外での軍の仕事の後、母親の看護のため故郷に帰る。母の死後、ロンドンの国際アフリカ研究所に勤務しながら、小説を発表。61年までに6作を発表し、“20世紀のオースティン”という声価を得たが、以後文壇から姿を消す。しかし77年、TLSのアンケートで過小評価とされたのをきっかけにカムバックを果たし、没後その文学的評価はいよいよ高い
小野寺 健 (オノデラ タケシ)  
1931年横浜に生まれる。1955年東京大学文学部英文科卒業、1957年同大学大学院修士課程修了。現在日本大学教授、文化学院講師、横浜市立大学名誉教授。英文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)