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鉄道への夢が日本人を作った 資本主義・民主主義・ナショナリズム

朝日選書 937

出版社名 朝日新聞出版
出版年月 2015年10月
ISBNコード 978-4-02-263037-7
4-02-263037-X
税込価格 1,760円
頁数・縦 281,57P 19cm

商品内容

要旨

「ここに鉄道が通ったならば…」まだ線路が敷かれていないにもかかわらず、近代の日本人は鉄道が多大な利益をもたらすと信じ、鉄道に大いなる期待を寄せていた。「鉄道は役に立つ」と、鉄道建設の大事業をなしとげるため、債券によって資金を募り、会計制度、商業法などを整備する過程で資本主義が行き渡った。鉄道未敷設の地域では、政党政治家が有権者に敷設の公約を掲げて投票を促し、住民が中央へ陳情を繰り返すなど、民主主義的な行動で鉄道敷設の夢を実現しようとした。鉄道で各地を巡幸する天皇をみた人々は、特別仕立ての列車に国体を実感した。鉄道への信仰が近代化をおし進め、「日本人」を作ったのだが、果たしてその鉄道信仰には根拠があったのか―。歴史社会学という観点で日本の近代化の特殊性を描き出す意欲作。

目次

序章 鉄道という夢と謎―日本の読者に向けて(鉄道が映し出す日本
本書のねらい)
第1章 資本主義の誕生と鉄道の敷設(一八六八‐一九〇六年)(隠された起源―国家事業としての鉄道敷設のはじまり
国家と資本家の関係構築
鉄道国家と国有鉄道)
第2章 近代国家と民主主義と鉄道(一八八〇‐一九三六年)(「国」に実体を与える地方
政党政治黎明期の地方民と政治家
改軌と改正鉄道敷設法と日本のケインズ
民主主義を定着させた誘致活動)
第3章 国民意識と鉄道(一八九〇‐一九三七年)(政治的支配としての行幸啓
世俗的巡礼としての鉄道旅行
標準化した鉄道旅行―国体創出と想像)
第4章 結論―国民の夢を乗せて、列車は走る(なぜ鉄道が近代化を促したのか
社会学から見た鉄道制度
エピローグ
むすびにかえて)

おすすめコメント

公債や株による資金調達や鉄道敷設の請願など、鉄道を核に近代国家が形成される過程を具体的な事例で解明。社会学からみた鉄道論。

著者紹介

張 〓〓 (チョー イクマン)  
1977年香港生まれ。香港中文大学社会学研究科卒。博士(社会学)。同大学社会学科講師。専門は歴史・文化社会学、日本研究、ナショナリズム。授業では日本社会、日本のマンガとアニメ、都市社会学などを担当。最近は日本サブカル産業と流通、二次創作と著作権問題を研究している
山岡 由美 (ヤマオカ ユミ)  
津田塾大学学芸学部国際関係学科卒。出版社勤務を経て翻訳業に従事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)