商品内容
要旨 |
夫武田泰淳と過ごした富士山麓での十三年間の一瞬一瞬の生を、澄明な眼と無垢の心で克明にとらえ天衣無縫の文体でうつし出す、思索的文学者と天性の芸術者とのめずらしい組み合せのユニークな日記。昭和52年度田村俊子賞受賞作。 |
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富士日記 上巻
武田百合子/著
中央公論社
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BK
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夫である作家・武田泰淳との富士山麓での暮らしを、瑞々しい文体で綴った日記。 難しい用語を知らないから、自分が話すときの言葉でしか私は書けない──。 “天衣無縫の文章家”と称えられる著者が、澄んだ眼でとらえた愛すべき生活記録!
出版社・メーカーコメント
夫・武田泰淳と過ごした富士山麓での十三年間の一瞬一瞬の生を、澄明な眼と無垢の心で克明にとらえ天衣無縫の文体でうつし出す、思索的文学者と天性の芸術者とのめずらしい組み合せのユニークな日記。昭和52年度田村俊子賞受賞作。
内容抜粋
本書「昭和四十年七月」より
今朝がた、湖の裏岸をまわって鳴沢へ戻るとき、河口湖にしては、大へん水が澄んでいて、釣をする人も絵のようにしずかに動かない、うっとりするような真夏の快晴だった。<こんな日に病気の人は死ぬなあ>と思いながら車を走らせていたら、梅崎さんが死んだ。涙が出て仕方がない。恵津子夫人に弔電を打ちに鳴沢村に下る。今朝、勢よく、葉書を買ったついでに、東京からの転送や速達の郵便物について問合わせたばかりの郵便局にまた行く。私が涙を垂れ流しているものだから、局の人は「奥さん」と言ったきり、びっくりして顔をみている。「人が死んだものだから」と言って手を出すと、黙って頼信紙をくれた。