書店レビュー
総合おすすめ度:
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夏に味わいたい寂寥感
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おすすめ度
- すぐじ書店 (長野県長野市)
病院で死ななくても空襲で死ぬ。戦争が過激さを増し本土空襲も熾烈を究めてきた頃に九州のF市で行われた米兵の生体解剖に関与した人々の物語。当然ではありますが、戦時中の話がメインということもあり決して明るくはありません。医学の発展の為の生体解剖という建前のもとに、病院内での医者の出世争いや看護婦の個人的な当てつけや恨みといった様々な感情が手術室にカオスとして渦巻き、また物語の舞台が海に近い場所ということもあり随所で海や波が寄せたり引いたりするシーンが描写されていますが、それがまた不安を助長させ、読後はなんとも言えない寂寥感に。夏に読みたい1冊。
(2011年8月11日)
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おすすめ度
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商品内容
要旨 |
腕は確かだが、無愛想で一風変わった中年の町医者、勝呂。彼には、大学病院の研究生時代、外国人捕虜の生体解剖実験に関わった、忌まわしい過去があった。病院内での権力闘争と戦争を口実に、生きたままの人間を解剖したのだ。この前代未聞の事件を起こした人々の苦悩を淡淡と綴った本書は、あらためて人間の罪責意識を深く、鮮烈に問いかける衝撃の名作である。解説のほか、本書の内容がすぐにわかる「あらすじ」つき。 |
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