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ここにいる

エクス・リブリス

出版社名 白水社
出版年月 2018年8月
ISBNコード 978-4-560-09270-5
4-560-09270-2
税込価格 3,080円
頁数・縦 249P 20cm

商品内容

要旨

本書は、2013年に起こった「大阪市母子餓死事件」がモチーフになっている。当時マンションの一室で28歳の女性と3歳の息子が餓死状態で見つかり、電気とガスも止められていた。母子の孤独死は、無縁社会を象徴する事件として台湾でも大きく報じられ、衝撃を受けた著者は、舞台を台湾に置き換えて、本書を書き上げた。主人公の美君は、6歳の娘・小娟と暮らす30代の女性。あるとき、夫の阿任から暴力を受け、美君は家を出る。地下鉄で20分しか離れていない家に移り、夫からの連絡をひそかに待ちながら、夫のこと、元彼のこと、職場のこと、結婚・出産の時のことなど、過去をさまざまに思い返す。一方で、夫、元彼、同僚、親、弟、友人の独白からは、まったく異なる美君の姿が浮かび上がってくる。他者からどう見られるかを常に意識して行動し、自分が選ばれるべき人間だと自負する美君。Facebookのページを開設し、グループLINEにも参加してはいたが、つながっている人はほとんどいなかった。すれ違う意識と噛み合わない現実。美君は、しだいに自らを追い込んでいく…。

おすすめコメント

夫や両親、友人との関係を次々に断っていく美君。幼い娘が残り…。日本の孤独死事件をモチーフに台湾文学界の異才が描く「現代の肖像」。

著者紹介

王 聡威 (ワン ツォンウェイ)  
1972年、台湾・高雄生まれ。国立台湾大学哲学科卒、同大学芸術史研究科修士。デビュー以降、台湾文学賞、宗教文学賞、打狗文学賞など、数々の文学賞を受賞。2003〜05年には、甘耀明、伊格言ら7人の若手作家たちと「8P」を結成、新たな創作活動を宣言する。08年刊行の長篇小説『濱線女兒―哈瑪星思戀起(浜線の女―ハマセン恋物語)』で巫永福文学賞を受賞。雑誌編集者としても活躍しており、09年、台湾を代表する文芸誌『聯合文学』の編集長に就任
倉本 知明 (クラモト トモアキ)  
1982年、香川県生まれ。立命館大学大学院先端総合学術研究科修了、学術博士。台湾文藻外語大学助理教授。専門は比較文学。2010年から台湾・高雄在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)