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歴史人口学で見た日本

増補版

文春新書 1363

出版社名 文藝春秋
出版年月 2022年5月
ISBNコード 978-4-16-661363-2
4-16-661363-4
税込価格 990円
頁数・縦 242P 18cm
シリーズ名 歴史人口学で見た日本

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要旨

人類の未来を語れる「知の巨人」の一人に、エマニュエル・トッド氏がいる。同氏の肩書きの一つは「歴史人口学者」だが、歴史人口学という学問分野は、日本ではあまり馴染みがないかもしれない。この分野の日本における嚆矢(こうし)となったのが、国際日本文化研究センターの速水融(あきら)名誉教授(1929-2019)である。本書では、日本の歴史人口学のパイオニアである速水融氏が、自らの研究人生を振り返りながら、具体的な研究事例などを交えて、歴史人口学という学問分野のエッセンスを伝える。歴史人口学とは、国勢調査等でデータが整備される近代より前の人口動態や人口静態を分析する学問。速水氏は、江戸時代の濃尾地方の人口データを分析することで日本人の勤勉さのルーツを明らかにし、産業革命に対する「勤勉革命」を提唱した。エマニュエル・トッド氏は、自著『家族システムの起源』(藤原書店)の中で日本について詳細な分析ができたのは、速水氏が創始した“速水学派”の研究のおかげと語っているという。速水融氏は、日本常民文化研究所研究員、慶應義塾大学教授、国際日本文化研究センター教授、麗澤大学教授を歴任。2009年文化勲章受章。
※要旨の情報〔社会情勢、著者経歴など〕は、作成日当時のものです。
以降内容が変わっている場合があります。[要旨作成日:2022年7月5日]

商品内容

要旨

留学先の欧州で教区簿冊を利用した「歴史人口学」(結婚年齢、家族構成など、ミクロの人口研究)に出会った著者は、帰国後「宗門改帳」を使って同様の研究を開始し、江戸期庶民の暮らしぶりを活写。「家族」と「人口」から見た「新しい日本史」。

目次

第1章 歴史人口学との出会い
第2章 「宗門改帳」という宝庫
第3章 遠眼鏡で見た近世―マクロ史料からのアプローチ
第4章 虫眼鏡で見た近世―ミクロ史料からのアプローチ
第5章 明治以降の「人口」を読む
第6章 歴史人口学の「今」と「これから」
特別附録 歴史人口学―成立・資料・課題

出版社・メーカーコメント

「日本の多様性」を見事に明かした名著!磯田道史氏「先生と出会わなかったら、私の学者人生はなかった」(磯田道史氏)エマニュエル・トッド氏「別格の素晴らしさ。この偉大な学者の技のすべてが詰まっている」 著者の速水融氏は、慶応義塾大学、国際日本文化研究センターなどで教育・研究に携わった経済史家で、「日本における歴史人口学のパイオニア」。仏歴史人口学者のエマニュエル・トッド氏も、「日本の歴史人口学の父」と称えている。 速水氏は1960年代に欧州に留学。当時、キリスト教会の洗礼、結婚、埋葬の記録簿(「教会簿冊」)を利用して、マクロの人口研究ではなく、結婚年齢、家族構成など、ミクロの人口研究(=歴史人口学)が活発に行われていた。これを見た速水氏は、江戸期の「宗門人別改帳」を使って、同様の研究が可能だと直感し、帰国後直ちに本格的な研究を開始(ちなみに結婚年齢、生年没年、家族構成までを記録した近代以前の史料が残っているのは、世界的に見て稀なことで、こうした史料は欧州と日本にしかない)。 『近世農村の歴史人口学的研究』(1973年)では、人別帳から一軒一軒、一人一人の記録を洗い出し、信州諏訪地方で直系3世代世帯からなる近世的世帯が形成される過程を明らかにした。また、詳細な人口統計の作成を通じて、18世紀中期に始まる人口停滞が、高い死亡率ではなく、出生率の低下に原因があることを示した。 『近世濃尾地方の人口・経済・社会』(1992年)では、詳細な個人の追跡調査を通じて、徳川時代にも農村と都市の間で恒常的な人口移動があったこと、農民の出稼ぎ先の変化から徳川中期以降、経済構造に変化があったことを示唆。 また速水氏は、世界史的なスケールで日本経済史を描き、古代文明の周辺に位置する西欧と日本の歴史過程は、「封建社会」を経験する点で共通すると指摘した。 本書は、速水氏の長年にわたる仕事のエッセンスをコンパクトにまとめたもので、「歴史人口学」の最良の入門書。と同時に、「歴史人口学で見た新しい日本史」。速水氏が学士院の紀要に寄稿した論文を新たに加えた増補改訂版。

著者紹介

速水 融 (ハヤミ アキラ)  
1929‐2019年。慶應義塾大学経済学部卒業。経済学博士。日本常民文化研究所研究員、慶應義塾大学教授、国際日本文化研究センター教授、麗澤大学教授を歴任。専攻は日本経済史、歴史人口学。2009年文化勲章受章。日本学士院会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)