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神奈川大学生協書籍部のレビュー |
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掲載レビュー全60件 |
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擬人化共産国と巡る、社会主義グルメの旅 | ||
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東西冷戦時代も昔の話。勿論今でもそれを標榜する国もありはすれども、 身近なところを強いて挙げれば今やネット上のミームめいた何かでしか もはやお目にかからなくなった社会主義。本書はそんな社会主義政権下の 「食事」にスポットを当てた一冊。 社会主義全盛期に名を馳せた2つのお国、すなわちソヴィエト連邦と ドイツ民主共和国(東ドイツ)の擬人化キャラクターを案内役に、 日常の食事や権力者のグルメ等が読みやすいコミックで説明される。 各エピソードの終わりには簡単な作り方の解説付という親切(?)設計。 前掲2国の名前から我々がついつい想像するであろうメニューとは ひと味違った品々が新鮮で、往時のドロドロした事情の解説も相まって 楽しくも複雑なお味が楽しめる。 (2023年03月08日) |
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単なる暴露本にとどまらない、プロの心が垣間見れる一冊 | ||
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セレブ・シェフとして一世を風靡したアンソニー・ボーデインが 美食の原体験からレストラン業界への参入と小さな成功、挫折と そして「荒野の日々」と題されるどん底の時代を経てシェフと なるまでの体験と、そこから見たレストラン業界の裏側に迫る一冊。 レストランで何をいつ「食べるべきでない」のか、キッチンでは 一体どんな人がどんな事をやって料理を作るのか、プロはいかにして 料理をするのか、そんなレストランの裏事情が独特の語り口で描かれる。 その痛快で小気味よい叙述は読者を引き込んでやまない。 他方で、本書を単なる暴露本や面白本で終わらせてしまうのは勿体ない。 不意に語られる、ろくでもない上司にこき使われ、同僚には背中を撃たれ、 疲弊の谷間を安い賃金で彷徨うような不遇に日々をなんとか生き残る方法。 高い意識と料理業界への深い愛情を伴って随所に示されるそのアドバイスと その時に垣間見えるシェフの人柄が、この本を単なる暴露本の類いから ひとつ高い所に昇華させているように思える。 (2023年03月08日) |
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「食べる」にフォーカスした海の図鑑 | ||
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版元(出版社)の名の通り、日本の南は鹿児島からお届けする、 海辺を味わうための図鑑である。様々な野生の生物を取っては食べて というサイトが散見される昨今、「またフジツボとかカメノテでしょ」 という先入観を飛び越え、実に136種もの海辺の生物を、調理方法は もちろん採取法や下拵えの方法と共に紹介してくれる。 読んでみるとアオサに始まり、その後も「こんなにたくさん磯には海藻が 生えてたのか、そして食べられるのか」という具合に海藻が紹介され、 次にはやはり同じ位のボリュームで貝類のページが続く。そこには神奈川では 見かけない南方系の貝があったりと、版元の地域色を感じさせるのも面白い。 気になるのは毒魚の紹介やカキ類の採取喫食について、若干無頓着な気が しないでもない点、また、漁業権については地域による差異も大きいところ、 それらへの案内がもう少しあっても良いのではと思える点か。しかしそこまで 調べたが最後、きっと本書は読者を海へ連れてってしまうのではなかろうか。 (2016年12月21日) |
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あぁ、この人は本当に魚が好きなんだ | ||
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魚好きが昂じて、かつては神奈川県は三浦半島の入口、逗子に料理店を 構えるまでに至った著者が綴る魚エッセイ集である。我々に馴染みの魚から、 釣り人や漁師しか知らないような魚にまで、ただ「こうすると旨い」だとか 「こういう食べ方が通だ」というような表面的な物を超えて、著者と その魚との出会いであるとか、全国津々浦々でその魚がどの様に親しまれて いるのか、そしてその魚を取り巻く環境まで広く著者の一家言が及ぶ。 1種類の魚について2ページほどが割り振られており、味わい深い挿絵も 助けて、とにかく読み進めるほどに引き込まれてしまう一冊である。馴染みの 魚には親しみを感じさせ、未知の魚についてもとにかく興味を沸かせてくれる。 どの魚にも値段で差を付けなかったというまえがきの言葉からも伺える通り、 本当に魚が好きな人が書いているのだ、と嬉しくなる。 熱狂的でなくても、魚が好きな人、海や川が好きな人には是非手に取って 頂きたい。魚と海と、時々川をずっと近くに感じさせてくれるような一冊。 (2016年10月24日) |
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禅寺の息遣いが感じられるような一冊 | ||
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日本曹洞宗の大本山は福井県の永平寺に安居して、役寮にあった著者が綴る、 「中から見た永平寺」ドキュメンタリーともいうべき一冊である。様々な 書誌に投じられた著者の随筆を、四季それぞれをテーマに再構成した内容と なっている。 厳しい、時に苦行じみた趣さえ感じさせるいわゆる「修行記」と異なり、 著者は役寮という若干高い位置から永平寺の四季折々を我々に伝えてくれる。 そこには、我々がイメージするよりもはるかに人間らしい、純粋さすら 感じられるような雲水の人間模様や、それを見守る七堂伽藍の佇まいが 見て取れるようである。他方で修行や寺院の在り方を案ずる著者の所論は 時として、まるで警策のように我々の生き方在り方を問うてくるように感じる。 ...と書くと、一見堅苦しそうに思われてしまうかもしれないが、文体は つとめて平易であり、各節が丁度よい長さに区切られていて気軽に読む事が できる。お寺やお坊さんに興味がある人にはぜひ手に取って頂きたい一冊。 (2016年10月14日) |
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港町から農山漁村に及ぶ、神奈川は山海の食に迫る | ||
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日本全国を網羅する農文協さんの「日本の食生活全集」のうちの1冊である。 海もあれば山もあり、港町もあれば古都もある...というのは神奈川県知事 黒岩氏の言だが、そんな神奈川県の食事を西洋文化の上陸地横浜に始まり、 県央の田園地帯や県西県北の山岳地帯まで、聞き書きによって伝えてくれる。 内容自体は昭和初期の物となっているので、地域差が平均化されつつある 現代においては、些かステレオタイプな印象を受けるかもしれないが、 それが却って、神奈川の地にこれだけ多彩な食文化が根付いていたのかと 驚かせてくれるものとなっている。 項を読み進める毎に、自身が足を運んだ地域であれば尚の事、その土地に かつては、或いは今も根付いているかもしれない食文化と、そこに込められた 先人たちの工夫が思い起こされる。食べる物の視点から神奈川を知る本として、 或いは横浜県という印象を払拭させる本としておすすめしたい。 (2016年09月26日) |
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釣りの原点、原風景を読む。 | ||
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小説家としても名高い開高健氏が釣りの体験談を、あるいは餌のミミズについて、 あるいは鯉やタナゴ、またあるいはバイエルンのカマスやマスについて綴る。本書の 出自を知ることなく本書を手にした当初は、「しまった古い本だ。これじゃ釣りを する上で参考にならないじゃないか」と不遜な事を考え、暫く積んでしまっていたが ひとたび開いてみると、氏の軽快な文章は拙レビュー担当を引き込んで止まず、 あっと言う間に読了に至らせてしまった。 本書は1969年に出版された同名書に加筆し、78年に文庫化したものだが、驚く べきはその内容にその時々の時代を感じさせることはあっても、釣り自体には決して 古さを感じさせない点である。そこには何か、古今東西すべての釣りに通ずる何か 原点のようなものが、そして本書に書かれる釣りの風景には釣り人すべてが思い 描く釣りの原風景があるような、そんな気がしてならない。 本書を開き、読み進めるだけで頭の中はたちまち釣り場に、そして我々はそこで 釣りをせずにはいられない。釣り場に潜む大物のように、本書は我々を魅了する。 (2014年06月28日) |
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「なぜ」美味しいのかを紐解く、キッチン・サイエンス | ||
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我々日本人の食卓にもはや欠かす事のできない食材、魚。その宗とするところは 食材個々の持ち味にあり、そして旨味にある事は周知の事実だろう。しかしながら、 その旨味がどこから来ているのか、なぜ旨いのかを知る機会となると限られてくる。 本書は日本人にとって親しみ深い魚種にスポットを当て、その魚の持ち味の根源、 旨味の根源を科学的に分析し、わかりやすく解説する一冊である。腹の膨らんだ アナゴはなぜ良くないか、料理法に応じたイカの選び方と旨味の性質の違いなど、 高級感漂う魚種からきわめて日常的な魚種まで、より深く魚について理解し、より 素材の良さを引き出して料理をする上での助けとなる内容が多く解説されている。 料理と科学というと、あたかも化学式や構造式を思い浮かべ、互いに相成れない 印象を抱く方もいるかもしれない。しかし本書はあくまでも平易な表現につとめ、 科学を通じて食材のよさをより一層料理へと昇華させる手助けをしてくれる一冊と 言える。実際に料理中に開くには読み応えがある本なので、美味しそうな魚料理を 頭に思い浮かべながらじっくりと読んでいきたい。 (2014年05月31日) |
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手元に置いておきたい一冊 | ||
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ホームセンター等で苗木がよりお手軽に入手できるようになった今日この頃、 観賞用の草花に限らず、庭で、あるいは花壇で実の成るものを…と果樹を育てたく なる人も多いのではないだろうか。拙レビュー担当もご多分にもれず、「どうせなら 食べられるものを…」という事で場所が空けば果樹を植えている有様である。 しかし、植えただけで育つかといえば、確かにある程度頑丈で、放っておいても 育ってくれる木もある反面、しっかり面倒を見なくては育たない木や、より多くの 結果を望もうとすれば必然的に細やかな世話が必要となる木もあり、木だから楽とも いえないのが事実である。 本書は、そんな庭で育てる果樹について、栽培法の基本に始まり、後半では定番と いえる果樹33種の種類ごとの育て方をイラストを交えてわかりやすく解説している。 ベリー類やかんきつ類など、有名どころは一通り紹介されており、また、大判で 内容も読みやすい作りとなっている。実の成る庭木いじりのための一冊として本棚に 常備しておきたい一冊である。 (2014年05月31日) |
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驚きの山菜の世界への案内書 | ||
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山菜と聞いて我々が思い浮かべるのはどんなものだろうか。あるいはゼンマイ、 あるいはワラビ…と、いかにも山菜然とした一群。観光地の土産物屋であったり、 ちょっと品揃えに自信ありげなスーパーの店先に並ぶような物を想像するのが 関の山…といった所ではないだろうか。 本書は、これまでに拙レビューで度々紹介してきたフィールドガイドシリーズの 特徴とも言える美しい写真と読み物としても楽しめる、平易な説明はそのままに、 山菜の世界の広さを読者に伝え、その驚きの世界へと案内をしてくれる一冊である。 本書では、様々な山菜がその分布によって町なか、郊外、海辺…と章を分けて紹介 されており、特に町なか、郊外の山菜を取り扱う章では、普段見慣れた、あるいは どこかで見かけたことのある山野草が紹介され、「こんなものでも食べることが できたのか!」と驚かせてくれる。 奥が深く、毒草という罠もある山野草の世界、経験なしに本書一冊で渡るのは些か 勇気が要るかも知れないが、とかく読み物としても、興味深く楽しめる一冊である。 (2014年05月31日) |
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知られざる魯山人の意外な一面 | ||
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あるいは美食に、あるいは陶芸に、またあるいは…と多芸を極め、現代においてもなお その名の高い北大路魯山人。料理を芸術の域にまで高めた彼の功績は、今日発行される 数多の書誌がそのメニューを探り、あるいは再現を試みている事からも明らかであろう。 他方で、料理であったり陶芸であったり、あるいは書であったり、芸術家としての 側面を離れた、より個人的な側面、いわば人としての魯山人を知る人は少ないのでは なかろうか。本書は魯山人の斯様な側面、すなわち料理や陶芸といった各論的な領域を 離れ、あるいは彼の側近であった人物、あるいは親類縁者の証言などから魯山人の 生い立ちや来歴をひたすらに綴った一冊である。 読み進めるにつれて、彼のややこしく、時としてきわめて攻撃的な一面、取り様に よってはとんでもないろくでなしとも思える一側面が明らかになり、ただ料理などの 面だけを見ていた読者は驚きとともにその魯山人観が覆されることは必至であろう。 しかしながら、同時に、それでもなお人を曳きつける魔性の様なものを感じられずには いられない。複雑な読み味ではあるが、魯山人に関心を抱く方には一読をお薦めしたい。 (2014年05月24日) |
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目を見張る極彩色の世界 | ||
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何度か拙レビューページで紹介させていただいている小学館のフィールド・ガイド シリーズの一つ。順番は前後するが、本書は「淡水編」と対を成す「海水編」である。 熱帯域から寒帯域に至るまで、日本近海に分布する魚を、他のシリーズ同様に全て 美しい写真で紹介しているのが特徴である。 親しみやすさを強く感じた「淡水編」とは対照的に、「海水編」ではその魚たちの ダイナミックさや、鮮やかな極彩色の世界に驚かされると共に、我々が「海」と聞いて 想像していた範囲の小ささを実感させられる。他方で、海というあまりにも広大な領域を 対象としているためか、逆に身近な魚について調べてみようとした時や、一つの魚種に ついて詳しい説明を求める場合には些か不足を感じてしまうのは残念な点である。 しかし、前者については本シリーズの「海辺の生物」を併せて読む事である程度の フォローが図れる点もあり、欠点以上に海の魚について広く知ることが出来る事は メリットが多いように思える。淡水編、海水編そして海辺の生物と、3冊まとめて 魚好きの人にお勧めしたい。 (2014年03月29日) |
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近現代の歴史の間に消えた一衣服の物語 | ||
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以前に拙レビューで取り上げたパンツ本(ISBN:978-4-02-259800-4を参照されたい。) に続いて今回はブルマー本である。書棚で見かけた時は単なる好奇心、興味本位で レジに運んでいった一冊だが、拙レビュー担当の陳腐な購入同期とはまったく裏腹に、 あくまでも学術的な観点から、極めて冷静にブルマーという衣服の出自から、それが いかにして日本に進出し、そして消えて行ったのか、その背景にあった物とは何かを 5名の共著によって考察する内容となっている。 ブルマーと聞いて何を想像するか、あるいはそれをどう捉えるかは、恐らく当人の 性別であったり、または年齢層によって大きく異なる所だろう。しかし本書を読んで 見えてくるのは、我々が一般的に捉え、または考えうる以上に重要かつ壮大な、 「女性」というテーマである。女性の解放を求めて考え出されたはずのブルマーは 何故、当の女性たちの運動によって日本社会から消えて行ったのか、その物語に迫る。 きわめて真面目な内容となっており、ともすれば社会学特有の用語や概念に悩まされる 事もあるだろうが、前掲パンツ本に続く「ブルマー学」の参考書としてお勧めしたい。 (2014年03月29日) |
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「ひとり」のすすめ | ||
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ハードボイルドにありがちなフレーズをそのままタイトルにしたような本で、 一体どんな「男の美学」が散りばめられているのか、興味本位で手にしてみた。 「一流」である事に始まり、人生後半をどう生きるかという事に至るまで、いわば 一生をいかに孤独と共に付き合い、それを自身の糧とするかを記した一冊である。 レビューを書いている私自身、一流でもなければ人生後半を生きる身の上でも ない(そう信じたい)ので、果たして本書を適切に評価できるか不安な所もあるが、 「自立してひとりで活動できる」人間を孤独を通じて説かんとするする本書の所論には 大いに共感するところである。他方で、ひとりカラオケが何故か「寂しすぎる」として 批判されていたり、うつ病に関する記述において「ひ弱な人間がふえている」と 断じる等、些か主観が強すぎる印象を受ける記述が散見されたのは残念である。 しかしながら、「ぼっち」や「便所飯」等の用語が飛び交い、誰かと共にある事を 求める重圧が見え隠れする昨今の大学おいて、そしてその大学生協の書棚にあって、 「ひとり」から何かを得る事を説く本書が持つ意味は大きいように思う。 (2014年03月20日) |
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世のパンツ好きに贈りたいパンツ学の決定版 | ||
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衣類の一種、平たく言えば一枚の布でありながら世の男共を魅了してやまず、 時には男を犯罪にまで駆り立てるパンツ。今日ではこれにまつわるおげれつ本には 事欠かないし、アニメなりテレビ番組なりでうっかりパンツが見えようものなら キャプチャ画像をネットにアップロードして大喜びする始末。 なぜ男はこんなにもパンツを喜び、そして女はそれを見られるのを恥らうのか、 本書はそんなパンツに纏わる価値観の誕生と変遷を日本におけるパンツ流入の歴史と 合せ、新聞記事や当時の小説、雑誌の記事など、膨大な量の資料を参考としながら 検証する。 当初はそもそも一般的ですらなかったパンツが現在のような価値を持つに至った 理由は何なのか、そこにはどんな社会的なムーブメントがあったのか。その謎は是非 本書を読んで明らかにして頂くとして、「馬鹿馬鹿しい」と一笑にふされそうな テーマについてあくまでも学術的に、真摯に接した著者に喝采を送り、その上で 「パンツ学」の決定版として本書を広くオススメしたい。 (2013年11月27日) |
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老舗ホテルを通じて紐解く横浜の歴史 | ||
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「神奈川県出身?ああ!横浜の人ですね!」という反応がネタとなるように その名を知られ、県内において中心的な役割を担うだけでなく、また、西洋文化の 上陸地点としても名高い横浜。そんな横浜の玄関口ともいえる横浜港に近く、 山下公園通りに建つ老舗「ホテルニューグランド」が本書の主人公である。 開国から関東大震災、第二次大戦から現在に至る横浜の歴史の中で、 ホテルニューグランドはどのような役割を担ってきたのか、そしてその中では どんなエピソードが生まれてきたのか。ホテルに宿泊した著名人はもとより、 黎明期のホテルを支えた人々、そして老舗となった現在のニューグランドを 支える人々に至るまで、本書はそこで紡がれてきた数多のエピソードを紹介し、 ホテルを通じて横浜の、時には日本の歴史の一側面を紐解くものである。 著者のホテルに、そして横浜に対する愛情が強く感じられる本文は、どこか ゆったりとした時間の流れを読者に感じさせ、その上でホテルという独特の 世界への興味を惹いてやまない。横浜の書店がオススメしたい横浜の一冊である。 (2013年11月27日) |
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川を生かし、川に生きた人々に感動。 | ||
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「職漁師」という言葉を聞いた事はあるだろうか。私はとある渓流釣りの本で 目にして以来、ただ単に「釣りがすごくうまい人」程度にその意味を解釈していたが、 それを良い意味で覆してくれたのがこの一冊である。 かつて山に入り、時には深山に小屋を築いて拠点とし、主に手製の毛鉤を使った 釣りで数十キロという膨大な量の渓魚を釣り上げ、それを背負って里に下りては 旅館などに卸して生計を立てる、職漁師と呼ばれた人々に焦点を当て、その生活や 漁具について紹介する内容となっている。 単に川から得るだけでなく、今のように環境保護が積極的に叫ばれるようになる 遥か前の時代にあって、時に川を守るために力を尽くした人々や、川と共に生き、 そこに独自の文化を築き、これを担った人々がいたという事実、そしてそんな彼らの 言葉は本書を読む我々の心を打ってやまない。釣りや山という趣味趣向を超えて一つの 尊い文化を、読みやすく疲れさせない文調で以て紹介する名著であり、いささか高額書 ではあるものの、少しでも興味を抱いた皆様には、強く一読をおすすめしたい。 (2013年10月02日) |
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良い意味でいろいろとおかしい | ||
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ネット上でとある画像を目にし、出所を探っていったらこのシリーズに当たって… というよくわからない経緯で手にするに至った一冊。失礼ながら、単にその画像が 面白かったという事と、絵が綺麗だったという動機で、「メイドネタかぁ」と月並みな 印象すら抱きながら開いてみたら色々とおかしい本だった…というのがこの作品。 母親の企みで、半ば売りに出されるような形で一流のメイドを養成する女子高に通う 主人公が、周囲に自身が男であるという事を隠しながら学校生活を送ったり、実習として 派遣される家の「お嬢様」のお世話をしつつ、ドタバタを演じたりという内容のお話。 …と書くと簡単なのだが、読んでみると男である事がばれないように主人公が痛々しくも ちょっとずれた努力をしていたり、ヒロインはヒロインで暴走しっぱなしだったりと、 とにかく全体的に勢いよく、濃い作品になっている。 露骨なネタも多かったり、そもそもの題材が男の娘だったりで、人を選ぶところも あるかもしれないが、良い意味でおかしい作品としておすすめしたい。 (2013年10月02日) |
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細かなネタが楽しい作品 | ||
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魔法の薬があると噂される調剤薬局、「馬放保険調剤薬局」で働く主人公、 馬放ラムは小学生のような外見を持ちながらその実26歳、そして本当に魔法の薬を 調剤できる魔女だった。 …魔女っ子というファンタジーなテーマでありながら、薬局と薬剤師という設定も 絡んで妙に現実的な感じを植えつけられるが、実際に読んでみるとこれが面白い。 独特のタッチでありながら可愛らしく安定感のある作画に、毎回どこかやたらと 細かいネタを散りばめてあったり、嫌味なくきわどいネタを仕込んできたりと、 4コマ然とした雰囲気でありながら飽きさせること無く楽しませてくれる作品である。 (2013年09月30日) |
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読者を引き込んでやまないサスペンスの決定版 | ||
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感染するとやがて体が石化して死に至る病、通称「メドゥーサ」から逃れる為に コールドスリープという選択肢を取った人類、再び彼らが目覚めた時にあったのは 確立されているはずの治療法ではなく、荒廃した世界と人々を襲うモンスターの 姿であった。やがて待つのはメドゥーサによる死か、あるいはモンスターによる死か、 前に進む事しかない状況下で、主人公カスミと6人の仲間は生きる為に脱出を決する。 映画化もされた岩原裕二氏の連載作品。かつて拙レビューでもご紹介した 『地球美紗樹』とは一転してダークな雰囲気のファンタジーサスペンスとなっている。 独特のタッチとテンポの良い展開は健在で、異変の原因は何なのか、いかにして彼らは 生を掴み取るのかといった謎や、アクションシーンでのよく動く作画もあいまって、 読んでいるうちに非常に引き込まれる作品となっている。 作品自体のクオリティも高く、また間延びすることなくシリーズが全6巻にキレイに 納まっていてムダが無いことも好印象。「おもしろいマンガない?」と聞かれたら 迷わずお薦めしたいシリーズの一つである。 (2013年09月30日) |
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