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経済成長という病 退化に生きる、我ら

講談社現代新書 1992

出版社名 講談社
出版年月 2009年4月
ISBNコード 978-4-06-287992-7
4-06-287992-1
税込価格 814円
頁数・縦 238P 18cm

書店レビュー 総合おすすめ度: 全1件

  • 久々の”大当たり”本である。はっきり言おう。本書は新書のレベルを超えている。われわれはまず最初に、この貴重な1冊を手軽に読むことの出来る幸運に感謝せねばなるまい。昨日、朝の散歩中に読むための本として、店晒しとなっていたものを何気なく手に取った。まさに僥倖である。さて、内容に移ろう。著者は経済成長は善、そしてそのこと自体が前提となっているいまの世相に疑いを提示する。切り込む分野は、正義、マスコミ、教育、雇用問題、国際社会及び人口問題、はてはリーマンショックから食品偽装事件まで、非常に多岐にわたる。しかし、本書の優れたところは、単なる懐疑論に終わらないところである。ところで、あまりにもゆっくりとそれは起こるため、個々の状態は認められるとしても、人間は変化の感覚それ自体は知りえない。このことは、マルセル・プルーストが主著『失われた時を求めて』のなかで触れていることだ。とすれば、われわれにとって必要なのは、原因の断罪による自己との切断ではないことはお分かりいただけよう。なぜなら変化そのものが知覚出来ない以上、その事件でわれわれが受ける印象というものは、特殊な一例にすぎないからだ。したがって、個

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    (2009年9月3日)

商品内容

要旨

金融危機は何を意味するのか?経済は成長し続けなければならないのか?なぜ専門家ほど事態を見誤ったのか?何が商の倫理を蒸発させたのか?ビジネスの現場と思想を往還しながら私たちの思考に取り憑いた病と真摯に向き合う。

目次

序章 私たちもまた加担者であった
第1章 経済成長という神話の終焉(リーマンの破綻、擬制の終焉
宵越しの金は持たない―思想の立ち位置
専門家ほど見誤ったアメリカ・システムの余命
経済成長という病
グローバル化に逆行するグローバリズム思想
イスラムとは何でないかを証明する旅
「多様化の時代」という虚構―限りなく細分化される個人)
第2章 溶解する商の倫理(グローバル時代の自由で傲慢な「市場」
何が商の倫理を蒸発させたのか
私たちは自分たちが何を食べているか知らない
街場の名経営者との会話
寒い夏を生きる経営者
ホスピタリティは日本が誇る文化である)
第3章 経済成長という病が作り出した風景(利便性の向こう側に見える風景
暴走する正義
新自由主義と銃社会
教育をビジネスの言葉で語るな
テレビが映しだした異常な世界の断片
雇用問題と自己責任論
砂上の国際社会
直接的にか、間接的にか、あるいは何かを迂回して、「かれ」と出会う)
終章 本末転倒の未来図

著者紹介

平川 克美 (ヒラカワ カツミ)  
1950年、東京生まれ。1975年、早稲田大学理工学部卒。渋谷道玄坂に翻訳を主業務とするアーバン・トランスレーションを設立、代表取締役となる。1999年、シリコンバレーのBusiness Cafe,Inc.設立に参加。現在、株式会社リナックスカフェ代表取締役(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)